耳鼻いんこう科・アレルギー科野垣医院
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難聴と補聴器(1)
耳と難聴と補聴器
耳の働き
音の本質は、振動する物体から発生する空気分子の粗密波で、特に人の耳に感じられるものを言い、空気分子の運動の方向に進みますから縦波といわれます(物理的表現)。しかし又、空気分子の運動が聴覚器官に伝えられ大脳で自覚された感覚をもって音とも言います(心理的表現)。
空気の圧力の変動は、これが外耳で集められ鼓膜の振動という機械的な運動になり、中耳で増幅され、内耳の感覚細胞で電気的な神経活動に変換されます。すなわち耳は空気の分子運動を電気的神経活動に変えるわけですから、エネルギー変換器です。又このエネルギーを無駄なく伝えるためのインピーダンスマッチング作用があります。
正常な耳とは
人間の耳は大体1000hzから5000hzぐらいの音にもっとも敏感です。それより高い音や低い音に対してはやや鈍感になります。聴力の正常と思われる若い人をたくさん集め、色々な高さと強さの音を聞かせ、音の感覚を初めて生じさせる時の最小の音の強さ(音圧)を決定し、その実効値を最小可聴値としています。これが音に関する心理的な感覚量(大きさ)と機械的な物理量(強さ)の接点となります。したがって実際の聴力検査の際の各周波数の最小可聴値(感覚量)の音圧(物理量)はJISで決まっています。この値と比較して各個人の聴力レベル(db)が決まります
難聴の発症
一般に人は加齢とともに難聴を生じます。個人差はありますが意外と早く起こります。ただそれに気付かないだけで、例えば健康診断で発見されることがよくあります。テレビを見ていて他の人にうるさいと注意されたとき、話を聞き返すことが頻繁にあるとき、見当違いの返事をするとき、騒音の中で相手の言うことが極端に聞き取りにくくなった時は、難聴が始ったと考えてほとんど間違いがありません。

難聴によりその人の得る情報量は減少いたします。それによる不便さの程度は個人によりまちまちですが、社会に出て仕事をしている人にとっては非常なハンディになることは容易に察しがつきます。少し聞きずらい、耳鳴りがする、音が耳に響く、何か耳に詰まったような耳閉感がある、など聴覚の異常があれば、すぐに聴力検査をすべきです。

老人の難聴
一般に老齢化により老眼、難聴が生じます。どちらも年齢的な感覚機能の低下ですが、両者の間には本質的な差異があります。

老眼の場合は、眼球の光学系(レンズ、水晶体)の機能低下が中心になりますので、老眼鏡の使用で補正されます。

難聴の場合は、主に内耳から聴神経、聴覚にかかわる大脳までの広い範囲の機能低下ですので、「音を聴く力」の低下に加えて「言葉を理解する力」の低下が加わります。また、小さい音はもちろん聞き取れないが、ある程度大きい音が耳に入ると逆にガンガン響くといった現象も起こります(内耳障害の強い時)。ここに補聴器による補正の困難さがあります。

使用時期
補聴器の使用の時期は一概には言えませんが、コミュニケーションの障害があれば早めに使用したほうがよいと考えます。
難聴者がすぐに補聴器を求めるのは間違いであります。また若い人が気を利かせて、お店で補聴器を購入しプレゼントとしておじいちゃんやおばあちゃんにあげるのは、ちょっと考え物です。必ずその人に最適の補聴器があるからです。難聴があればその種類を確かめ、直るものは直し、直らなければ補聴器を考えるべきです。

お年寄りで高度の難聴がある場合に、急に補聴器を進めてもすぐにはうまくいきません。見栄えが悪く敬遠する人が多いようですが、できれば少しでも早く利用し練習しなれることが必要です。

その人の職業により補聴器の使用時期が異なります。だいじな会議に出る機会の多い人は、複数の補聴器を使い分ける人もいます。

先天性の難聴がある時は、なるべく早期に使用し、聴能訓練が必要です。

補聴器とは
補聴器は、簡単に言えばマイクで音を拾い増幅しイヤホンで耳から聞くというだけで、簡単な増幅器です。しかし、それ以外に微妙な調節機能と使用方法を持った精密な医療機器の一つです。

難聴の種類や程度はいろいろありますが、すべてに合う補聴器というものはありません。
中途失聴者の場合は、残された聴力を有効に活用するために補聴器を使用するわけですから、言葉の明瞭度を上げるようにします。先天性の高度難聴(聾など)の場合は、全く音の世界を知らないわけですから、手話や読唇と同時に用いられる補聴器の使用目的や方法はまた変わってきます。いずれの場合もコミュニケーション障害を少しでも減少する道具であると考えられます。

補聴器と耳の組み合わせは全くのブラックボックスであり、音響、聴覚、音声言語、補聴器などのある程度の専門的な知識を持った技術者によってフィッティングされるべきと考えます。

機種選択
最初の補聴器の選び方は慎重にしてください。

先ず、聴力の検査を受け、自分の聴力のタイプから機種の選択をします。難聴の程度や種類によっては補聴器の効果の少ないものもありますから、購入の前に言葉を使った語音聴力を調べ補聴器の効果を予測します。

機種が大体決定したら、何しろ少し高価ですから、一週間ほど借りて試聴してください。補聴器のよしあしは実際に使用しなければ判断できないからです。勿論使用方法に精通してください。

機種の選択が適切であれば、完全とは云えませんが其れなりの効果は望めます。ただ、補聴器の使用者は全てが満足出来るとは限りません。過大の期待は禁物です。

補聴器を選ぶにあたっては、自分で勝手に選択してはいけません。格好が悪くて大きく目立つからいやだとか、販売店で勧められたから良い物だろうとか、高価なものほど性能がよいだろうとか、こういう考え方は間違っています。必ず自分に最適のものを見つける科学的な方法があることを忘れないでください。

補聴器の使い方
実際に自分に合った補聴器を購入した後では、先ずそれに慣れることが先決です。周囲の人が根気よく教え、又自分で説明書を読み用語を理解し大体の使い方を勉強しなければなりません。一般に高齢者の場合は、細かい小さな文字やスイッチ類は見ずらく、また根気が無くいらいらすることがあります。周囲から暖かく見守ってゆっくり指導することです。
補聴器をつける順序
1)スイッチを切るか又はボリュウムを最小にする。
2)イヤホンを耳に入れる。前後を確かめ隙間の無いようにぴったり挿入する。
3)ボリュウム徐々に上げて行く。
4)聞きたい音に応じてボリュウムを調節する。
5)はずす時はボリュウムを最小にするかスイッチを切ってからはずす。
(注意)挿入時に隙間ができると「ピーピー」と音が出ます(ハウリング)。
段階的練習
補聴器をつけると急に周囲のもろもろの音がいっぱい聞こえてきます。最初はやや小さめの音量で少し練習します。段階を踏んで徐々に慌てず慣れていくようにします。相手の口元をよく見て、また身振り手振りをよく見て補聴器からの音を聞きながら理解するように努力する。
  • 第一段階
    本を読んだりして自分の声になれる。
  • 第二段階
    静かなところでテレビのニュース番組などをきく。
  • 第三段階
    静かなところで二人で話す。普通の大きさでゆっくり話してもらう。
  • 第四段階
    4〜5人で会話をする。自分も参加する。
  • 第五段階
    日常会話に積極的に参加する。
身体障害者福祉法と補聴器
難聴が進みコミュニケーション障害が生じますと、生活の質いわゆるquality of lifeが低下します。聴力検査の結果が、1)両耳の聴力レベルが70db以上のもの(40センチメートルの距離で発声された会話声を理解し得ないもの)、2)一側耳の聴力レベルが90db以上、他側耳の聴力レベルが50db以上のもの、であれば聴覚障害の6級に該当し身体障害者手帳が交付されます。この時、希望があれば申請すれば決められた範囲内で補聴器が交付されます。
まず、耳鼻科のお医者さんで補聴器の交付についての意見書を書いてもらいます。診断名、検査結果、希望補聴器のタイプ、補聴器使用による効果、などを書いてもらい、市町村の福祉関係の窓口へ提出しますと、適当と認められれば交付されます。
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きこえの検査
日本の高齢化社会が進むにつれて、当然補聴器使用者が増えてきます。これは精密な純然たる医療機器ですが、種類も色々ありどれが良いか本当に迷ってしまいます。実際に使用してみて、思ったほど効果が上がらずいつのまにか使わなくなる例がよくあります。

従ってその使用に関しては十分に注意すべきです。お孫さんからの贈り物としていただくのは良いのですが、必ず専門医と相談して、自分に合ったものを選択するようにしましょう。事前に十分な自分の耳の検査を受けてください。
難聴があれば、その程度、性質、障害の部位、原因を医学的に調べる必要があります.

  1. 一般的な検査
    • 外耳道の検査
    • 鼓膜の検査
    • レントゲン検査(必要ならば)
  2. 聴力検査
    • 純音聴力検査
      • (a)気導検査====外耳道より125〜8000ヘルツの純音を大きさを変えて聞かせ、ききうる一番小さな音のレベルを調べ、基準からどのくらい低下しているかを判断します。
      • (b)骨導検査====同じ純音を特殊なレシーバーで耳介の後方の頭蓋骨に当て、同じ検査をします。
    • 語音聴力検査
      • (c)語音聴取閾値検査==決められた言葉の集まり(2〜7の1桁の数字)を一定の方法で大きさを変えて与え、これを書き取らせ、50%正当率の得られる大きさのレベルを調べるものです。
      • (d)語音明瞭度検査===決められた言葉の集まり(無意味単音節)を一定の方法で大きさを変えて与え、これを書き取らせ、その最高の正当率を見るものです。
    • その他の検査
      • (e)UCLテスト====不快レベル検査。ある決まった周波数で音を徐々に大きくして行き、耐えられなくなるレベルを調べます。
      • (f)MCLテスト====快適レベル検査。どの大きさのレベルでもっとも快適に聞こえるかを調べます。
純音聴力検査は、検査音の「高さ」を125(250)hzから8000hzまで一定の方法で変え、更に其の各々の音の「大きさ」を変えて聴かせ、最小可聴閾値(聴取しうるもっとも小さい音のレベル)を求めるものです。其の値を其の人の「聴力レベル」といい、デシベル(db)という単位で表されますが、健康な若い人ではどの高さの音でも大体0dbになります。40dbの人は、検査のときに健康な人よりも40db大きな音を出した時に初めて聴き得るわけで、40dbの聴力低下があることになります。

気導とは音が外耳道の空気を通して内耳へ伝えられることであり、骨導とは音が頭蓋骨を通して内耳へ伝えられることをいいます。これを利用した(a)と(b)の気導と骨導検査で、 難聴の程度とその障害の存在する部位を知ることができます。

しかしこの検査は、純音と云われるきれいなサインカーブを描く「ブー」とか「ピー」とか聞こえる音であり、日常の生活ではあまり遭遇しません。われわれの生活する場所では、まわり中は騒音や雑音ばかりです。もののぶつかる音、人の話し声、テレビからの音、自動車の音、やかんや鍋で煮炊きする音など、いっぱいあります。ここで必要になるのは、実際に人の言葉を使 った検査や、或いは雑音の中での言葉を用いた検査などです。

(c)と(d)の検査は実際に人の言葉を用いて検査を行います。ある大きさで語音を与えますと最高でどれだけ聞き分けられるかが分かりますので、補聴器の効果も大体判断できるというわけです。

(e)の検査は、フィッティングの際に最大出力音圧を決める目安になります。補聴器からあまり大きな音が出ないようにあるところでカットするわけです。(f)の検査は、どれくらいの大きさの音が一番聞きよいかを調べます。大体(a)と(e)の中間になります。

しかしこれで問題が解決したわけではありません。実際に使用してみますと、おもった程効果が上がらないのが普通です。購入の前には一週間ほど借りて実際に使用してみることをお勧め致します。購入の後も勿論使用法に精通し、いろいろな場面での練習が必要です。お年寄りは一般に細かいことが苦手であり、小さなつまみを回せないことが良くあります。周囲からの励まし、援助、助言が必要であります。

難聴のタイプ

(聴力検査の結果から次の3つに分けられます。)

a)伝音性難聴
これは、外耳、鼓膜、中耳の障害によって起こる難聴です。最近の医学の進歩により比較的治り易くなりました。また補聴器の効果が期待される難聴です。例)鼓膜穿孔のある慢性中耳炎など。

b)感音性難聴
これは内耳の感覚有毛細胞、聴神経、聴覚に関係する大脳の障害によって起こる難聴です。小さい音は聞きずらく逆に大きい音はガンガン響くことがあります。また、音が聞こえていても言葉として理解できにくくなります。補聴器の効果はやや悪くなります。例)老人性聴など。

c)混合性難聴
これは、上の2つの混ざった難聴です。

難聴の程度

補聴器の使用にあたっては、日常の会話で其の人がどれくらい不自由しているのか知る必要があります。それには会話音域(500〜2000hz)の「平均聴力レベル」を算出し、其の目安とすることが出来ますが、大体次のように表現します。

(a)20〜40db:軽度難聴
(b)40〜70db:中等度難聴
(c)70〜90db:高度難聴

たくさんある機種の中から、どの程度のものを使うかと言う目安になるわけです。

補聴器の種類と構成要素
(1)「ポケット型」
箱型の補聴器で、シャツのポケットに入れて使用します。本体からコードが出ており目立ちますので一般に嫌われる様です。

(2)「耳かけ型」
補聴器の本体は細長く少し湾曲して作られており、耳介に引っ掛けて耳の裏に装着します。コードが無く音を細い管で外耳道へ誘導して聴くようになっています。最も標準的なタイプで良く使われています。

(3)「耳あな型」
最も小さく本体はスッポリと外耳道に入ってしまいます。小型のため性能に限界がありますが、目立たないため好まれます。

(4)「特殊な物」
骨導補聴器、眼鏡型補聴器など。最近はより高性能なデジタル補聴器が開発されつつあります。

(1)、(2)、(3)はいずれも基本的には構造に大差ありません。

補聴器の構成について
==「マイクロホン」集音器。音を集め電気的な信号に変える。
==「アンプ」増幅器。電気信号を増幅する回路。
==「イヤホン」耳栓。増幅された電気信号を音に変え、耳に与える。
以上が基本的な回路ですが、色々なタイプに対応するために次のような部分があります。
==「ボリューム」利得調整器。増幅の強さを調節する。
==「音質調整器」聞こえにくい音の領域を調節する。特に高音部。
==「出力制限装置」大きな音がマイクロホンに入った時に、耳に大きすぎる音が入らないように制限する。

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