サリドマイドは復活できるか 

 サリドマイドは40年前にドイツで市販され、多くの国で販売された睡眠薬です。胎児に奇形を起こす率が高いことから5年後に発売が中止されました。睡眠薬の催奇形性が問題となった最初のショッキングな事件であり、現在も「サリドマイドベビー」の名前で記憶しておられる方が多いと思います。
 一旦は抹消されたサリドマイドですが、その後の研究で幾つかの病気に特効的な効果があることが判明しました。このうち最も身近な病気は口腔粘膜に痛みを伴う潰瘍が、いくつも慢性的に出没するアフタ性口内炎で、単にアフタとも呼ばれることもあります。原因としてウィルス感染、免疫異常、ホルモン、ストレスなどが考えられていますが、確定していません。ステロイドの内服、あるいは外用が一時的に有効ですが、免疫低下をきたすため、長期間の使用はできません。
 サリドマイドを用いた試験的な治療データによると、有効率は現在考えられるもっとも厳しい判定基準に従っても、4週間の内服でアフタの完全消失率50%、一部消失率90%とずば抜けて優れた治療効果を発揮しています。さらに進行したエイズの患者では免疫能が低下しているため、アフタ性口内炎が発生しやすく、重症の潰瘍となって衰弱の原因となりますが、これにも同等の効果があることが判明しました。欠点としては眠気、便秘、知覚異常、休薬後の再発などがありますが、副作用よりも効果の方が大きく、飲みかたを工夫すれば解決できる可能性があります。
 残念なことにサリドマイドは現在、アメリカとフランスで試験的使用が認められているのみで、日本では入手できません。アフタ性口内炎の痛みで食事を十分に食べられない患者さんのためにサリドマイドによる治療が認められることが待たれます。