Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#27--トラブルはビジネス? それとも影法師?



   
私立探偵小説ファンにとっては大変なウェブ・サイトが4月に開設された。ハードボイルド小説のメーリング・リストのメンバーであるケヴィン・スミスが管理する The Thrilling Detective Web Site には、いやほど膨大な情報がアップロードされていて、すべてを読むためには、かなりの時間と電話代を要する。おれの場合は、ダウンロードしてプリントアウトするのに、相当量の紙を使った。
 
このサイトでは、小説だけではなく、映画やTV、コミックにも登場するすべての(!)私立探偵を紹介するつもりなのだ。もちろん、まだ半分ほどしか完成していないが、構想が壮大である。「トリヴィア」のページはかなり容量が大きいが、ずっと終わりのほうに「アジアの探偵」という欄があり、その下に「日本の探偵」というリンクがあったので、そこに飛んでみた。アール・ノーマンが創り出したバーンズ・バニオンという在日のアメリカ人探偵と、安部公房の『燃えつきた地図』に登場した名無しの探偵のほか、木村二郎の寺田幸之輔という名前が挙がっていたので、さっそく「寺田幸之輔」(加州探偵事務所の所員)のページを見てみた。
 
その探偵と作者についての情報のほとんどは『ガムシュー・サイト』管理者の自己紹介を基にしているのだが、どうして紹介文には書いていない作品タイトルまで知っているのだろう? もちろん、「ジョー・ヴェニス」のほうの説明も『ガムシュー・サイト』管理者の自己紹介を基にしている。
 
そのほかの私立探偵の説明で、初耳の情報を紹介しよう。
 
ジョナサン・ヴェイリンのハリイ・ストウナーもの『獲物は狩人を狙う』(ポケット・ミステリ)が1989年にTV映画化された。でも、ストウナー役のギル・ジェラールって誰?
 
ローレンス・ブロックのチップ・ハリスンものの短篇が1997年のミステリアス・ブックショップのクリスマス・ブックレットに掲載された。
 
ロス・マクドナルドの『ファーガスン事件』(ハヤカワ・ミステリ文庫)が Criminal Behavior というタイトルで1992年にTV映画化された。主人公の弁護士ビル・ガナースンを演じるのは、なんと、ファラ・フォーセット!(もちろん、男装するわけではない)
 
作家のチェックリストに長篇が明記してあるのは当然だが、短篇も含まれているのが役に立つ。チェックリストからもれている短篇も多いが、そのうちに訂正されるだろう。毎週表紙(つまり、ホームページ)が変わるから、一度で全部を読まないで、何度も訪問して、少しずつ読むほうがいいかもしれない。知りたい以上の情報が満載されているのだから。

 
The Ross Macdonald Files のウェブ・サーヴァーは、ドメイン・ネームを見てもわかるように、スウェーデン (se) にある。管理者であるスウェーデン人のカール=エリック・リンドクヴィストは、1977年からロス・マクドナルドを読み始めてファンになったというから、年齢はかなり若いのだろう。マクドナルドの略歴、参考文献、チェックリストを詳しく紹介している。
 
マクドナルドの長篇の紹介ページは、初版ではなくペイパーバック後版の表紙と、裏表紙のあらすじをアップロードしただけだが、表紙のディザインが年代によって異なっていくのが興味深い。トリヴィアの欄はマシュー・J・ブルッコリが84年に発表した評伝書 Ross Mac-donald を参照にして書いたものだ。おれはその評伝書をいちおう読んで、本誌でも紹介したことがあるが、ほとんど忘れていたね。ということで、トリヴィアのほうを紹介しよう。
 
1944年に発表された処女長篇『暗いトンネル』(創元推理文庫。以下、創元)は、ケネス・ミラーがアン・アーバーにあるミシガン大学で博士号課程を取っているときに1か月で書いたもの。
 
49年刊の『動く標的』(創元)はアーチャーもの長篇第1作で、ジョン・マクドナルド名義で発表した。当時から有名作家だった妻のマーガレット・ミラーの名声にあやかりたくないとい気持ちはわかるが、その頃から有名だったジョン・D・マクドナルドのことを知らなかったクノッフ社の編集者の責任は重い。
 
52年刊の『象牙色の嘲笑』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を《ロンドン・タイムズ》の匿名書評でほめたのは、ジュリアン・シモンズだった。
 
55年刊の『わが名はアーチャー』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)はアーチャーものの短篇集で、7篇収録されている。このあと、77年刊の短篇集 Lew Archer, Private Investigator (ミステリアス・プレスの最初の成功作)には「ミッドナイト・ブルー」と「眠る犬」も加えられ、現在のペイパーバック版は全9篇が収録されている。残念ながら、日本のファンはポケミス版(7篇収録。絶版)と『ロス・マクドナルド傑作集』(5篇収録。創元)の両方を持たなければならない。
 
マクドナルド・ファンには興味深い情報がいろいろ書いてあり、リンドクヴィストの情熱が伝わってくる。「ハードボイルド」という言葉は一箇所しか見当たらず、リンドクヴィストがマクドナルドを「偉大な二十世紀のアメリカ作家」と見なしていることに好感が持てる。

 
さて、ミステリ・ファンなら「必訪」のウェブ・サイトのご紹介しよう。
 
98年の夏に刊行されるミステリを知りたい方は PW Spring Books 1998 に飛んで、Mystery をクリックしよう。出版業界誌《パブリッシャーズ・ウィークリー》の新刊リストである。
 
アメリカ探偵作家クラブのウェブ・サイトが開設されたことは、ずっと前にお知らせしたはずだが、最近メイクオーヴァー(変身?)した。そして、公式会報 The Third Degree がウェブでも読めるようになった。今のところ情報は古いかもしれないが、近いうちに新しい情報もアップロードされる予定である。現在の編集長はマイクル・ジャンで、77年刊の The Quark Maneuver でエドガー賞(ペイパーバック部門)を受賞した。日本では「マイケル・ヤーン」名義でノヴェライズした作品があるはずだが、おれは物覚えが悪いので、作品名は「失念中」。
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