耳鼻いんこう科・アレルギー科野垣医院
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かぜ症候群
耳鼻咽喉科と「かぜ」

「かぜ」正確には「かぜ症候群」とは、鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支など上気道の急性炎症の総称であり、その病名や病型は古来学者によっていろいろ分類されてきました。耳鼻咽喉科的には鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽腔炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、等と呼ばれ、まとめて「急性上気道炎」とも言われ「みみ」「はな」「のど」とは非常に関係があります。中でも怖いのがインフルエンザであります。

「かぜ症候群」は多彩な症状が出ますが、一般には次のようなものが多いようです。
「頭痛」2次的な血管性頭痛が多いといわれます。
「発熱」病原微生物に対する防御反応のひとつであり、ウイルスの活性を落とします。
「鼻水」炎症反応のひとつであり、微生物の感染を押さえる成分が含まれています。
「クシャミ」鼻水が多い時体外に強制的に出してしまいます。
「痰」微生物やその死骸を気管の繊毛運動により、体外に押し出します。
「咳」気管の痰を強い呼気で体外に吐き出します。
「筋肉痛」「関節痛」インフルエンザの時によく見られますが、原因はよくわかっていません。
「全身倦怠感」「下痢」「腹痛」なども見られます。

耳鼻咽喉科的には、2次的に種種の症状が出ます。
「耳痛」急性中耳炎の時には、当然中耳の細菌感染が起こりますから、激しい痛みが生じます。
「難聴」一時的の軽いものが多いようですが、強い耳の痛みにかくれて気付かれない時があります。
「耳閉感」中耳や耳管の炎症によります。
「耳漏」鼓膜の穿孔により耳垂れがでます。
「めまい」内耳炎が起こった時に出ますが、滅多にありません。
「頬部痛」強い鼻ずまりの結果急性の副鼻腔炎が起こった時によく出ます。
「前頭部痛」前頭洞炎を併発した時に出ます。
「咽頭部痛」咽頭や扁桃の炎症により出ます。
「開口障害」扁桃腺の周囲の炎症によります。
「嚥下痛」下咽頭の強い炎症のため、飲み込みにくくなる時があります。
「さ声」声帯の炎症によります。
「膿性痰」レジオネラや連鎖球菌の感染の場合。

その病原微生物は80〜90%がウイルスであり、残りが細菌やマイコプラズマ、クラミジアという微生物で起こります。ウイルスは非常に小さく、「濾過性病原体」と称され今世紀の初めから其の存在が知られていました。1933年インフルエンザウイルスが発見され、その後いろいろのウイルスが分離培養されるようになりました。現在本来の「かぜ症候群」の病原ウイルスとしては、冬はインフルエンザa、b、rsウイルス、夏はコクサッキー、エコー、エンテロウイルス、通年型としてパラインフルエンザ、アデノウイルス、季節とはあまり関係のないコロナウイルス、ライノウイルス等といったウイルス群があります。

ウイルスは普通の光学顕微鏡では到底見ることはできません。生きた細胞に寄生しその中で増殖し、DNA又はRNAを持っています。インフルエンザa型ウイルスは時々新型ウイルスが出現して、地球規模で大流行を起こします。其のときには人々はほとんど免疫を持たないため、1918年のスペインかぜの時には(1930年以前はインフルエンザウイルスは発見されていなかったが)世界中で2000万人以上の死者が出たと言われています。1946年のイタリアかぜ、1957年のアジアかぜ、1968年の香港かぜ、1977年のソ連かぜの大流行の時にはいずれも新型のインフルエンザウイルスが発見されています。

「かぜ症候群」は「普通感冒」と「インフルエンザ」に分けられます。
「普通感冒」は大体1週間以内に治り、クシャミ、鼻水、鼻ずまり、咽喉の痛み、さ声、咳などの呼吸症状と、発熱、頭痛、腰痛、全身倦怠感などの全身症状を訴えます。細菌による2時感染が起こると、中耳炎、副鼻腔炎、又は肺炎などを伴うことがあります。rs、パラインフルエンザ、コロナ、エンテロ、ライノ、アデノウイルスによるものです。
「インフルエンザ」はこの「普通感冒」の症状が急激に始まり、悪寒戦慄、発熱、頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠感などが強く現れます。発熱は39度から40度ぐらいまで上り、3日ないし4日継続しその後は徐々に改善され、10日前後で全治します。インフルエンザウイルスa,b,cによるものです。

この「かぜ症候群」は耳鼻咽喉科と密接な関係があります。2次感染を起こした時には、急性中耳炎、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性へんとう炎、急性喉頭炎、急性気管・気管支炎などを併発するからです。
#####「急性中耳炎」殆どが経耳管感染で、子供がかぜの後で寝付かれず夜鳴きをする時はこれを疑ったほうがよいと思われます。強い耳痛、発熱、耳漏、又は難聴や耳鳴が必発です。連鎖球菌、ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは違います)が起炎菌です。
#####「急性副鼻腔炎」クシャミ、鼻水、掻痒感など急性鼻炎の症状で始まり、粘液性、膿性の鼻漏に移行します。鼻ずまり、頬部痛(上顎洞炎)、前頭部痛(前頭洞炎)、鼻根部痛(篩骨洞炎)、後頭部痛(蝶形骨洞炎)、全身倦怠感、発熱、食欲不振などを訴えます。ブドウ球菌、インフルエンザ菌、ブランハメラ、嫌気性菌などによります。
#####「急性咽頭炎」かぜの後に最もよく起こるのが咽頭痛、咽頭違和感、嚥下痛などです。耳への放散痛、発熱なども見られます。連鎖球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌などによります。
#####「急性扁桃炎」扁桃が化膿したときには、高熱、咽頭痛、悪寒戦慄、全身倦怠感、嚥下痛、耳への放散痛など多彩な症状が出ます。なんべんも繰り返す時には手術の対称になります。溶連菌、黄色ブドウ球菌、によることが多く、ブランハメラ、インフルエンザ菌、クレブシエラ、エンテロバクター、緑濃菌が見られます。
#####「急性喉頭炎」全身倦怠感、脱力感、さ声、失声、咽喉の違和感や乾燥感、喉頭痛、息がしにくいなどと訴えます。インフルエンザ菌、肺炎球菌、溶連菌、ブドウ球菌などが見られます。
#####「急性気管・気管支炎」咽喉頭炎に引きつずいて起こりますが、やがて乾性咳嗽、湿性咳嗽、喀痰などが見られます。ブドウ球菌、溶連菌、連鎖球菌、肺炎双球菌、インフルエンザ菌などによります。

二次感染による気道炎症
「かぜ症候群」ではウイルス感染の後の細菌による二次感染が問題になります。頻度は高く、また比較的早く2〜3日後には肺炎球菌やインフルエンザ菌が検査で分離されます。上気道粘膜が傷害され粘膜の繊毛運動が悪化し、痰が溜り細菌が上気道から下気道に入り、容易に肺炎を起こします。
インフルエンザウイルスは、一般に気温が低く乾燥しているときに活発になります。しかし、季節はずれに流行したり、熱帯でも流行しますから、季節は絶対的な条件にはならないとも言われます。

インフルエンザについて
インフルエンザは西洋では紀元前412年に、日本では平安時代の862年に流行したと言う古い記録があるそうです。よく知られているのは、1918〜1920年のスペインかぜ、1957〜1958年のアジアかぜ、1968〜1969年の香港かぜ、1977〜1978年のソ連かぜ、などです。
スペインかぜは、第一次世界大戦の時期にアメリカからヨーロッパに広がり2千万人以上の死者が出ました。西部戦線で両軍兵士に多数の被害が出てこの為に戦争の終結が早まったとも言われます。わが国では、1918年(大正7年)8月から11月にかけて大流行し、1921年7月までの間に38万8千人以上の死者が出ました。
アジアかぜはスペインかぜの40年後に香港から始まり、東南アジア、日本、オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパと急速に広がりましたが、その死亡率はスペインかぜの1/10と比較的経度でありました。発端は中国南西部と言われています。
香港かぜは新型ウイルスが香港で爆発的に流行し、台湾、シンガポール、日本、オーストラリアからアメリカへ拡大しましたが、ヨーロッパではあまり流行しませんでした。
ソ連かぜは、中国北部からシベリア、西部ロシアに拡大し、日本、アメリカ、ヨーロッパ、lオセアニア、南米にまで流行しました。

インフルエンザウイルスの分類
内部たんぱく質の抗原性の違いにより、a,b,c型に分類されます。a,b型ウイルスは強い症状が出しますが、c型ウイルスによる症状は軽度です。a型ウイルスは、さらに表面のヘマグルチニン(ha)とノイラミニダーゼ(na)の抗原性の違いにより、haは15種(h1〜h15)、naは9種(n1〜n9)の亜型に分類されます。いずれもRNAウイルスです。現在人から分離されているa型ウイルスは、h1n1,h2n2とh3n2です。b、c型ウイルスも人から分離されています。スペインかぜはh1n1,アジアかぜはh2n2,香港かぜはh3n2,ソ連かぜはh1n1でした。

ウイルスの感染と増殖
インフルエンザウイルスは、人では一般に上気道から下気道に感染拡大し、強い症状を出します。
ウイルスは宿主の細胞に吸着し、侵入します。内部でいろいろな過程を経てウイルス蛋白質が生合成され、細胞表面に出芽し成熟粒子となって放出されます。この増殖のサイクルは約10時間です。

インフルエンザ予防注射について
インフルエンザワクチンの接種は、流行の前に受けておけば80%ぐらいの方はインフルエンザにかからずに済みます。65歳以上の高齢者、老人ホームなどで集団生活をする人、肺・心疾患や喘息を持っている人等ハイリスクグループの人は絶対に必要です。また、患者と接する機会の多い医療従事者も受けるべきです。ワクチンの接種により十分な抗体が得られるまでの期間は約2週です。毎年11月から12月中に接種を終えておくことが望ましいと言われます。
1940年代のワクチンは純度が低く副作用も出ましたが、1970年代以後は副作用が軽減しました。1960年ごろには児童学童中心に予防接種が始まりました。その後接種率が低下し、任意接種となりました。最近高齢者の施設における集団感染や死亡、小児における流行期の脳炎の発生が問題になり、ここ数年ワクチンの供給量が増加接種率も増えてきております。

子供の発熱
子供の37.5度以上の発熱の殆どは細菌やウイルスの感染によるものであり、年に数回繰り返すことがあります。こうやって免疫学的に抵抗力をつけていきます。感染症の発熱は大体三日以内で収まることが多く、特に解熱剤などは必要はないと言われます。高熱でも元気で全身状態がよく機嫌がよければあまり心配は要りません。発熱は生体の防御系の働きを高めるメッリトが在ります。
しかしここで忘れてならないことは、耳鼻咽喉科的に見て、すぐに耳、鼻、扁桃、などに炎症が波及することがあるからです。かぜの度に黄色い鼻汁を多量に出す子供、すぐに耳痛を訴える子供、軽い難聴をきたす子供、強い咽頭通の為に食事のできない子供、のどがゼイゼイと音を出し息苦しい子供等は要注意です。

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