団体交渉と労働協約

 

■団体交渉とは

 労働組合と使用者が対等の立場で労働条件の交渉を集団的に取り決めるための話し合いの場が団体交渉である。

 使用者が、正当な理由がないのに団体交渉を拒否したり、団体交渉をした等の理由で解雇等の不利益な取扱をすることは、「不当労働行為」として禁止されている。また、正当な団体交渉は労組法1条が適用されるので刑法35条により罰せられることはない。

 労働協約とは、労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する契約である。

 労働協約に反する労働契約のその部分は無効であり、就業規則も労働協約に反してはならないことが労働基準法で規定されている。

 

■団体交渉の要求に対して、正当な理由がなく応じないとき

 正当な理由なく団体交渉に応じないことは不当労働行為として禁止されている。不当労働行為があった場合、その救済を地方労働委員会に申し立てることができる。

 

話し合いがスムーズにいかないとき

 使用者には、誠実に団体交渉を行う義務があるから、使用者が団体交渉に出席しても労働組合の要求に対して、何ら理由も説明せずにただ拒否するだけだったり、何の発言もしないでただ黙って座っているだけだったりするなど、不誠実な対応を続けた場合には、団体交渉拒否のひとつである「不誠実団交」として、地方労働委員会に救済を申し立てることができる。労働組合側が使用者と対等な関係にたって交渉できないような場合、あるいは、交渉が進まない場合には、地方労働委員会に仲介してもらう方法がある。

 

■労働協約締結の留意点

1形式→書面に作成し、労使の代表者が署名又は記名押印すること。

2有効期間→有効期間を定める場合は最長3年である。

3適用→労働協約を締結した労働組合の組合員(非組合員にも適用される場合あり)

4効力→(1)就業規則は労働協約に反してはならない

(2)労働協約に違反する労働契約の部分は無効とし、無効となった部分は労働協約の定めによる(労働契約に定めがない部分も同様)。

5解約→有効期間を定めない場合は、当事者の一方が解約しようとする日の90日以上前に文書で予告して解約できる。

 

■労働協約の拡張適用

1一つの工場・事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が同じ労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用される。但し、その工場事業場に複数の労働組合が存在しているときには、たとえA組合の労働協約の適用を受ける労働者の数が4分の3を超えたとしても、他の組合の組合員に対してはその労働協約は適用されない。

 

2一つの地域において従事する同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、申し立てに基づき、労働委員会の決定により当該地域において従事する他の同種の労働者及び使用者にも拡張適用される場合があるが、例は少なくなっている。

 

■労働委員会

 労働委員会は、集団的労使関係(労働組合と使用者・団体)を対象とし、その労使間の紛争解決を援助するための独立した行政機関で、国(中央労働委員会)と都道府県(地方労働委員会)に設けられている。

労働委員会の主な仕事には、(1)労働争議の調整(あっせん、調停、仲裁)、(2)不当労働行為の救済(労働者あるいは労働組合の申し立てに基づいて、使用者による労働者の団結権侵害の事実の存否を認定し、不当労働行為の事実があった場合は、命令によって救済をはかる)の2つがある。

 

●労働委員会とは

 中立・公平な立場で、労働組合、使用者間の問題の解決を援助し、労使関係の安定を図るため、労働組合法に基づいて設置されている行政機関である。国に置かれる中央労働委員会と各都道府県に置かれる地方労働委員会がある。地方労働委員会は原則として、都道府県領域の事件を所管する。

 

次の三者の委員で構成されている。

● 公益委員:公益を代表する委員で大学教授、弁護士、学識経験者など

● 労働者委員:労働者を代表する委員で労働組合役員など

● 使用者委員:使用者を代表する委員で会社経営者、使用者団体役員など

 

あっせん申請、救済申立ては無料。




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