Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#20--書評を読むより書くほうが面白いかも



 
おれみたいにアメリカやイギリスから直接新刊を買う場合、どんな内容なのか知りたいよね。おれがいちばん参考にしている書評はジョン・L・ブリーンの「陪審席」(EQMM本国版に連載。『EQ』日本版ではその抜粋を訳載)である。それに、いろいろなファンジンに書評を寄稿しているドン・サンドストロムやゲイリー・ウォレン・ニーブアもずいぶん参考になる。  
最近増えてきているのが、書評ウェブ・サイトである。Troutworks Mystery Guide には300人の作家の400作の作品を書評している。まず書評した400作を挙げたリスト・ページもあるが、これは長すぎて容量が大きいので、「コージーと古典的フーダニット」「私立探偵とハードボイルド小説」「スリラーとエスピオナージュ」「歴史ミステリ」の四つに分けたリスト・ページ(著者のアルファベット順)があり、そこで作品をクリックする。  
例えば、トム・トポールの『遺言補足書』(早川書房)を選ぶと、主人公名(アダム・ブルーノ)、形式(長篇)、サブジャンル(私立探偵)、舞台(アメリカ、ニューヨーク)、時代(90年代、1995年)、採点(4点、優秀)、書評者(JP)、入手状態(可能。ハイペリオン、1995)という説明のあと、書評がある。プロットの複雑さは長さを正当化していないし、雰囲気は陰鬱だ。けなしているわりに、採点がいい。ここの書評の特徴は、類似の作品を挙げているところで、この『遺言補足書』にはウィリアム・ヒョーツバーグの『堕ちた天使』やジェレマイア・ヒーリイの『少年の荒野』などの5作が似ているらしい。  
このサイトのもう一つの特徴は、季節の推薦作品を毎月挙げているところだ。8月なら暑さを愛するか、避けるしかないということで、愛する人にはジョン・ボールの『夜の熱気の中で』などをすすめ、避けたい人にはデイナ・スタベノウの『白い殺意』などをすすめている。  
翻訳ミステリーには、いろいろな作家の誉め言葉(業界用語で「ブラーブ」)や賛辞が帯(もしくは「腰巻き」)に書いてあるよね。その中に、《パブリッシャーズ・ウィークリー》(PW)とか《カーカス・レヴュー》とかの賛辞があるけど、具体的に書評者の名前がわからない。PWの場合は、数人のフリーランス書評者に匿名で書評を執筆してもらっていて、担当編集者(ダルシー・ブレイナード)が文章を統一する。改行がないので、ものすごく読みにくいな。《カーカス》のほうも匿名である。匿名書評の欠点は、書評の責任を取る人間が曖昧なことである。粗筋を書くなら匿名でもいいのだが、書評には主観がはいっているはずので、意見を述べた評者の名前を明記すべきである。それで、読者は自分の好みに合った評者を選んで、自分の判断の参考にできるのである。
 
さて、地上最大のインターネット書店 Amazon.Com では作者で検索ができ、目的の本のページに行くと、その書籍についてのウェブ訪問者の書評がついている。10点満点で、同じ本なのに、ほめる人もいるし、けなす人もいる。ドナルド・E・ウェストレイクの新刊 The Ax (Mysterious, 1997) は「リストラ」で長年働いていた製紙会社をクビになった男が再就職するために、ほかの候補者を次々に殺していくという暗い小説なのだが、10点をつける人もいるし、1点をつける人もいる。自分の電子メール・アドレスも記入すれば、誰でも書評や採点ができるのである。つまり、自分の名前を明記しない書評は信用してもらえない。そこで、問題が生じる。  
ページの最後に、《カーカス・レヴュー》の書評も載っているのだ。これで、作家たちが反対した。《カーカス》の書評は匿名なので、書評者は不明である。しかも、けなしている場合が多いので、本を売りたい書店がその本をけなす書評を載せるというのは、おかしいというわけである。でも、《カーカス》の書評を信用しない人は多いから、けなしてあれば、面白いだろうと思って、買う人もいるかもしれないな。
 
Ed's Internet Book Review (EIBR) はエド・ベルという人が管理している書評サイトで、ミステリのほか、SF、ホラー、一般小説、歴史小説、伝記、政治などあらゆる分野の書籍を紹介している。ホームページの「ミステリ」をクリックすると、書評している作品がたくさん並べてあるから(容量が大きすぎる)、選んだ本のタイトルをクリックすると、書評が現われるわけだ。書評者は有名ではないが、名前は明記されている。ベルが10月の編集前記で述べているように、「つまらない本を称賛すると、意見を信じてもらえなくなる」ので、プロの書評家は留意しなくてはいけないね。ちなみに、ここで書評された書籍は自動的に Amazon. Com につながっている。 
The Painted Rock Review Index には、ミステリのほか、ロマンス、ホラー、YA、SFなど、いろいろなジャンルの小説の書評ページも載っている。ミステリ担当の書評者はハリエット・クラウズナーといって、一日に2、3冊の本を読んで、書評するという。ミステリのメーリング・リストである Dorothy-L にしょっちゅう書評を投稿している。2か月先の近刊も紹介しているので、Dorothy-L のメンバーでない人は目を通しておいてもいいだろう。The Rock Online Magazine は無料の月刊ウェブジンで、ミステリ担当編集者クリスティーン・ライトがシーモア・シュービン(『リメンバー・ミー・オールウェイズ』講談社文庫)とインタヴューしている。  
Under the Covers Book Reviews にも、ミステリのほか、ロマンスなどの小説やノンフィクションの書評がのっている。これにも、サイバースペースで活躍しているハリエット・クラウズナーが多くのミステリを書評している。ここで紹介された本を買いたい場合も、Amazon.Com で買えるようにリンクされている。  
サイバースペースでは、素人でもプロと同じようにミステリの感想を発表できるので(しかも、出版社や作家との複雑な「しがらみ」がない)、プロの書評家は素人に負けないように、ますます個性を発揮しなくてはならない。 //



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