Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#26--モデルでも女優でもないケイト・ロス



   
ミステリ関係のメーリング・リストDorothyL 3月17日版に目を通していると、ケイト・ロスが死んだという悲報が載っていた。じつは12日に癌で亡くなったという死亡記事が16日付の《ボストン・グローブ紙》に載った。DorothyL にはときどき投稿していて、名前は知っていた。キャサリン・ロスという女優とは別人(スペリングが少し違う)だとか、モデルのケイト・モスとは親戚ではないとか、冗談を言える作家だった。98年にはいってから、健康がすぐれないということを投稿していた。将来を期待されていた作家なのに、残念である。それに、初めて41歳だということを知った。  
日本では今のところ93年刊の処女作『ベルガート館の殺人』(講談社文庫)しか紹介されていないが、ジュリアン・ケストレルもの2作目 A Broken Vessel で最優秀歴史ミステリとしてガーゴイル賞を受賞している。こういうときは、亡くなった作家のウェブ・サイトを訪問して、そのウェブマスターがどれだけ早く詳しく悲報を伝えているかを見ることも、評価の基準になる。  
Katherine Ross のウェブマスターは、ジーン・ウィッカーといって、ほかにリタ・メイ・ブラウンのファン・サイト とか、DorothyL の購読申込や購読中止、購読一時停止、購読再開の手続きを簡単にしてくれる The Crozet Post Office とか、DorothyL のメンバーのためにいろいろなリストを提供してくれる Miss Lemon も管理している。  
とにかく、ウィッカーは13日にこのファン・サイトで悲報を伝えた。彼はロスのファンで、96年にはもうこのサイトを開設していて、ロスからの協力も得ていた。ロスの4作目 The Devil in Music が《マリス・ドメスティック》主催のアガサ賞にノミネートされているので、Malice Domestic のウェブ・サイトに追悼文を書き込むように勧めている。  
ロスはウェルズリー・カレッジでギリシャ文学を専攻してから、イェール大学の法律学校を卒業し、ボストンの法律事務所で勤めていたが、刑事事件は扱わなかったらしい。  
ケストレルものの舞台は、1820年代のロンドンで、摂政時代(リージェンシー)と呼ばれている。その時代には公式の警察組織がなかったので、素人探偵が活躍するには絶好の時代だと思ったらしい。その時代には、国王ジョージ3世が発狂し、長男のジョージが摂政として国をいちおう治めた(国民を省みないひどい治世者だったらしい)。ロンドンのリージェント公園やリージェント通りはこのジョージ4世に由来する。へええ、勉強になるなあ。
 
ローレン・D・エスルマンも日本ではあまり評価されていない作家である。彼の公式サイトが3月に開設されたというので、Loren D. Estleman を訪れてみた。  
ウェブマスター(ミストレス?)のデボラ・モーガンはエスルマンの妻だろうか。このウェブ・サイトによると、エスルマンはミステリとウェスタンを書く二重人格者らしい。98年に刊行されるエイモス・ウォーカーもの(『シュガータウン』ハヤカワ・ミステリ)の12作目 The Witchfinder とウェスタンの Journey of the Dead (パット・ギャレットが登場)の第1章がそれぞれ読める。それに、98年暮れにデトロイトものの新作 Jitterbug がこれまでとは異なる出版社(ミステリアス・プレスではなく、フォージ)から出ることや、現在デトロイトものを執筆していることもわかった。  
さすが公式サイトだけあって、ペイジ・マードック保安官ものや殺し屋ピーター・マックリン(『殺し屋魂は消えず』二見文庫)ものなど、すべての長篇小説と短篇集を網羅している。苦情を言わせてもらうなら、エスルマンは短篇用に映画探偵という新しいタイプの探偵を創造しているのだから、その紹介もしてほしかったな。ロバート・B・パーカーよりもレイモンド・チャンドラーに似た文章を書くエスルマンだが(似すぎているのかもしれない)、長篇も短篇も書く器用な多作家であり、日本で人気が出てもいいだろう。
 
マーサ・C・ロレンスのエリザベス・チェイスもの1作目『蠍座の殺人』(ハヤカワ・ミステリ文庫)がとうとう日本でも紹介された。おれは96年にマーサとニューヨークで会ったことがある。《ミステリアス・ブックショップ》にはいってきた彼女を見て、おれはすぐにマーサだと気がついた。彼女は驚いていたが、おれは一週間ほど前にファンジンの《デッドリー・ブレジャーズ》でインタヴュー記事を読んでいたのだ。「あれを読んで、わたしのことをいかれてると思ったでしょ?」と尋ねるので、「まあ、半ばいかれてると思ったよ」と答えた。そのあと、マーサは DorothyL でおれの投稿を見て、おれの名前をどこかで聞いたはずだと思い、おれの名刺を見つけたという電子メールを送ってきた。  
Martha C. Lawrence は97年に開設されて、マーサ自身が管理しているようだ。このサイトでは、97年のサン・ディエゴの《ノース・カウンティー・タイムズ紙》1月26日号掲載のインタヴュー記事と、《デッドリー・プレジャーズ》96年春季号掲載のインタヴュー記事が読める。《タイムズ》によると、3作目ではエリザベスがカルト宗教集団に潜入するという(タイトル未定)。《デッドリー・プレジャーズ》のインタヴュアーの名前(ゲイリー・ウォーレン・ニーブア)を明記すべきだったな。それに、《メアリ・ヒギンズ・クラーク・ミステリ・マガジン》97年春季号にチェイスものの短篇 A Little Light on the Subject が掲載されたことも書いておくべきだ。それで、超能力者のマーサはおれの頭のまわりに後光を見たのだろうか? それとも角を見たのだろうか?
[お詫び=先月号で Netscape Navigator4.04 だけをダウンロードするようにお勧めしたが、これにはメーラーのMozilla が含まれていないので、ウェブ・サイトから直接メールを送ることができない。Messenger (メール+ニューズ)も利用したい方は Communicator のスタンダード版のほうをダウンロードしていただきたい。]//


来月号に続く

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