流行性耳下腺炎(ムンプス、あるいはおたふくかぜ


「おたふくかぜ」が近年になく流行しています。
但し、抗体の検査をすると10人に1人は陰性です。抗体検査はかなり特異性が高い(陰性を陽性とは言わない)のですが、陽性と陰性の中間が判定に苦慮することがあります。

流行時期:

 以前は初冬から春にかけてであったが、現在では季節性はない。3年間で大きな流行をくりかえす。

原因:

 ムンプスウイルスの直接接触または飛沫により感染する。感染しても30〜40%が無症状の不顕性感染で経過する。女児に多い。不顕性であってもウイルスを排出しているため、伝染力はある。

症状:

 耳下腺の腫脹(はれ)をもって発症する。多少の痛みを伴う。腫脹は下顎骨の後縁と耳たぶ下部の間にみられ、前下方へ拡がる。腫れるスピードはきわめて早く、数時間で最高に達することもあるが、通常は1-3日でピークに達し、3-7日で消退する。一側の腫脹が他側に比べ1-2日先行することが多いが、一側のみの場合もある。酸っぱい食べ物で痛みが強調される。大多数の患者では耳下腺のみが侵されるが、全体の10-15%の患者では顎下腺も侵される。疼痛は耳下腺よりも少ないが、腫脹の消退は耳下腺の場合より遅い。舌下腺腫脹は少ない。

潜伏期間:16-24日でピークは17-18日である。

好発年齢:85%は15歳以下である。

合併症:


[1]無菌性髄膜炎:
 良性だが、もっともしばしば見られる合併症である。全患者の65%以上に髄液の細胞数増多が認められるが、無症状のことが多く、髄膜炎の症状を示すのは10%程度である。耳下腺腫脹の数日後に発熱、頭痛、嘔吐などの髄膜刺激症状が出現する。無菌性髄膜炎の原因として最も多い。男子は女子の3-5倍多い。

[2]睾丸炎 成人では30%前後の頻度でみられるが、思春期以前では稀である。睾丸炎の発症は耳下腺腫脹8日以内のことが多い。睾丸の腫大と激痛を訴え、体温上昇、頭痛、悪心、下腹部痛を伴う。殆どは片側だけであるが、30-40%に睾丸の萎縮がみられる。妊娠能力の障害は10数%に認められるが、絶対的不妊は稀である。

[3]卵巣炎: 成人女子では7%に認められる。ほとんどの例で不妊症とはならない。

[4]膵炎: 重篤な膵炎は稀であるが、軽症のものはしばしばみられ、胃痛、発熱、嘔吐、ショックなども出現する。夜間、激しい腹痛で来院して流行性耳下腺炎とわかることも多い。

[5]難聴 神経性のため、難治性である。多くは一側性で日常生活に支障がないことが多い。発生頻度は1:2,500。

[6]脳炎、脊髄炎:発生頻度は1:5,000。耳下腺腫脹時と、その7〜10日後に発症する二型がある。

[7]その他:まれに心筋炎、腎炎、関節炎、血小板減少性紫斑病、甲状腺炎などの合併が知られている。

区別すべき他の病気:

[1]反復性耳下腺炎
 自然消失するが、不定期的に反復する耳下腺炎で、通常片側の耳下腺全体のびまん性腫脹(全体に腫れる)が数日〜数週間続く。主たる原因は唾液管末端拡張症である。成人にもみられるが、主に10歳以下に発症し、5〜6歳にピークがある。原因の炎症は 口腔内常在菌が疲労その他で体力が低下した際に逆行性に感染して起こる。20歳以上の女性では、シェーグレン症候群をまず否定する。またコクサッキー、パラインフルエンザ3型、EBウイルス(伝染性単核症)などのウイルス感染で耳下腺腫脹がみられることがある。この場合、耳下腺腫脹は比較的短期間(数日)で消退することが多い。

[2]頚部リンパ節炎

[3]急性化膿性耳下腺炎

[4]唾石症

治療:

 原因療法はなく、もっぱら対症療法のみを行う。ベッド上安静は患者のニーズいかんによる。咬筋の運動で耳下腺の疼痛が増強するので、咀嚼しやすい食事とする。冷湿布は患者が好めば行う。

予防:弱毒生ワクチン(おたふくかぜワクチン)を接種する。免疫ができるまでに4週間を要する。有効率94%。1才以上であれば接種可能。集団生活以前に接種することを奨める。

保育所と学校の管理:
 
耳下腺腫脹の3日前から5〜7日後まで感染力があるため休園、休校することが望ましい。しかし、耳下腺腫脹以前の無症状期から伝染力があること、不顕性感染が多い(30〜35%)ことから集団発生を防止することは困難である。