Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#18--生茹で? 固茹で? それとも電脳茹で?



 
おれが参加しているミステリ関係のメーリング・リストは DorothyL(ミステリ全般)と Shortmystery-L(短篇ミステリ)と Rara-Avis-L(ハードボイルド)の三つである。Rara-Avis でポール・ウルッチという男が Cyberboiled というウェブ・サイトを開設したことを投稿したので、訪問してみた。
 
サイト名の意味が明確にわからないし(サイバースペースにおけるハードボイルドという意味なのかな?)、どうも内容を説明しにくい。俗に「ハードボイルド」と呼ばれるものをここに集めたいらしい。たとえば、The Spenser Home Page がここに移ってきた。マイク・ラックスが管理する Bullets and Beer ほど詳しくはないが、ラックスが中断していたスペンサーのメーリング・リスト Spenser-L をウルッチが再開したことは称賛すべきだろう。それに、デニス・ハメリンが作成した The Spenser Audio Collection のページでは、TV番組『私立探偵スペンサー』からのテーマ音楽(容量が大きいので要注意)や、スペンサーの短い台詞、オーディオ版の(フランク・ベルスン役のロン・マクラーティーによる)朗読の一部をダウンロードして聴ける。
 
Cyberboiled では、「ハードボイルド」短篇を載せていて、オリジナル短篇を募集している。露骨なセックスや暴力の描写は駄目、差別的表現も駄目、ワイセツ語も駄目(伏せ字はOK)、もちろん盗作も駄目。採用されても原稿料はなし。ゲイリー・ロヴィージの短篇が二篇載っているが、ロヴィージ自身は作家でもあり、Gryphon Publications の出版人でもある。このGryphon のページもこのサイトに含まれているのだ。Gryphon はペイパーバック・コレクターの専門誌 Paperback Parade やセミプロ小説誌 Hardboiled も発行している。ハワード・ブラウン(『血の栄光』のジョン・エヴァンズとしてのほうが有名かな?)の Murder Wears a Halo (Gryphon, 1997) は、グリフォン・クライム・ノヴェル路線の第一弾だが、私立探偵ポール・パインものではない。《マンモス・ディテクティヴ》1944年2月号に発表された長篇で、単行本になったのはこれが初めてである。紙装市販版は20ドルで、紙装のサイン入り100部限定版は40ドル。残念ながら、ここから電子メールで直接注文できるようになっていないのが不親切である。

 
ジョン・サンドフォードのルーカス・ダヴンポートもの(『冬の獲物』早川書房)は日本ではそれほど有名でないが、アメリカではベストセラーである。しかも、ウェブ・サイトが二つもある。The John Sandford Homepage はサンドフォード(本名、ジョン・キャンプ)の息子ロズウェル・アンソニー・キャンプが運営している。サンドフォードの十一作のミステリ作品に関する情報を伝えるためのサイトだという。ロズウェルが書いたサンドフォードの略歴が興味深い。
「ロズウェル」というのは、十七世紀から家族で使われている名前で、サンドフォードの父親の名前はロズウェル・サンドフォード・キャンプという。サンドフォードは1944年にアイオワ州シーダー・ラピッズ(エド・ゴーマンの住んでいる街)で生まれた。アイオワ州立大学でアメリカ史学の学士号を取ったあと、スーザン・リー・ジョーンズと結婚。陸軍を除隊したのち、ジャーナリズム学の修士号を取得して、まず《デイリー・ミズーリアン》で働き始めた。《マイアミ・ヘラルド》紙ではカール・ハイアセンやエドナ・ブキャナンが記者仲間だった。
 
89年にジョン・キャンプ名義で処女小説『ハッカーの報酬』(新潮文庫)を発表するが、その頃にスーザンと離婚。子供は息子のロズウェルと娘のエミリー。しかし、スーザンとは96年に再婚。家族だから、こういう私生活について書けるのだろう。とにかく、サンドフォードは現在、考古学に興味を持っていて、イスラエルで考古学の発掘作業に写真家として従事している。
 
サンドフォードの97年刊の最新作は The Night Crew という作品で、ダヴンポートものではなく、アンナ・ベイトリーというLAの女性ヴィデオ・ジャーナリストを主人公にしている。この作家ページには、サンドフォードの略歴のほかに三つのインタヴュー記事も転載されているため、長くて容量が大きすぎる。もう一つの The John Sandford Page のほうはダヴンポートものの作品解説を載せているだけなので、ロズウェルの公認サイトと比較すると、やはり見劣りがするね。

 
Cyberboiled のサイトには、ロード・アイランド州のミステリ古書店《マーダー・バイ・ザ・ブック》のカタログも含まれていて、ロバート・クレイスの限定版を販売していた。The Elvis Cole Web Site はロバート・クレイス(『モンキーズ・レインコート』新潮文庫、『ぬきさしならない依頼』扶桑社文庫)の公認ホームページである。
 
まず、「いや、これはエルヴィスじゃないよ。ジョー・パイクでもないよ」と書いてあり、クレイスの広報用写真が載せてある。97年の新刊 Indigo Slam のサイン・ツアーの予定ページを見ると、5月と6月はアメリカじゅうをまわったようだ。ホームページの目次を見ると、シリーズ年代記、書評、あなたのコメント、サンプル、エルヴィスについて、ジョーについて、ロバートについて、本の購入、クイズ、サインの場所と日時、ほかのミステリ・サイト、LA地図のページがあるそうだ。本の購入はインターネット書店の Amazon.Com にリンクしているし、LA地図のページもあるが(エルヴィスの家の周囲の地図はまだ)、サインのページは前出のツアー・ページと同じだ。しかも、そのほかのページは工事中なのだ。
 
それに、ホームページの左側にエルヴィス・コールものの作品の表紙が並んでいて、「それぞれの本にはそれぞれのページがあるので、表紙をクリックしてくれ」と書いてあるので、クリックしてみると、みんな工事中なのだ。おいおい、忙しいことはわかるが、せっかく crais という名前がはいったドメイン・ネームまで手に入れたんだから、早く充実させてくれよな。
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