環境考古学
 
岩石学的手法

   遺跡から発掘される土器などについて、岩石学的に分析することで、原材料はどこのものを使用したか、どのように焼かれたのか、使用されたのか等を知る手がかりとなります。

 

須恵器
須恵器は、あながまを使用し、1000℃以上の高温で還元冷却の工程で焼いた灰色・陶質の焼物で、古墳時代の遺跡から出土することが多いものです。

左の写真は、土器破片の一部を切断した薄片で、淡い黄色部分はカリ長石で、その周辺部は焼成時に融解して灰白色となっています。微粒子部分は溶けてガラス化し、黒く見えます。これは焼成温度が1100℃くらいであったことを示しています。 左の写真は、土器破片の一部を切断た薄片です。所々に見える空洞は、結晶片や岩片が融解・分解されて空洞となったものです。この空洞の一部はガスの流路となり、黒く見える部分は冷却中に炭素が固着した跡です。  左の写真は、土器破片の一部を切断た薄片です。焼成時の収縮による空隙や流理構造が認められないことから、十分な練りがされたことが想像されます。鉱物の分解により発生したガスの脱出跡が見られ、その穴の周辺には炉内の温度の低下とともに炭素が固着した跡が見られます。

土帥器
土師器は弥生式土器の伝統を受け継いだ素焼きの土器で、約750〜850℃、酸化炎で焼成されたものです。

 上の写真は、土器破片の一部を切断した薄片で、中央左の鉱物片は安山岩起源の単斜輝石、中央右の鉱物片は花崗岩起源のカリ長石です。試料の岩石の融解の様子から、この土器は850℃以下の焼成がされたといえます。
  また、本試料の発掘地点周辺には、花崗岩質岩は分布していないことから、この土器は搬入されたものと考えられます。

 上の写真は、土器破片の一部を切断した薄片で、淡黄色で鉄分の少ない粘土の中に、赤褐色の粘土の細脈が見られることから、両者を混ぜて練り上げて焼いた土器と考えられます。
 安山岩質の火山岩片を母材とし、石英、斜長石、単斜輝石、斜方輝石、角閃石を含んでいます。出土地点周辺は安山岩質岩が広く分布していることから、この土器は当地でつくられたものと考えられます。

 上の写真は、土器破片の一部を切断した薄片で、焼成時の収縮によって幅が広く長さの短い空隙がたくさん認められます。