「北日本新聞」平成11年5月17日(月)
【アルコール依存症 脱却法教えます】
富山市民病院・吉本部長ホームページ開設
中高年男性に多いと思われがちなアルコール依存症だが、若い女性の中にも悩みが増えている−。富山市民病院の吉本博昭医師(精神科)がまとめたインターネットによるメール相談でそんな実態が浮き彫りになった。 「依存症ではないか」と心配になり、相談してきたケースは男女ほぼ同数だったという。吉本医師は「依存症は病気だという認識を持つてほしい。末期医療になりやすいが、早めに相談すれば早期治療につながる」と話している。
アルコール依存症は自分で酒の量や回数をコントロールできず、酒を断たれると手が震えたり、眠れなくなるなどの禁断症状が現れる。病状がさらに悪化すると、肝硬変やアルコール性痴ほうを引き起こす。
女性の場合は病名への抵抗感から病院を訪れなかったり、家族が外出している間に飲酒する機会が多いため、発見が遅れがちといった傾向があるという。インターネットを使ったメール相談は匿名にできるうえ、二十四時間いつでも利用可能なため、相談しにくい病気に悩む人にとって治療の機会が増える。
吉本医師が九年一月に開設したホームページ「グッバイ・アルコール依存症」では、アルコール依存症の予防法や医療情報を提供しているほか、メール相談も受け付けている。全国的にも珍しく、開設以来、国内外から約二万件の利用があった。
メール相談者は百十二人で、女性が七十二人と全体の六四%を占めた。相談者の平均年齢は三十歳。二十代と三十代で全体の九割を占めている。相談対象者(だれのことについて相談してきたか)は父親が三六%と最も多く、次いで本人三三%、夫、母親が各七%。本人の内訳は男女がほぼ同じだった。
吉本医師は「中高年の病気というイメージが変わりつつある。若い世代、特に女性の中に悩んでいる人が多いことが分かった」と話す。
相談内容は「時々記憶がなくなってしまう」 「家族に隠れて酒を飲むようになった」「毎日飲んでいるが、依存症ではないか」など。吉本医師は「意志の問題ではなく、病気という認識を持つことが大切」とアドバイスし、専門の病院を紹介するなどしている。
インターネットの利用者はまだ多くないため、今回の結果は氷山の一角で、女性の”予備軍”はかなりいることも予想される。吉本医師は「インターネットを利用した医療体制が広まれば、相談しにくい病気に悩む人のカウンセリングや初期治療が可能だ。不安になったら、まず相談してほしい」と話している。
吉本医師は、今回まとめたメール相談の結果を六月に横浜市で開かれる日本アルコール関連問題学会で発表する。
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