ロタウィルス腸炎(乳児嘔吐下痢症)



ロタウィルス腸炎は伝染力が強いため、乳児特に1才未満の乳児には医療が発達した文明国でも恐ろしい病気です。そのためには予防接種が最も良い対抗手段です。日本でも2011年11月21日よりロタウイルスワクチンが認可されましたので、乳児には接種を受けることを強く勧めます。このページの予防の項で説明します。


【注意すべき乳幼児の腸炎】
 
1月初旬からインフルエンザより先に乳幼児のあいだで流行するのが、ロタウィルスによる腸炎です。発展途上国では乳児死亡の主な原因の一つで、全世界で年間約61万人の死亡者があります。右の電子顕微鏡写真で車輪のような形をしていることからロタウィルスと呼ばれています。
生後6ヵ月から2才までが好発年令、重症化しやすく、それ以外の年令でも発病しますが一般に軽症です。毎年冬に発病のピークがあり、5℃以下になると流行します。ヒトに感染することがわかっているのはA,B,C群の3者で、一般にロタウィルスといえばA群をさし、B群は以前に中国で流行したが日本ではみられません。C群ロタウィルスによる腸炎は主に3才以上の年長児や成人にみられ、A群のような大規模な流行は殆どありません。再感染が多いですが、多くは重症にならずに済みます。

症状】
 約1週間続く白色下痢便が特徴的で、白い便の色がコレラに似ることから以前は小児仮性コレラとも呼ばれていました。主症状は白色下痢便ですが、病初期前半に嘔吐を伴うのが普通です。下痢・嘔吐による重症脱水が最も大きな合併症ですが、ケイレン、脳炎、腸重積症、腎不全など多くの合併症があることが分かってきました。

【診断】
 
症状と便中のロタウィルスの検出によるが、免疫学的検査法により10分以内に判定できる(右図)。
 最も感度が高いが所要時間、コストもかかる電子顕微鏡検査を基準とした場合、本法による感度は95%と高く、低コストであり有効な検査である。

 


【手当て】
 吐き下しすることにより大量の水分を失い、脱水症状を呈するときには点滴治療が必要です。したがって治療、および栄養方法は症状によって異なります。
1. 嘔吐を伴う時期 この時期は比較的短く、食欲はほとんどありませんので、3〜4時間は絶食、絶飲に近い状態にしてください。それでも嘔吐したり、グッタリし、目が落ち凹んだり、手足が冷たい時には入院加療が必要です。繰り返しますが吐かさないためには、短時間の絶食、絶飲が重要です。
 3〜4時間経って嘔気がやや治まると水分を要求するようになります。経口補水液( ORS、例えば大塚製薬のOS-1、味の素製薬のソリタT顆粒2号など)を一回に10ccづつ、3〜5分間隔から始め、嘔吐がなければ量を増やしていきます。市販のポカリスエットのようなスポーツ飲料は口当たりは良いのですが、ナトリウム濃度が低く、糖分の濃度が高いため発汗後の水分補給には適していてもORSとしては不適です。動物性蛋白、脂肪に富むミルクや牛乳をこの時期に与えるとウィルスの攻撃を受けて弱っている腸に負担がかかり吐きやすく、また下痢が長引く恐れがありますので控えてください。母乳の蛋白質、脂肪は牛乳のそれよりも吸収されやすいため、少しづつなら与えてかまいません。
 嘔吐の時期を乗り切れば一安心です。また小児科を受診すると内服薬が処方されます。吐きやすいときには、いつから薬を飲んだらよいかを聞いてください。
2. 嘔吐がおさまって下痢だけの時期
 仮性コレラと呼ばれるくらい白い便になったり、オムツからこぼれるくらい大量の水様便が出る時期ですので、ORSを十分に補給してください。嘔吐が止んでもも下痢をすることによって、体の水分や電解質が失われますのでORSの補給が重要です。うすい塩味の野菜スープがおいしく感じられるころなので、作ってあげると喜びます。
 嘔吐の時期と同じようにミルクや牛乳をなるべく控えるほうが下痢は早くなおります。お腹にかかる負担が最も少ないのはお粥、うどん、パンなどのでんぷん類です。年令的にミルクが主たる栄養源で、離乳が進んでいなくて下痢が著しい時にはミルクを薄めたり、大豆から作ったミルクや牛乳の蛋白質を加水分解したミルクを勧めることもあります。
3. 下痢が2週間以上続くとき
 下痢が長びくと腸粘膜の多糖類分解酵素の活性が低下し、さらに治療しにくくなります。この状態は腸炎後症候群といいます。

 下痢の食事療法の原則は痛んだ腸に負担をかけないために、動物性蛋白や脂肪を避け、より負担のかからないでんぷん質を摂取することです。

【予防】
 唯一の予防はワクチンです。日本で現在認可されるのはロタリックス内服薬(GSK製)で、弱毒生ヒトロタウイルスをアフリカミドリザル腎臓由来のベロ細胞で培養精製し、弱毒化したた内服生ワクチンです。欧米では5年前に導入にされてからはロタウィルス腸炎は劇的に減少しました
2才未満のロタウィルス腸炎の10人に1人は入院が必要であり、本人もつらいが、この間の保護者の精神的・経済的負担は大変なものです。
赤ちゃんが生まれたら接種を検討して下さい。

<ロタリックスの接種法>
接種対象:
生後6週から24週までの乳児。
接種間隔:4週間以上の間隔をおいて生後24週までに2回目の接種を完了する。従って1回目は生後20週までに終了する。生後24週に接種すると副作用が出る可能性を否定できません。
他のワクチンとの間隔:麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘を先に接種した場合は4週間あける。欧米ではロタウイルスワクチン接種後の不活化ワクチン(DPT・Hibワクチン・肺炎球菌ワクチンB型肝炎ワクチン・不活化ポリオワクチン・インフルエンザワクチンなど)との間隔に制限はない。
副作用:極めて稀に腸重積が報告されている。これまでに腸重積やメッケル憩室の既往のある乳児と生後24週の接種は避けたほうが良い。
接種料金:1回につき13,500円です。