ロタウィルス腸炎(乳児嘔吐下痢症)
もともと冬季乳幼児に流行る病気ですが、平成21年4月の暖かくなった現在でも例外的に流行しています。便の色は必ずしも白色ではなく、年長児や成人も感染しています。
【注意すべき乳幼児の腸炎】
1月初旬からインフルエンザより先に乳幼児のあいだで流行するのが、ロタウィルスによる腸炎です。発展途上国では乳児死亡の主な原因の一つです。右の電子顕微鏡写真で車輪のような形をしていることからロタウィルスと呼ばれています。
生後6ヵ月から2才までが好発年令で、重症化しやすく、それ以外の年令でも発病しますが一般に軽症です。毎年冬に発病のピークがあり、5℃以下になると流行します。ヒトに感染することがわかっているのはA,B,C群の3者で、一般にロタウィルスといえばA群をさし、B群は以前に中国で流行したが日本ではみられません。C群ロタウィルスによる腸炎は主に3才以上の年長児や成人にみられ、A群のような大規模な流行は殆どありません。それぞれの群には一度かかると終生免疫がつきます。
【症状】
約1週間続く白色下痢便が特徴的で、白い便の色がコレラに似ることから以前は小児仮性コレラとも呼ばれていました。主症状は白色下痢便ですが、病初期前半に嘔吐を伴うのが普通です。軽い発熱と咳を認めることもあり、合併症としては腸重積症があります。
吐き下しすることにより大量の水分を失い、脱水症状を呈するときには点滴治療が必要です。したがって治療、および栄養方法は症状によって異なります。
| 【診断】 症状と便中のロタウィルスの検出によるが、免疫学的検査法により10分以内に判定できる(右図)。 最も感度が高いが所要時間、コストもかかる電子顕微鏡検査を基準とした場合、本法による感度は95%と高く、低コストであり有効な検査である。 |
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【手当て】
1. 嘔吐を伴う時期
この時期は比較的短く、食欲はほとんどありませんので、5〜6時間は絶食、絶飲に近い状態にしてください。それでも嘔吐したり、グッタリし、目が落ち凹んだり、手足が冷たい時には入院加療が必要です。繰り返しますが吐かさないためには、短時間の絶食、絶飲が重要です。
5〜6時間経って嘔気がややおさまると水分を要求するようになります。白湯、薄目のジュース、イオン飲料などを一回に3〜5ccづつ、2〜3分間隔から始め、嘔吐がなければ量を増やしていきます。量を計れるスポイドとしてはベック・ドウ(右写真、2、5、10mlの3種類、フランス製、山一精工輸入元)があります。動物性蛋白、脂肪に富むミルクや牛乳をこの時期に与えるとウィルスの攻撃を受けて弱っている腸に負担がかかり吐きやすく、また下痢が長引く恐れがありますので控えてください。母乳の蛋白質、脂肪は牛乳のそれよりも吸収されやすいため、少しづつなら与えてかまいません。
嘔吐の時期を乗り切れば一安心です。また小児科を受診すると内服薬が処方されます。吐きやすいときには、いつから薬を飲んだらよいかを聞いてください。
2. 嘔吐がおさまって下痢だけの時期
仮性コレラと呼ばれるくらい白い便になったり、オムツからこぼれるくらい大量の水様便が出ますが心配ありません。嘔吐が止んでもも下痢をすることによって、体の水分や電解質が失われますので水分の補給が必要です。市販のイオン飲料水は味はよいが、電解質濃度が低いため治療用にはソリタ顆粒が処方されることがあります。うすい塩味の野菜スープがおいしく感じられるころなので、作ってあげると喜びます。
嘔吐の時期と同じようにミルクや牛乳をなるべく控えるほうが下痢は早くなおります。お腹にかかる負担が最も少ないのはお粥、うどん、パンなどのでんぷん類です。年令的にミルクが主たる栄養源で、離乳が進んでいなくて下痢が著しい時にはミルクを薄めたり、大豆から作ったミルクや牛乳の蛋白質を加水分解したミルクを勧めることもあります。
3. 下痢が2週間以上続くとき
下痢が長びくと腸粘膜の多糖類分解酵素の活性が低下し、さらに治療しにくくなります。この状態は腸炎後症候群といいます。
下痢の食事療法の原則は痛んだ腸に負担をかけないために、動物性蛋白や脂肪を避け、より負担のかからないでんぷん質を摂取することです。