Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#10--ミルホーンのMと探偵作家のMWA



 
10月中旬にフォージア・バークという知らない人から電子メールが届いていて、題名を見ると、 Sue Grafton's Web Siteとあったので、さっそく開けて読んでみた。電子メールの内容は題名どおり、サンタ・テレサの女性私立探偵キンジー・ミルホーンとベストセラー作家スー・グラフトン(『無法のL』早川書房)についての情報を掲載したウェブ・サイトがついに開設されたという知らせである。もちろん、ウェブ・アドレスが書いてあったので、すぐにそこを訪れてみた。  
ホームページ(狭義では1ページ目をさす)には「10月14日の週」(創刊の週)とあるから、これは毎週更新されるんだなと想像がつく。「スーのツアーはカリフォーニア州サンタ・バーバラで11月3日に始まる」という見出しは、新刊 M IS FOR MALICE (Holt, 1996) の宣伝ツアーのことをさしている。じつのところ、最近の売れている作家は宣伝ツアーで全国をまわらなくてはならないのだ。  
グラフトンは11月にカリフォーニアを北上して、サン・フランシスコ、オレゴン州ポートランド、ワシントン州スポーケン、カナダのブリティッシュ・コロンビアまで行ってから、南下してカリフォーニア州ウェストウッドに戻り、アリゾナ州フェニックス、コロラド州デンヴァー、ユタ州ソルト・レイク・シティー、ネヴァダ州レノと続く。ほとんど休みなく動き続けるので、作家には体力が必要だとわかる。  
さて、問題の新作の紹介ページには、《パブリッシャーズ・ウィークリー》の書評のほか、新作の第1章が読めるのである。キンジーが富豪に勘当されたドラ息子を捜す話なのだが、キンジーがいとこのタシャからの依頼を承知したところで、第1章は終わるので、続きは新作を買うか、借りて読むしかない。  
ここでは毎週トリヴィア・クイズを提供している。といっても、賞品をくれるわけではない。10月14日のクイズは、キンジーを育てたおばさんのフル・ネームは? そして、キンジーの母親の(ミドル・ネームも含めた)旧名は? ねっ、なかなか難しいだろ?  
もっとも奇妙なのは、このサイトに版元のホルトの紹介ページがあることだ。普通なら、版元のサイトにそれぞれの作家のページが含まれているのだが、ここでは、看板作家のサイトに版元のページが含まれているのだ。
 
グラフトンも会長を務めたことのあるアメリカ探偵作家クラブ(MWA)がやっとウェブ・サイトを開設した。カリフォーニア北部支部のサイトはあったが、本部のサイト The Mystery Writers of America は初めてである。《ブックワイア》というのは、書籍関係の情報を載せたサイトであり、MWAがそこと提携したのである。もう一つのアドレスを打ち込んでも、自動的に《ブックワイア》のアドレスに変わる。  
ミステリ関係の行事、エドガー賞、歴代会長、MWA、支部、入会方法についての情報を掲示している。ほとんどおれの知っていることだが、たぶんMWAのことを知らない人のために作成した広報サイトだろう。とくに、エドガー賞に関しては、受賞作のほかに候補作まで挙げてあるので、それを混同している人には便利である。候補に挙がっただけなのに受賞したと書いた作者紹介をときどき見かけるから、注意すべし。  
これは《ジ・アームチェア・ディテクティヴ》(TAD)編集長であり、MWA会報《サード・ディグリー》の編集長でもあるケイト・スタインが大きく関わっていて、スタインの編纂したアンソニー受賞作 THE ARMCHAIR DETECTIVE BOOK OF LISTS (Penzler, 1995) のエドガー賞リストを参照にしているので、同じように少なくとも2つの「ヌケ」がある。つまり、THE BIBLIOGRAPHY OF CRIME FICTION, 1749-1975 (Publisher's Inc, 1979) を編纂したアレン・H・ヒュービンと、少女探偵ナンシー・ドルーを創造したキャロライン.キーンが1980年に特別エドガーを受賞したことを書き落としているのである。  
おいおい、ヒュービンはTADの初代発行者兼編集者だぜ。このことがあまりに知られていないために、この貴重な参考文献の改訂版 CRIME FICTION 2 (Garland, 1994) (厳密には第3版)がエドガー評伝賞にノミネートされなかったことで、ファンのあいだで議論が沸き起こったのだぞ。  
スタインはMWA会員に経歴を提出するように促しているから、いずれは会員の紹介ページも掲示されることだろう。
 
前に予想したとおり、《シスターズ・イン・クライム》(SinC)のウェブ・サイトがやっと開設された。 Sisters in Crime のアドレスを見てもらうとわかるように、これはインターネット書店《ブック・スタックス》のサイトの一部なのだ。  
96年はSinCが創立されて10年目に当たる。つまり86年に創立されたことになり、今では3800人の会員がアメリカだけではなく、イギリスやオーストラリア、ドイツなど14か国にいるという。会員には作家のほかに、編集者、文芸代理人、図書館員、書評家、書店主、読者がいる。趣旨はミステリにおける女性差別に対して戦うことと、女性作家に対する不当な扱いを世間に知らせることと、女性作家のミステリへの貢献を伝えることである。  
ところが、会員の中には、マイクル・コリンズ、ウィリアム・ノーラン、ダグ・アリンなどの男性作家もいるのだ。アメリカじゅうに散らばる支部では、それぞれ独自の活動をしている。とにかく、ここでは会員作家の作品リストや、支部リストが掲示されている。テキサス州ダラスには2つも支部があるし、インターネット支部までもある。ちなみに、スー・グラフトンとマーシャ・マラーは今のところSinCの会員ではない。  
現代女性私立探偵小説の先駆者のなかでは、サラ・パレツキーもマクシン・オキャラハンもそれぞれのウェブ・サイトを持っているから、あとはマーシャ・マラーのサイト開設を待つだけだ。たぶん版元のタイム・ワーナーが広告サイトを作成してくれるんじゃないかな。 //


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