平成11年度前期アルコール・セミナーたより(No.3) 

(平成11年6月18日)



 梅雨に入って暑い日や雨の日など天候がすっきりしない日が続きますが、あじさい やショウブ等の花が、美しく咲いて心を和ませてくれますね。
 さて、6月のアルコール・セミナーは『アルコール依存症と体の病気』をテーマ に、スライドを交えて富山市民病院の吉本先生に講義をしていただきました。
 ではその内容についてご紹介します。

  ア ル コ ー ル の 分 解  ア ルコールの分解−肝臓で分解されて初めてからだからなくなる            尿や汗で体外へ出るアルコールは多くても飲んだ量の10%    アルコールの消失時間 どんな人でもほぼ一定           ビール コップ1杯  1時間               大ビン1本  3時間          日本酒  1 合   3時間                3 合   9時間   ア ル コ ー ル と 脂 肪                  水素原子            肝臓へ沈着     アルコール…肝臓で分解   水素原子    脂 肪                  水素原子   (血 液)                                  心臓へ沈着      大量飲酒者   血中の脂肪量が非常に多い              血清が白く濁る…肝臓の働きが悪い(健康な人…無色透明)                  肝 臓 の 病 気   脂 肪 肝  肝臓 に脂肪が沈着したもの          5合以上の日本酒を飲むと数日で出現   アルコール性肝硬変   肝  臓  硬く表面は凸凹してくる          正常な細胞が少なくなる。          末期になるとγ−GPT、GOTもあがらなくなるくらい弱る。   食道動脈瘤  肝硬変になると流れが悪くなり、バイパスとして食道の内側を流 れ         る。         食道内部に血管が、盛り上がってく る。          盛り上がっている血管が硬い食べ物などで傷つけられると、大出 血         を起こし、死亡の原因となる。   腹   水  肝硬変が悪化すると腹水がたまり、おなかが異常に出てくる。   膵 臓 の 病 気  膵 石 症  アルコール依存症者に多い。          膵炎を繰り返すと膵臓内に石がたまり、膵臓の機能が悪くなる。          糖尿病も併発する。 ア ル コ ー ル と 脳 細 胞   成人を過ぎると脳細胞は1日20〜30万個づつ壊れていく。  アルコールは この破壊過程を早める。   大量飲酒者は脳細胞の大量破壊により空洞化し、年齢に比べて早く萎縮する。   痴呆症状が出現する。      ・お酒を止め続けると細胞の連絡がうまく進むため、少し改善する ア ル コ ー ル と 性 ホ ル モ ン 【男性の場合→女性化する】 体にアルコールが残っている間、血液中の男性ホルモンのレベルは下がっている。 大量飲酒者の場合は、飲酒にかかわらず慢性的に血液中の男性ホルモンのレベルは低い。逆に、肝臓障害等で女性ホルモンの分解が悪くなり、相対的に女ホルモンが高くなる。 男性の場合、性ホルモンのバランスが崩れ、女性化乳房となり、乳房が膨らんでくる。 【女性の場合→男性化する】 飲酒後、血液中の女性ホルモンのレベルは下がり、男性ホルモンのレベルが上がってくる。 大量飲酒者の場合、女性ホルモンのレベルは慢性的に低い。このため女性的な体型が崩れる。        種々の性機能障害が出てくる。 性周期が乱れ閉経が早くなる。
 今回のアルコール・セミナーはいかがだったでしょうか?
 飲み過ぎは体に悪いとよく言われますが、こんなに多くの内科的な病気を引き起こすことを改めて考えさせられたように思います。
 飲み続けると脳も内臓も悪くなりますが、飲まない生活を続けると、また脳も内臓も働き出す場合もあります。きちんと治療をして、飲まないで生活することを考えてみませんか。

(文責:杉本留美)







アルコール依存症と家族
アルコール依存症は家族病
1.家族は常にバランスを保とうとしている
2.家族はそれぞれ不安や心配をもっていて気付いていても、それに触れようとしないことがある
3.初めは思いやりや愛情から依存症の問題を何とかしようとして、家族は慢性的持続的に頑張る
4.家族が、無理をして、疲れ、傷ついて病気になっていく

共依存とは
1.人間関係のとらわれで、相手の問題をなんとかしようとする
2.相手を自分の思うように動かそうとすることにとりつかれた不健康な行動パターン
3.自分のことを犠牲にしても相手のことにエネルギーを注ぐようになる
4.依存症以外の人間関係でも同じ様なパターンを繰り返してしまう

アルコール依存症者の家族の変化
1.
 
 
 
4つのルール
硬直、沈黙(家の中で起こっていることを外へ向かって言わない、家族同士でも話さない)、孤立(世間から隠そうとする。家族のカプセルに閉じこもる)、否認(本人だけでなく家族にも認められる)
2.
 
 
 
 
規則が変わる
話さない…友達ができても家のことが話せない、話さない
       →友達を作らない、家に閉じこもる
信じない…約束を守らない→信じても仕方がない)
感じない…感情のブレーカーを落とす
3.
 
役割が変わる
妻…親のような世話焼き、子供…母の相談相手
4.
 
しきたりが変わる
酒のために習慣が変わる
5.
 
会話が変わる
会話が変わるか、会話がなくなる

アルコール依存症が進行するように、共依存も進行している

共依存のパターン
1.飲酒を何とかしようとする
 本人でなく家族がする(飲ませないように酒を隠す、捨てる)
2.飲酒の理由を何とかしようとする
 理由を明確にしようとし、その理由を何とか治そうとする。
 本人の飲酒の理由   家族の考える対処 
 妻がうるさい  →  よい妻になろうとする 
 親の育て方が悪い  →  よい親になろうとする 
 会社が嫌だ  →  転職すればよい 

3.飲酒の結果を何とかしようとする
 本人の飲酒の結果   家族のする対処行動 
 部屋を汚す  →  片付ける 
 欠勤する  →  会社に言い訳をする 

本人がしたことへの尻拭いをし、家族が傷つき疲労する。
本人が飲んでいる間に後始末をしてしまうために本人には分からない。
わからないから、再び本人は同じ酒を飲んで問題を起こす。
世話焼き行動の結果
 アルコール依存症が飲酒によって起こる問題に直面せずにすむ。
 家族が世話を焼けば焼くほど手をひけなくなる。


共依存からの回復
 家族も本人が酒を抜いて1年、2年かけないと戻れない。人によって時間も違う。
第1段階:世話焼き行動によっておきる苦痛を認める「依存の病気を認める」
第2段階:共依存を認め、自分自身に目を向ける「酒以外の問題を認める」
第3段階:世話焼き行動が無力であることを認める「対人関係の問題に気付く」
第4段階:生き方を変える努力をする「原家族の問題に気付く」

愛をもってアルコール依存症の問題のとらわれから、離れること

アダルト・チャイルド
 以上のような家族(機能不全家族)で育った人は、アルコールという怪物のなかで育った人であることが多く、社会に出て他の人と接した時にいろいろと弊害が認められる人を言う。
 子供の時に身につけたものを着替えることで、自分を変えれる可能性を持った人でもある。
 子供時代、英雄役、叱られ役、不在役、道化役、慰め役、支え役をやりながら生き延びて大人になった人でもある。
 修羅場を生き抜いた生還者とも言える。

 今回のアルコール・セミナーはいかがだったでしょうか?
 飲み過ぎは体に悪いとよく言われますが、こんなに多くの内科的な病気を引き起こすことを改めて考えさせられたように思います。
 飲み続けると脳も内臓も悪くなりますが、飲まない生活を続けると、また脳も内臓も働き出す場合もあります。きちんと治療をして、飲まないで生活することを考えてみませんか。

(文責:杉本留美)