蟯虫症


 

 以前は寄生虫症の代表は回虫症であった。第二次大戦後、衛生状態の改善と人糞尿を肥料として使わなくなってからは回虫症は激減した。代わって保育所、幼稚園、小学校など集団生活のなかで最も多い寄生虫症は蟯虫症であり、小学校での感染率は約5%である。5歳を中心に高い感染のピークがみられ、30〜40歳代にもう1つのピークがみられる。第2のピークは子供の親の年齢にあたり、家族内感染があることを示す。

特徴
 蟯虫は盲腸に寄生し、成熟したメス成虫(白色、紡錘形、長さ約1cm)は夜間、肛門周囲に6,000〜10,000個の虫卵を産卵する。産卵後メス成虫は死ぬが、産卵された虫卵は6〜7時間で感染可能な成熟卵となり、衣類やベッドや他の物に付着して約2週間生存する。この間にヒトに経口摂取されると十二指腸で孵化し、盲腸で成虫となり約45日で産卵可能となる。写真に卵をいっぱい抱えた産卵直後のメス成虫と虫卵を示す。

感染様式
(1)産卵時にメス成虫が肛門周囲を這いまわるために肛門周囲や会陰部が痒くなりお尻を掻いて、手についた虫卵が口に入って感染する(自家感染)。
(2)手についた虫卵が食器やテーブル、ドアのノブ、電車の吊り革などを介して経口感染する。
(3)チリに付着したり、ふとんや床に落ちた虫卵を吸い込んで経口感染する。
(4)したがって家族内感染や保育所など集団での感染が多い。

症状
 産卵時に著しい肛囲掻痒(そうよう、痒くなって引っかくこと)が生じ、不眠、落着きがない、不機嫌などの神経症的変化がみられることが多い。その他、蟯虫が虫垂に迷入して虫垂炎様症状を呈したり、まれに肛門外に出たメス成虫が膀胱内に侵入し膀胱炎を生じたりする。

診断方法
 虫卵は糞便中にはほとんど見当たらないため、大便で調べる通常の検便では蟯虫卵の検出は困難である。通常、2日間連続で蟯虫検査用粘着セロファン紙を早朝起床前に肛門周囲に付着させて顕微鏡で虫卵の有無を調べるが、検出率は2回の検査で60%、3回で70%と決して高くない。少なくとも3回の連続検査が必要である。プールでの感染をふせぐため、幼稚園や学校での集団検査は新学期早くが望ましい。

治療
 駆虫剤(コンバントリンなど)を服用する。駆虫剤は成虫には効くが卵には効かないため、2週間後に再度飲む方が確実である。できれば、家族や幼稚園などで集団で駆虫するのが望ましい。
虫卵陰転率は約90%で,薬剤服用3週間後に蟯虫検査を実施し,虫卵が陰転していなければ,再度コンバントリンで駆虫を行う。副作用はほとんどないが、まれに頭痛、腹痛、めまいが生じることがある。