「北日本新聞」平成4年9月19日(土)社会3面

【アルコール依存症:研究会でストップ】


【アルコール依存症の問題が深刻化する中、県内の医師や看護婦、臨床心理士、ケースワーカーらが、治療のネットワークづくりを目指す「富山アルコール関連問題研究会」を発足、二カ月に一回の研究会を続けている。】
アルコール依存症者は1985年の厚生省研究班の調査で少なくとも約二百二十万人、入院が必要な人は四十万人と推定される。県内でも二万人はいる勘定だ。
 専門病棟の不足など、医療体制の遅れが指摘されてきた。県内では予備軍を含めた患者数が正確に把握できないこともあって、富山市民病院が週一回アルコール専門外来を設けているほか、二つの民間病院が混合病棟を持っているだけ。リハビリ施設がないなどの課題もある。
 研究会は昨年(平成3年)十月、十三人でスタート。現在は約二十人が参加する。最初に相談を受ける県精神保健センター電話相談員、医療関係者、社会復帰を援助するケースワーカーら、なんらかの形でアルコール問題とかかわっている。
 全国の先進的な取り組みを探るほか、毎回発表者を決め「死に至った若年アルコール依存症者について」「重症患者の社会復帰援助」など具体的なケースを紹介、参加者で検討を加える。
 研究会を提唱した富山市民病院の吉本博昭精神科部長は、チーム医療の重要性を指摘。治療から社会復帰まで一貫した医療体系ができていない依存症の場合、最初にかかわった人が一人で患者を担当、本人の心に立ち入り過ぎるケースが多い。同部長は「お酒を飲もうとする患者に、逆にコントロールされてしまうこともある」と話す。
 研究会での事例報告は、対応の仕方を第三者がチェック、それぞれの立場での役割分担を知るきっかけにもなる。
 県精神保健センターは「内科診療が肝臓など消化器病の症状を治し、予備軍とされる患者が安心して再び飲み出すことも多い」とし、医師間の情報交換の必要も指摘する。
 吉本部長は「現在は医療スタッフが中心の研究会だが、地域住民も交え社会全体でこの問題と取り組みたい」と話している。

 問い合わせは富山市民病院内の事務局、臨床心理士、山野俊一さん。電話0764(22)1112