ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)


ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (SSSS)とは:

 細菌である黄色ブドウ球菌が産生する毒素が血流を介して全身の皮膚に達し、広範な熱傷様の表皮の剥離を起こす重篤な疾患である。多くは秋から冬にかけて乳幼児に発症する。

症状は:

1.かぜ様症状で始まり、37〜38度の微熱があり、目や鼻、口の周りに発赤が現われる。


2.1、2日中に発赤部位が糜爛(びらん)し、黄色の痂皮(かさぶた)が付着する。眼脂がみられ、口の周りの痂皮に放射状亀裂がみられるのが特徴である。


3.次いで頚部、腋窩、肘窩、そけい部、膝窩に猩紅熱様の紅斑が出現し、接触痛を伴うため身体に触れられることを嫌がるようになる。半数弱の患者の紅斑部位をこすると、表皮がずるりと容易に剥離する(ニコルスキー現象)。ニコルスキー現象は年少者ほど著明で、軽症では認められない。
 生後1ヵ月以内の新生児が発症したときにはリッター新生児剥脱性皮膚炎と呼ばれ、重症である。


4.約10日後に全身の紅斑は消失し、頚部より手足に向かって皮膚がむけはじめ(こぬか様落屑)、3〜4週で治癒する。


5.経過中に脱水、食欲不振など全身症状もみられる。

原因:

 咽頭や鼻腔などに感染した黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥離性毒素(ET)が血流を介して全身の皮膚に達し、広範な熱傷様の表皮の剥離を起こす。
 黄色ブドウ球菌は伝染性膿痂疹(とびひ)の原因菌の一つであるが、皮膚局所に感染した黄色ブドウ球菌が産生するETにより、その部に水疱が生じるものが伝染性膿痂疹である。遠隔部位(咽頭、鼻腔など)に感染・増殖した黄色ブドウ球菌の産生するETが循環系を通して全身に送られ、表皮剥脱をきたすのがSSSSであり、伝染性膿痂疹のほうが軽症である。ウイルス性上気道炎が引き金になることが多い。

治療:

1. 年齢が幼いほど重篤である。原則として入院、全身管理、輸液を行う。

2. 抗生物質の全身投与:抗生物質の感受性を知るため初期に原因菌の培養を眼脂、皮膚、咽頭などから行い、黄色ブドウ球菌に感受性のある薬剤を点滴静注する。有名なメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、後述)が起因菌の場合には注意が必要。

3. 熱傷処置と同様の局所処置を行う。

4. 解熱したらシャワー、入浴などで皮膚を清潔にする。




黄色ブドウ球菌について:

 健康人でも20〜30%が前鼻孔に黄色ブドウ球菌を保菌し、皮膚、肛門周囲にも常在している人もいる。しかし、感染するか否かは細菌と宿主との力関係で決まる。伝染性膿痂疹(とびひ)のおもな原因菌でもある。
 黄色ブドウ菌は遺伝子の違いにより(mec A遺伝子の有無により)MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)に分けられる。現在、臨床分離黄色ブドウ球菌の40-70%がMRSAであり、バンコマイシン(VCM)、アルベカシン(ABK)を除く多くの薬剤に耐性を示し、その治療は難渋することが多い。しかも、黄色ブドウ球菌の約80%は抗生物質を不活化するβ-ラクタマーゼを産生するので、有効な抗生物質を選択しなければならない。

黄色ブドウ球菌感染症の症状:

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (SSSS)
・伝染性膿痂疹(とびひ)
伝染性膿痂疹のページにリンク
・麦粒種:目もらい。
せつ(フルンケル、おでき): 毛孔から侵入した黄色ブドウ球菌よる化膿性炎症が深部に及んだもの。
癰(よう): せつがさらに拡大したもの。発熱、疼痛など全身症状を伴い、真皮が壊死に陥る。
蜂窩織炎 :黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌(溶連菌)などによる広範囲な炎症で、発赤、腫脹、強い疼痛を認める。
肺炎(黄色ブドウ球菌性肺炎のページにリンク)、乳腺炎、扁桃周囲膿瘍、化膿性リンパ節炎、化膿性耳下腺炎、膿胸、心内膜炎、敗血症など。

    
ブドウ球菌性食中毒汚染された食品中で産生された黄色ブドウ球菌毒素(エンテロトキシン)は熱や消化酵素に対して耐性で、腸管より吸収され中枢神経に作用する。潜伏期間は平均3時間で、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの食中毒症状である。黄色ブドウ球菌による皮膚化膿創を持つ人が調理した食品が原因となる。以前にアンカレッジで調理された機内食で大量の患者が発生したことがある。
毒素性ショック症候群(TSS): エキゾトキシン(外毒素、TSST-1)を産生する黄色ブドウ球菌により発症する。発熱、発疹、落屑、血圧低下、多臓器不全などである。急性に発症し致命率が高い。生理時に使用するンポン中で増殖した黄色ブドウ球菌によるものが多かったが、近年はタンポンを原因とするものは減少している。溶連菌でも類似症状が見られることがある(毒素性ショック様症候群、TSLS)。