Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#17--世界最大か地上最大のミステリ販売作戦



 
5月1日に行なわれたエドガー賞授賞式に出席するために、ニューヨークへ行った。エドガー賞授賞式では、《パブリッシャーズ・ウィークリー》誌のウェブ・サイト Bookwire が授賞式の様子をインターネット上で中継していて、数人の作家がインターネット上でインタヴューに答えていた。このときの概要は Bookwire で読める。  
おれは最近買い込んだオリンパスのデジタル・カメラ410Lで作家たちの写真を撮影した。帰国してから、2日かけて57枚の写真を The Gumshoe Site にアップロードした。そのことを親しい作家たちに知らせたり、ミステリ井戸端会議の DorothyL に掲示した。5月8日に先日のヒット数(訪問者数)をチェックすると、なんと116のヒットがあった。これは開設以来の最高数なのだ。それに、アメリカ探偵作家クラブの機関誌《ザ・サード・ディグリー》の新編集長マイクル・ジャンから、写真を使用させてほしいという連絡があり、無償で許可することになった。
 
エドガー賞授賞式ではウィリアム・ヘファナン(『誘惑の巣』ハヤカワ文庫)と同席したので、ヘファナンのホームページが見つからないと伝えたところ、奥さんであり、ウェブミストレスであるステイシー・ブレイクがウェブ・アドレスを教えてくれた。William Heffernan のホームページ には、ヘファナンの長編チェックリストが載っていて、インターネット書店の Amazon.Com で買えるようにリンクしてある。  
このホームページによると、ヘファナンは《ニューヨーク・デイリー・ニューズ》の新聞記者だった。それで、ヴァーモント州に住んでいても、ニューヨークの地理に精通しているんだな。関連サイトのページでは、なんと The Gumshoe Site も紹介しているではないか。「日本のジロー・キムラによる本当の国際的なミステリ・サイト。最近のいろいろな行事での作家やファンの素晴しい写真。わたしの写真も含めて!」という説明がついている。  
ヘファナンの新作はポール・デヴリンものではなく、ダウンサイジング(日本風に言うと「リストラ」「規模縮小」)についてのアメリカ初の小説。映画『ファースト・ワイフ・クラブ』のダウンサイジング版で、会社をクビになりそうな男がその会社に戦いを挑むという話である。別に開設した宣伝用のウェブ・サイト The Dinosaur Club によると、いちおうワーナー・ブラザーズが映画化権を獲得して、ジョン・ウェルズが脚本を執筆中だという。ここには、この作品の第一章が抜粋されていて、ほかに「規模縮小」という名目で解雇された人の話や、上司への復讐談も読める。
 
Linda Barnes はおおっぴらに公表されていない準備中のウェブ・サイトである。リンダ・バーンズは『赤毛のカーロッタ奮闘する』(角川文庫)や『シルヴァー・リングを残した女』(ハヤカワ文庫)などのボストンの女性探偵カーロッタ・カーライルもので有名である。  
バーンズはカーロッタものを書く前に、俳優探偵マイクル・スプレイグものを書いていた。実際は女性探偵ものを書きたかったのだが、当時の文芸代理人や編集者が「女性探偵ものは売れない」と言い張った。83年にカーロッタものの短篇「ラッキー・ペニー」(『シスターズ・イン・クライム』ハヤカワ文庫)を書いたのだが、売ったはずの雑誌が次々に廃刊になり、85年にやっと《ニュー・ブラック・マスク》に売れ、いろいろな賞にノミネートされ、あとでいくつかのアンソロジーに再録されるようになった。それがきっかけで、バーンズはカーロッタものを書き始める決心がついたというわけだ。  
このサイトでは、訪問者アンケートをとっている。読書の頻度、好きなジャンル、好きなミステリのジャンル(コージー、タフガイ私立探偵、タフギャル私立探偵、いろいろ)、バーンズの本を読んだことはあるか、どれを読んだか、そのサイトを訪問する頻度について、訪問者に答えてほしいという。もちろん、無理に答える必要はない。バーンズの電子メール・アドレスも明記してあるので、ファンレターを直接書けばいいのだから。  
カーロッタ・カーライルもの長篇の紹介は不完全だし、表紙写真もないし、俳優探偵マイクル・スプレイグものの紹介もないが、バーンズが自分で管理しているし、準備中ということで、大目に見よう。ぜひチェックリストを完成してほしい。そのときは、カーロッタもの短篇2篇目のことも知らせるべきだね。
 
バーンズで思い出したが、5月中旬に大変なことがインターネット上で起こった。全世界の中小書店が恐れていたものがついに登場した。大型書店 Barnes & Noble がインターネット上で開店したのだ。今までは America Online の加入者しか利用できなかったのが、インターネット上で開店すると、世界じゅうから注文を受けることができる。在庫のハードカヴァーは30%引きで、ペイパーバックは20%引き(在庫にない場合にのみ定価)で売っているし、数年前に買い逃した本も検索できるのだ。おれが喜んでいるのは、B&Nが版元となって編纂したミステリのオリジナル・アンソロジーが入手可能になったことである。  
週替わりの再録短篇(ローレンス・ブロックの「泥棒の不運な夜」など)のほか、ジャンル別に(ミステリとか、ホラーとか)ベストセラーや推薦新刊が載っている。そして、エド・ゴーマン(『夜がまた来る』創元推理文庫)が《ミステリ・シーン》という月刊ページを担当していて、エド・マクベインが新作について語ったり、ディーン・クーンツが質問に答えたり、書評家でもあるディック・ロクティが新刊を推薦している。残念ながら、このコラムは1ページしかなくて、短すぎる。B&Nは自分たちを The World's Largest Bookseller Online (世界最大のオンライン書店)と呼んでいて、Earth's Biggest Bookstore(地上最大の書店)と銘打っている倉庫を持たないインターネット書店 Amazon.Com を訴えている。読者にしてみれば、望みの本が安く入手できれば、「キャッチフレーズ」なんかどうでもいいのにね。 //



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