回 復 へ の 道 



回復には時間が
HALTに注意
日常性を変える
セルフヘルプ・グループへの参加
医療機関の利用
家族関係の修復


































回 復 に は 時 間 が


 アルコ−ル依存症からの回復には、時間が必要です。何十年間も長い間、飲むという習慣を身につけた者が、3ヶ月入院したとか、半年断酒を続けたからといって、回復しましたとは言えません。3ヶ月間の入院生活を送ったり、断酒を半年間続ける事は、ア症者にとって大変な作業であっても、飲んできた人生という時間のスケールではアッという間の短い時間なのです。飲まない習慣が、そんな簡単に身体に身に付くことはできないのです。人類が将来に時間をワープする技術を獲得しない限り、回復には時間を必要とします。

 がっかりしないで下さい。1週間、酒を飲まない日が続くと、ア症者の目覚めた時の朝は、もう異なってきます。朝の食事がとれたり、嫌なけだるさから少し抜け出したりできます。1ヶ月も続けば、睡眠も取りやすくなります。家族の表情も変わってきます。1年も断酒が続けば、ア症者にも自信が次第に取り戻せ、周囲の自然の声にも心をときめかせる余裕もでます。このように、回復には時間が必要なことは間違いのない事実ですが、喜びは、回復途上から十分に受け取ることができます。




























H A L T に 注 意


 アルコ−ル依存症からの回復には、断酒継続が必要です。その際、いろんなストレスがその行く手をふさいでいます。AAのメンバー達の中では、断酒継続にはHALTに気をつけろという警句があります。この警句が行く手をふさいでいる魔手とも言えます。これは、しらふで生きようとした際に、飲酒欲求が起こりやすいものが何んであるかを表現したもので、飲まないでいるためにはこれらにいかに近づかないで生活するかが大切となります。

 では、具体的にHALTがどんなものであるかを示してみましょう。

。(hungerの頭文字):空腹
 空腹は、飲酒欲求につながりやすいからです。アルコ−ルを断ちますと、体はアルコ−ルが酔いの他に果たしていた働き、つまり体にエネルギーを補給していたのが途絶えてしまいます。そうなると体は何とかして失われたエネルギーを補いたいという欲求が起こります。アルコ−ルの代わりに糖分を口から補給できれば、体の欲求に答えることができます。それができないとなると、アルコ−ルで補給するように体が命令するようになり、それが強い飲酒欲求となります。ですから、空腹を放置したままにすることは、スリップを誘いやすいのです。

■(angerの頭文字):怒り
 怒りはストレスとしては強く、飲酒欲求につながりやすいのです。アルコ−ル依存症者が、両親や肉親、同僚や上司、世の中に対して怒りという炎に身をこがした時、簡単に再飲酒につながります。アルコ−ル依存症者はACであることが多く、ためこんだ感情は簡単に燃え上がりやすく、どうしてもアルコールという炎を一時でも忘れさせるものがほしくなる、それが飲酒欲求となるのです。

 怒りという感情は、消そうとするとかえって燃え広がりやすくなるものです。怒りの感情は素直に認め、それを仲間の中で語ることによって、今まで背負ってきた大きな荷物も軽くなるでしょう。内観や回復のステップを踏むことによって、怒りそのものがなくなることも決してまれではありません。

L(lonelinessの頭文字):孤独
 孤独は怒りと同様に、飲酒欲求を高めやすいものです。人は孤独であると寂しく、一般に人を求めやすくなりますし、その行動は自然とも言えます。しかし、アルコ−ル依存症になる人達の多くには、人との交流のしずらさを持っている人が多く、人を求めるという行為を簡単に行えないのです。ですから、人が友達とはならず、酒が友となる理由がここにあります。

 ではこの解決はどうしたらよいのでしょうか。孤独に耐えるという難行苦行を行うのではなく、同じ悩みを持った仲間のところに出かけることです。つまり、セルフヘルプ・グループに出席することによって癒されるでしょう。出席することによって、愛されている自分に気づき自信を取り戻したとき、一人でいることも楽しむことができるようになります。

ぃ(tirednessの頭文字):疲労
 疲労は精神であろうと肉体から生じていようと、飲酒欲求を発生しやすいものです。アルコ−ル依存症者は、長い人生の中でアルコ−ルが疲れを癒す薬だと学んできている場合が多いのです。頭ではその方法は良くないとわかっていても、体が学習していて疲れるとアルコ−ルがほしくなるメカニズムが形成されています。それは大変強力で、意志で対抗しても難渋する場合が多いのです。少し疲れてきたと感じた場合、再飲酒の危険が迫ったと思い、何をさておいても危険から遠ざかる行動が必要です。




























日 常 性 を 変 え る


 アルコ−ル依存症になるのには、長い時がかかった為に、心も体も日常生活上にも多くの癖や習慣が身についています。例えば、嫌なことがあれば一杯、疲れたら一杯、お風呂上がりの一杯、人との付き合いの一杯など多くの一杯を身につけています。その習慣を変えなければアルコ−ルをやめ続けることにはなりません。つまり、今まで日常性となっていたものの多くから、離れる作業が待ちかまえているのです。

 具体的にどんなことから始めたらよいでしょうか。よく断酒の3本柱といわれる、通院、自助グループへの参加、抗酒剤の服用などを行うことが、今までの日常性を変える良い例です。朝起床したら、「おはよう」と家族に挨拶をするなど、飲んでいたときには考えられない日常性の変化とも言えます。このような日常性の変化は、アルコ−ル依存症者はもちろんのこと、家族も戸惑い窮屈を感じたり緊張したりしますが、時の流れとともに新しい日常性ができあがっていきます。それまでは、日常性を変える作業を努力してやる必要性があるのです。




























セ ル フ ヘ ル プ ・ グ ル ー プ へ の 参 加


 自助グループ(例えば断酒会AA)への参加は、回復には必要です。孤独や日常性の変化に必要であるだけではありません。回復がどんなものであるかを参加することによって学ぶことができます。現実は、酒がやめ続けているからとか、仕事が忙しいからなどといろんな理由をつけて自助グループかせ離れていく人が多いのも事実です。さらに、離れた方の多くは、今も飲酒しながら見えない出口を求めて彷徨い続けているのも事実です。あなたが自ら求めて自助グループの門の扉を開けたとき、考えてもいなかった別な世界が見えてくるとともに新生が待っています。




























医 療 機 関 の 利 用


 アルコ−ル依存症からの回復に際して、医療機関との関わりが初期には大事です。まず身体を回復し、自分のことを考えるだけの頭の働きを取り戻す必要が是非あります。それが可能になって、アルコ−ルへの精神依存への挑戦や自分調べなどが始まります。医療機関を利用し、早期に自分が回復するためのプログラムの大筋を学ぶ必要があります。

 私の勤めている富山市民病院では、入院・外来とは無関係に、断酒しながら1年間の外来通院が設けられています。3ヶ月や半年間の外来通院では、過去の実績が1年間の通院の方が良いことを指し示しています。その際に注意しなければならないことは、アルコ−ル依存症者自身が、医療機関が依存の対象にならないように気をつけておく必要性があります。




























家 族 関 係 の 修 復


 アルコ−ル依存症からの回復に際して、この家族関係の修復課題はなかなか難しいもので、真の修復は断酒して6,7年後になって始まるように思われる。長年に渡って飲酒問題が続くことにより、良きにつけ悪きにつけお互いの家族の役割が変わり、例えば経済的担い手から反対に受ける立場に逆転したりして、家族関係が大きく様変わりをしているのが一般的です。さらに、家族にとっては、アルコ−ル依存症者から受けた肉体的・精神的な外傷が残っており、簡単に病気だったから「許せる」という気持ちになれないのが一般的です。また、アルコ−ル依存症者自身のAC問題に加えて、子供達に与えたAC問題もその後に大きな問題として露出してくる可能性もあります。その他に、アルコ−ル依存症者が飲まないで家族と過ごす事は本人にとって久しぶりの体験であったり初体験であったりしますが、その際、素面のアルコ−ル依存症者とのコミュニケーションは、家族にとっても初めての経験であったりして、家族間に緊張が走りストレスフルであるのも事実であります。

 では、どのように修復していけばよいのでしょうか。まず、アルコ−ル依存症者やその家族は、アルコ−ルの及ぼす家族への影響について知識を得ることが大事である。次に、ア症者や家族が自分の思いを素直に述べる場が必要である。一方、歪んだコミュニケーションを修正する場も必要とするであろう。また、自分を知る努力も必要であろう。そんな努力の中で、家族との修復が次第に始まるであろう。

  具体的にどうすれば良いのであろうか。自助グループやアルコ−ル医療専門家による家族グループ(家族ミーティング、家族教室など)に参加することである。しかし、それだけでの修復は難しく、医師や心理士、ケースワーカーなどの専門家の関わりが最後に必要である場合が多い。それほど複雑で難しい問題を抱えているとも言えます。