■労働基準法のポイント■ 

■契約期間【第14条】                        

 長期間の労働契約を結ぶことは、労働者を不当に拘束するおそれがあるため、労働契約期間を定める場合、期間の定めのないものを除き、契約期間の上限を原則として1年としています。ただし、次の例外があります。

     イ 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約については、その期間
     ロ 次のいずれかに該当する期間の定めのある労働契約については、契約期間の上限は3年

(1)次の@またはAのいずれかに該当する業務に必要な高度の専門的知識、技術、経験(厚生労働大臣の定める基準に該当するものに限る)を有する労働者が不足している事業場がこのような専門的知識等を有する労働者を新たに雇い入れる場合
  @新商品、新役務、新技術の開発または科学に関する研究に必要な業務
  A事業の開始、転換、拡大、縮小、廃止のための業務であって、一定期間内に完了することが予定されている業務 
(2)満60歳以上の労働者を雇い入れる場合
厚生労働大臣が定める基準     
@博士の学位(これに該当する学位であって外国で授与されたものを含む)を有する者 
A修士の学位(これに該当する学位であって外国で授与されたものを含む)を有する者であって、就こうとする業務に2年以上従事した経験を有する者
B次のいずれかの資格を有する者
  ア、公認会計士  
  イ、医師
  ウ、歯科医師
  エ、獣医師
  オ、弁護士
  カ、一級建築士
  キ、薬剤師
  ク、不動産鑑定士
  ケ、弁理士
  コ、技術士
  サ、社会保険労務士
  シ、税理士
  ス、中小企業診断士
C次に掲げる試験の合格者
  ア、情報処理の促進に関する法律に基づく情報処理技術者試験の区分中、システムアナリスト試験、プロジェクトマネージャー試験またはアプリケーションエンジニア試験
  イ、アクチュアリーに関する資格試験
D次のいずれかに該当する者
  ア、特許法第2条第2項に規定する特許発明者
  イ、意匠法第2条第2項に規定する登録意匠を創作した者
  ウ、種苗法第20条第1項に規定する登録品種を育成した者
E次のいずれかに該当する者であって、かつ、年収が575万円を下回らない者
(1)農林水産業若しくは鉱工業の科学技術若しくは機械、電気、土木若しくは建築に関する化学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、設計、分析、試験若しくは評価の業務に従事する者、情報処理システムの分析若しくは設計の業務に従事する者(以下「システムエンジニア」という)または衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務に従事する者であって、次のいずれかに該当する者
  ア、大学卒であって実務経験を5年以上有する者  
  イ、短期大学または高等専門学校卒であって実務経験を6年以上有する者
  ウ、高校卒であって実務経験を7年以上有する者
(2)事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務を行う者であって、システムエンジニアの実務経験を5年以上有する者
F国、地方公共団体、民法第34条の規定により設立された法人(財団法人、社団法人など公益法人)、その他これに準ずるものにより、その有する知識、技術、経験が優れたものであると認定されている者(上記各号に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認めた者に限る) 


■労働条件の明示【第15条】

 労働条件を明確に示していない場合には、労働者が予期に反した低労働条件で労働を強いられたり、後日のトラブルにもなるため、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に労働条件を明示しなければなりません。この場合、次の事項については書面で明らかにし、その書面を労働者に交付しなければなりません(様式「労働条件通知書」)

@労働契約の期間
A就業の場所及び従事すべき業務の内容
B始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
C賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項並びに昇給に関する事項
D退職に関する事項


■解雇の予告【第20条,第21条】

 労働者が突然の解雇からこうむる生活の困窮を緩和するため、使用者は、労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

1.解雇の手続
    使用者  
     @少なくとも30日前に解雇予告(*1)すれば                 
     A少なくとも30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払えば
      平均賃金(*2)を何日分か支払った場合、その日数分予告期間が短縮されます。

                             

           労働基準法違反とならない

*1 解雇予告期間   
予告解雇がなされた日は、解雇予告期間に算入されず、解雇予告日と解雇の効力発生日との間に30日間の期間を置く必要があります。
*2 平均賃金の計算方法
原則として当該事由が発生した日以前3カ月間に支払った賃金の総額をその期間の総日数で割ることにより求められます。
  

2.解雇予告等が除外される場合
    @天災事変その他やむを得ない事由で事業に継続が不可能となり、労働基準監督署長の認定を受けたとき。
     《例》火災による焼失、地震による倒壊など 
    A労働者の責に帰すべき事由によって解雇するときで、労働基準監督署長の認定を受けたとき。
     《例》横領・傷害・2週間以上の無断欠勤など

3.解雇予告等が適用されない者
    @日々雇い入れられる者★ただし1ヶ月
    A2ヶ月以内の期間を定めて使用される者★ただし各々の契約期間
    B季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者★ただし各々の契約期間
    C試の使用期間中の者★ただし14日
    ★の期間を超えて引き続き使用されている場合は、解雇予告または解雇予告手当の支給が必要です


■退職時の証明【第22条】

 労働者が退職の場合に、在職中の契約内容などについて証明書の交付を請求したときは、使用者は遅滞なく、これを交付しなければなりません。
なお、労働者の請求しない事項を記入してはいけません。

退職労働者
請求 証明書を交付
使用者

証明事項(労働者が請求した事項に限られます。)

@使用期間
A業務の種類
B当該事業における地位
C賃金
D退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)


■賃金の支払【第24条】

 労働の対価である賃金が、完全にかつ確実に労働者本人の手に渡るため、使用者は、労働者に賃金を通貨で全額、直接、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。賃金から税金、社会保険料等法令で定められているもの以外を控除する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との書面協定(以下、「労使協定」と呼びます)が必要です。
 なお、一定の条件(@労働者の同意を得ることA労働者の指定する本人名義の預貯金口座に振り込まれることB賃金の全額が所定の支払日に払い出し得ること)を満たせば、金融機関への振込により支払うことができます。
  退職手当については労働者の同意を条件に、金融機関への振込のほか、@銀行振出小切手、A銀行支払保証小切手、B郵便為替により支払うことができます。

賃金支払5原則

使用者は @通貨で D直接労働者に支払う
A全額を
B毎月1回以上
C一定期日に

              

例  外

@通貨以外のものの支給が認められる場合    
 法令、労働協約に定めがある場合
A賃金控除が認められる場合             
 法令(税金、社会保険料等)、労使協定による場合
B毎月1回以上、一定期日払でなくてよい場合  
 →臨時支給の賃金、賞与、査定期間が1カ月を超える場合の精勤手当・能率手当など


■労働時間【第32条】

 長時間労働の弊害をなくすため、所定労働時間の最長限度を定めており、使用者は、労働者に、休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
注:法定労働時間とは、労働基準法で定められている労働時間の上限です。所定労働時間とは、事業場で就業規則等で定めた労働時間のことです。

週40時間労働制と特例対象の区分

業種          規模 10人以上 1〜9人
製造業(1号) 40 40
鉱業(2号) 40 40
建設業(3号) 40 40
運輸交通業(4号) 40 40
貨物取扱業(5号) 40 40
林業(6号) 40 40
商業(8号) 40 44
金融広告業(9号) 40 40
映画・演劇業(10号) 40 44
通信業(11号) 40 40
教育研究業(12号) 40 40
保健衛生業(13号) 40 44
接客娯楽業(14号) 40 44
清掃・と畜業(15号) 40 40
官公署等その他の事業 40 40

    (注) 特例措置対象

 公衆の不便を避けるため等の理由で、常時9人以下の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画制作の事業を除く)、保健衛生業及び接客娯楽業の事業場は特例措置として、労働基準法施行規則により、1週間の法定労働時間は44時間と定められています。
 なお、特例措置対象事業場であっても、1年単位の変形労働時間制及び1週間単位の非定型的労働時間制を採用する場合には、週の平均所定労働時間を40時間以下にすることが必要です。


■1か月単位の変形労働時間制(第32条の2

 1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内の一定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業は44時間)以下の範囲内において、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。


◆1か月単位の変形労働時間制を新規に採用するには、
  @就業規則などの変更
  A労使協定の締結により採用する場合には、所定の様式により労働基準監督署長に届け出ることが必要となります。

月末が忙しく、月初めと月中が比較的暇である場合、その繁閑に合わせて労働日や労働時間を設定し、1週間当たりの平均労働時間を40時間以下とする例

(平成15年5月の場合)
@休   日:毎週日曜日、第1・第3・(第5)土曜日、国民の祝日
A労働時間:1日から25日まで(18日間):1日7時間
         26日から31日まで(5日間):1日8時間30分

憲法記念日 休日
こどもの日 休日 休日 休日 休日



30



30



30



30



30
7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

1週間当たりの平均労働時間は
(7時間×18日+8時間30分×5日)÷(31日÷7)≒38.05時間
となります。


■年単位の変形労働時間制【第32条の4、第32条の4の2】

 1年単位の変形労働時間制とは、労使協定を締結することにより、1年以内の一定の期間を平均し1週間の労働時間が40時間以下(特例措置対象事業も同じ)の範囲内において、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

◆1年単位の変形労働時間制を新規に採用するには
@労使協定の締結及び就業規則などの変更
A所轄の労働基準監督署長への届出
が必要になります。 

◆休日を増加させることにより、1週間あたりの平均労働時間を40時間以下とする例
(平成15年度の場合)

週休日 週休日以外の休日 日数 追加休日
4月 6日 みどりの日 1日   
5月 7日 (憲法記念日)、(国民の休日)、こどもの日 1日   
6月 7日            +3日
7月 6日 海の日 1日 +2日
8月 7日 夏休み(5日間) 5日 +1日
9月 6日 敬老の日、秋分の日 2日  
10月 6日 体育の日 1日  
11月 8日 文化の日、勤労感謝の日(振替休日) 2日  
12月 6日 天皇誕生日、年末休み(2日間) 3日  
1月 6日 元旦、年始休み(2日間)、成人の日 4日  
2月 7日 建国記念の日 1日  
3月 6日 春分の日    
合計 78日   21日 +6日

※1日の所定労働時間が8時間で、隔週週休2日制(起算日4月1日、第1回目土曜休日4月5日)、
  国民の祝日が全休、夏休み5日、年末年始休み4日(元旦を除く)の事業場
※(  )内の祝日は、週休日と重複するもの、(振替休日)は、当該日が日曜日で月曜日に振り替えられるもの

 上記の事業場の場合、年間に99日の休日(78日+21日=99日)がありますが、
1年単位の変形労働時間制を採用した場合、週の所定労働時間は、
   365日ー99日=266日(年間労働日数)
   266日×8時間÷(365日÷7)=40.81時間
となり、40時間をオーバーします。
 これを避けるためには、あと6日間の休日を増やす必要があります。
   365日ー(99日+6日)=260日(年間労働日数)
   260日×8時間÷(365日÷7)=39.89時間
これにより、週の平均所定労働時間は40時間以下となり、週40時間労働制をクリアします。
このケースでは、6月、7月及び8月に休日を増やしたものです。

◆対象労働者の範囲
   対象労働者の範囲は、労使協定により明確に定める必要があります。

途中入社・退職者の実労働時間(法定割増賃金を支払わなければならない場合を除く)が次の計算式による時間数を超えた場合は、その超えた時間数について割増賃金を支払うこと

                           

法第32条の4の2の規定により割増賃金を支払う時間
本人の実労働時間  法第37条の規定により割増賃金を支払う時間 実勤務期間における法定労働時間の総枠
●実勤務期間における法定労働時間の総枠の計算式は、
(実勤務期間の暦日数 ÷7日)×40時

                                                

◆労働時間の特定
  1年単位の変形労働時間制の導入に当たり、1か月以上の期間ごとに対象を区分した場合、各期間の労働日数及び総労働時間を労使協定において定める必要がありますが、最初の期間を除き協定時に全期間の労働日ごとの労働時間を示す必要はなく、区分された各期間の30日前までに労働日及び労働日ごとの労働時間を特定すればよいこととなっています。
  なお、特定された労働日及び労働日ごとの労働時間を変更することはできません。

◆労働日数、労働時間の限度

労働日数の限度 対象期間が1年の場合
   →280日
対象期間が3か月を超え1年未満である場合
  →1年当たりの労働日数の限度×対象期間の暦日数/365日
                        (小数点以下は切捨て)
1日及び1週間の労働時間の限度 1日→10時間   1週間→52時間
導入の要件(3か月を超えた場合)
@48時間を超える週は、連続3以下であること
A3か月ごとに区分した各期間において、48時間を超える週の初日が3以下で あること
連続して労働させる日数の限度 連続労働日数→6日
(特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間)における連続労働日数は、労使協定の定めがある場合には、1週間に1日の休日が確保できる日数)


■1週間単位の非定型的変形労働時間制【第32条の5】

 1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業
において、労使協定により、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができる制度です。

◆1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用するには、
@労使協定を締結することにより、1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業も同じ)以下にな
 るように定めること
A労使協定を所定の様式により、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
 

◆労働時間の上限
  1日の労働時間の上限は、10時間です。


■フレックスタイム制【第32条の3】

 フレックスタイム制とは、1か月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で、各日の始業及び終業の時刻を選択して働く制度です。

◆フレックスタイム制を採用するには、
@就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることを規定すること
A労使協定において、対象となる労働者の範囲、清算期間※1、清算期間中の総労働時間※2、標準となる1日の労働時間などを定めること
が必要です。

モデル例

 ▲7:00           労働時間帯  ▲7:00
▼9:00             標準労働時間帯          5:00▼
(通常の労働者の所定労働時間帯)
AM7:00    9:00 10:00 12:00 PM1:00 3:00       5:00     7:00
▼         ▼          ▼        ▼       ▼
  フレキシブルタイム    コアタイム 休憩  コアタイム     フレキシブルタイム
いつ出社してもよい時間帯※4 必ず労働しなければならない時間帯※3 いつ退社してもよい時間帯※4 

                                                              

※1:清算期間
フレックスタイム制において、労働契約上労働者が労働すべき時間を定める期間で、1か月以内とされています。
1か月単位のほかに、1週間単位等でも可能です。
※2:清算期間中の総労働時間
フレックスタイム制において、労働契約上労働者が労働すべき時間です。要するに所定労働時間のことであり、所定労働時間は清算期間を単位として定めることになります。
この時間は、清算期間を平均し1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるように定める必要があります。
※3:コアタイム
労働者が必ず労働しなければならない時間帯です。
※4:フレキシブルタイム
労働者がその選択により労働することができる時間帯です。


■休日【第35条】

 毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
 休日とは、労働契約において労働義務がないとされる日をいいます。
 休日は、原則として暦日、すなわち、午前0時から午後12時までの24時間をいいます。
 午前0時から午後12時までの間に勤務しない場合が休日であり、所定休日とされている日でも前日の労働が延長されて午前0時を超えた場合などは、休日を与えたことにはなりません。
(注)ただし、3交替制勤務などで暦日をまたがる勤務がある場合には、暦日休日制の原則を適用すると、1週2暦日の休日を与えなければならないこととなり、週休制をとった立法趣旨に合致しないこととなりますので、交替制勤務などの要件によって、継続24時間をもって休日とすることとして差し支えないとされています。

1.毎週1回の休日の例     

1週 1週 1週 1週


2.4週4日の休日の例                            

4週
     休休      休休

(4週4休を採用する場合は、就業規則などにより4週の起算日を明らかにし、また、できる限り休日は特定してください。)

3.休日の与え方

休日 原則 週1回 与え方 できるだけ特定するのが望ましい
例外 4週4日 変形休日制 要件 就業規則その他これに準ずるもので4週間の起算日を明らかにする。

4.休日の意義等

休日
原則 暦日(午前0時〜午後12時の継続24時間)の休み
例外 継続24時間の休み 交替制勤務等 要件 @番方編成による交替制であることを就業規則で定め、制度として運用されていること。
A各番方の交替が規則的に定められ、勤務割表等でその都度設定されるものでないこと。

5.振替休日と代休の相違点

項   目 振 替 休 日 代   休
どんな場合に行われるのか
36協定が締結されていない場合などに休日労働をさせる必要が生じたとき 休日労働や長時間労働をさせた場合に、その代償として他の労働日を休日とするとき
行われる場合の要件

@就業規則に振替休日を規定
A4週4日の休日を確保したうえで、振替休日を特定
B遅くとも前日までに本人に予告
特になし
振替後の休日または代休の指定 あらかじめ使用者が指定 使用者が指定することもあるし、労働者の申請によって与えることもある
賃   金 振替休日が同一週内の場合、休日出勤日に通常の賃金を支払えばよく、振替休日に賃金を支払う必要はない 休日出勤日に割増賃金の支払いが必要。代休日に賃金を支払うかどうかは就業規則などの規定による

※振替休日が週をまたがった場合、週の法定労働時間を超えて労働させた時間については、時間外労働に係る割増賃金の支払いが必要となります。


■時間外・休日労働【第36条】

 時間外または休日に労働させる場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、事前に所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 いわゆる36協定において定める労働時間の延長の限度について、労働者の福祉、時間外労働の動向などを考慮して基準(告示)が定められます。
 36協定の内容は、この基準に適合したものとなるようにしなければなりません。
 基準の概要は、次のとおりです。

1.協定する項目

(1)時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的な事由
(2)対象労働者の業務、人数
(3)1日についての延長時間のほか、1日を超え3か月以内の期間及び1年間についての延長時間
(4)休日労働を行う日とその始業・終業時刻
(5)有効期間


2.時間外労働の限度に関する基準
延長時間は、次の表の左の欄の「期間」の区分に応じて、右の欄の「限度時間」を超えないものとしなければなりません。
              

a一般の労働者の場合 b 対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者の場合
期間 限度時間 期間 限度時間
1週間 15時間 1週間 14時間
2週間 27時間 2週間 25時間
4週間 43時間 4週間 40時間
1か月 45時間 1か月 42時間
2か月 81時間 2か月 75時間
3か月 120時間 3か月 110時間
1年間 360時間 1年間 320時間

 


3,育児・介護休業法の適用
 小学校就学前の子の養育や家族の介護を行う者は、育児介護休業法の適用を受けることから、労働基準法第36条に基づく時間外労働の協定届をした場合においても、本人が請求したときは、

1か月24時間、  1年150時間

を超えて労働時間を延長してはなりません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではありません。
 なお、平成14年の改正により男女を問わずこの請求ができるようになりました。


■時間外・休日・深夜労働の割増賃金【第37条】

 時間外、深夜(原則として午後10時〜午前5時)に労働させた場合には、2割5分以上、法定休日に労働させた場合には3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
※割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しません。なお、割増賃金などの計算の基礎となる賃金に含まれるかどうかは、名称ではなく内容により判断されます。

時間外(法定外休日)労働の割増率 

)  所定労働時間が午前8時30分から午後5時(休憩1時間)までの場合

PM5:00〜PM5:30→1時間当たりの賃金×1.00×0.5時間 法定時間内残業
PM5:30〜PM10:00→1時間当たりの賃金×1.25×4.5時間 法定時間外残業
PM10:00〜AM5:00→1時間当たりの賃金×1.50(1.25+0.25)×7時間 法定時間外+深夜残業

▼AM8:30 ▼PM5:00 ▼PM5:30 ▼PM10:00 ▼AM5:00
7.5時間 0.5時間 4.5時間 7時間
所定労働時間 法定時間内残業 法定時間外残業
割増賃金2割5分以上
法定時間外+深夜残業
割増賃金  5割以上


2.法定休日労働の割増率

) 午前8時30分から午後12時(休憩1時間)まで労働させた場合

AM8:30〜PM10:00→1時間当たりの賃金×1.35×12.5時間 法定休日労働
PM10:00〜PM12:00
→1時間当たりの賃金×1.60(1.35+0.25)×2時間
法定休日労働+深夜労働

▼AM8:30 ▼PM10:00 ▼PM12:00
12.5時間 2時間
休日労働
割増賃金 3割5分以上
休日労働+深夜残業
割増賃金  6割以上


■年次有給休暇【第39条】

 年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を与えなければなりません。
いわゆるパートタイム労働者についても、原則として同様に扱うことが必要です。

1.年次有給休暇の付与日数
年次有給休暇の付与日数は、一般労働者の場合は、次のとおりとなります。
(1)週所定労働時間が30時間以上の労働者

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数 10 11 12 14 16 18 20

(2)認定職業訓練を受ける未成年者(第72条)で(3)に該当する労働者を除く

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5以上
付与日数 12 13 14 16 18 20

(3)週所定労働時間が30時間未満の労働者
週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合は、その所定労働日数に応じて次のとおり比例付与されます。
@ 週所定労働日数が4日または1年間の所定労働日数が169日から216日までの者

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数 10 12 13 15

A 週所定労働日数が3日または1年間の所定労働日数が121日から168日までの者

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数 10 11

B 週所定労働日数が2日または1年間の所定労働日数が73日から120日までの者

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数

C 週所定労働日数が1日または1年間の所定労働日数が48日から72日までの者

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5以上
付与日数

2.年次有給休暇の取得時季
 年次有給休暇の取得時季については、労働者に時季指定権があります。
 なお、指定時季が事業の正常な運営を妨げるような場合は、会社に休暇時季の変更権が認められています(「事業の正常な運営を妨げる」とは、年度末の業務繁忙期などに多数の労働者の請求が集中したため全員に休暇を付与しがたいような場合などに限られます)。

3.年次有給休暇の計画的付与
 年次有給休暇の計画的付与は、労使協定で年次有給休暇を与える時季に関する定めをした場合で、年次有給休暇のうち5日を超える部分(繰越し分を含みます)に限ります。
 付与方法としては、例えば事業場全体の休業による一斉付与、班別の交替制付与、年休計画表による個人別付与などが考えられます。

4.年次有給休暇の請求権
 年次有給休暇の請求権は、労働基準法第115条の規定により、2年間で時効によって消滅します。年次有給休暇の請求権は、基準日に発生するものであるので、基準日から起算して2年間、すなわち、当年度の初日に発生した休暇については、翌年度末で時効により消滅することになります。

年次有給休暇 当年度 不行使 翌年度 不行使 基準日から2年後
年次有給休暇発生 繰り越し 消滅
時効2年
行使 行使

5.年次有給休暇を取得したことによる不利益取扱いの禁止(第136条)
 年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額や精皆勤手当及び賞与の算定などに際して、欠勤として取り扱うなどの不利益な取扱いはしないようにしなければなりません。

6.年次有給休暇の賃金の支払い
 年次有給休暇取得中の賃金については、就業規則その他に定めるものの規定に基づき、平均賃金または所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければなりません。
 ただし、過半数労働組合または労働者の過半数代表者との書面による協定により、健康保険法の標準報酬日額に相当する金額を支払う旨の定めをしたときは、これを支払わなければなりません。

7.年次有給休暇の半日付与
  労働基準法は、年次有給休暇の付与を1日単位としています。したがって、労働者が半日単位で請求しても、これに応じる法的義務はありません。
 ただし、請求に応じて半日単位で与えることはできます。


■年少者の深夜業【第61条】

 

年少者を深夜(午後10時〜午前5時)に働かせることは、原則として禁止されています。

年少者
(18歳未満)
午後10時〜午前5時

  
深夜業
 

午後8時〜午前5時
禁止 例外 交替制で使用する16歳以上の男性
交替制による事業において労基署長の許可により午後10時30分まで労働させ、または午前5時30分から労働させる場合
    児童
(15歳に達した後の最初の3月31日までの者)
農林水産業、保健衛生業、電話交換業務の従事者
非常災害時の時間外・休日労働


就業規則の作成・変更・届出の義務【第89・90・92条】

 常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成し、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。
 また、就業規則を変更した場合も同様です。
※就業規則は、労働基準法などの関係法令、または労働協約に反してはいけません。

1.必ず記載しなければならない事項

(1)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
(2)賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
(3)退職に関する事項

2.定めをする場合は記載しなければならない事項

(1)退職手当に関する事項
(2)臨時の賃金(賞与)・最低賃金額に関する事項
(3)食費・作業用品などの負担に関する事項
(4)安全衛生に関する事項
(5)職業訓練に関する事項
(6)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(7)表彰、制裁に関する事項
(8)その他全労働者に適用される事項

就業規則 作成 労働者代表の意見を聴取 意見書を添付 所轄労基署への届出
変更
労働者へ周知(第106条)

 

法令等の周知義務【第106条】

 法令の要旨、就業規則、各種労使協定などを掲示、備付け、書面の交付等によって労働者に周知しなければなりません。

        使用者 
        

次の事項を労働者に周知する。

(1)労働基準法及び同法による命令等の要旨
(2)就業規則
(3)労使協定
   @貯蓄金管理に関する協定(第18条)
   A購買代金などの賃金控除に関する協定(第24条)
   B1か月単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の2)
   Cフレックスタイム制に関する協定(第32条の3)
   D1年単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の4)
   E1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定(第32条の5)
   F一斉休憩の適用除外に関する協定(第34条)
   G時間外労働・休日労働に関する協定(第36条)
   H事業場外労働に関する協定(第38条の2)
   I専門業務型裁量労働に関する協定(第38条の3)
   J年次有給休暇の計画的付与に関する協定(第39条)
   K年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定(第39条)
(4)企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容(第38条の4)
 

       


周知方法    
●次のいずれかの方法で周知しなければなりません●
 @常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける
 A書面で交付する
 B磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する


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