平成9年度前期アルコール・セミナーたより(No.3) 

(平成9年6月20日)



 梅雨に入り、晴れて30度を越す日が続くかと思えば、長雨が続いたりと、天候が一定しませんが、体の調子はいかがでしょうか?
 さて、6月20日に平成9年度第3回アルコール・セミナ−が行われました。
 富山市民病院 精神科医 吉本先生に「アルコール依存症の治療」をテーマに講演していただきました。ではその内容についてご紹介します。

(1)アルコール依存症とは
  アルコール飲料を長く飲酒
     → 習慣性となる
        → コントロールの効かない飲み方となる
           → 心身の問題や社会問題が出現する病気となる

  診断の基準(以下4項目を満たせばアルコール依存症)
  ■飲酒量を増やしていかないと酔わなくなるという耐性増加。
  ■家庭や職場で隠れてでも飲酒するというアルコールへの精神依存。
  ■禁酒後に手のふるえや発汗、幻視などのアルコール退薬症候群(禁断症状)。
  ■家庭や社会で問題のある飲酒。

(2)治療を妨げるもの
【個人レベル】
 病気に対する否認(大酒飲みだが病気ではない)
 病気についての知識が不十分(意思が弱いから酒を止められないという誤解)
 治療への恐怖
 ボ−ッとして状況理解が不十分(意識障害、コルサコフ、痴呆)
【家族レベル】
 病気への否認
 病気についての知識が不十分(意志が弱いから酒を止められないという誤解)
 家族が果たしているアルコール依存症悪化への役割の否認
 家族も治療の対象であることに対する抵抗
【社会レベル】
 アルコール飲酒に対する寛容さ(問題指摘が遅れる)
 病気についての意識が不十分
  (アルコール依存症とは駅のベンチに寝ている人達だ)
 社会が果たしているアルコール依存症悪化への役割の認識のなさ

(3)治療を行うに際しての基本事項
家族が最初にぶつかる問題
★節酒か断酒か?
 節酒−連続飲酒発作に陥りやすい。非常に危ない状態。節酒できる人はアルコール乱用の人。
 断酒−節酒するよりも断酒するほうがやさしい。
    アルコールによる身体障害に対して、断酒のほうが生命予後が良い
★精神科の入院か外来か?
 外 来
   ・スリップ(再飲酒)を数回繰り返しても、体や職場や家族が耐えれる場合
   ・家族自体が病気に対しての認識があり、治療意欲もある場合
   ・患者が断酒の動機が強く、身体的に外来治療継続に問題がない場合
 入 院
   ・脳機能が障害されている場合(意識障害、記憶の障害)
   ・家族がノイローゼになっている場合
★自助グループだけの参加で回復が可能か?
   ・治療機能がないので、効率的ではない。
   ・スリップする可能性が高い病気であるので、心と体の相談機関を持つことは、
    安心して回復に取り組める
★自助グループに参加せずに治療ができないか?
   ・断酒は可能であるが、人間的な新生(新しい生活)に至りにくい。
   ・参加を避けることがすでに病気の本質を持ち続けており、スリップしやすい。
★抗酒剤を飲まないで治療はできないか?
   ・可能であるが、3本の矢の1本を失うことになる。
   ・できれば6ヶ月から1年間は服用したほうがよい。

(4)家族がなぜ治療を受けたほうよいのか
*患者の飲酒による悪循環に巻き込まれており、家族が精神的に落ち着く必要がある。
*患者の飲酒による悪循環に組み込まれ、家族の行動(世話焼き行動など)が悪化の原因の一つとなっている。
*家族(妻)にACが多く、生きづらさをすでに持っており、治療を受けた方がよい。
*家族の新生によって、患者も変化しアルコール依存症から回復する場合もある(自分が変化すると、相手も変わる。鏡のようなもの)
*患者と妻(夫)だけの問題だけでなく、子供の考え方や生き方にも影響を及ぼすため。


 アルコール依存症は、否認の病気だといわれていますが、飲酒者にとっても、家族にとっても実際に治療の必要性については、なかなか認められないようです。
 しかし、治療を始めないことには、最初の一歩が踏み出せないことも事実です。
 家族全員が健康で幸せな生活ができることを最終目標に、治療をすること、治療を続けることを考えてみてはどうでしょうか。
(文責:杉本留美)