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サイバーガムシュー


#28 -- ロンドン・タイムズが厳選した作家たち



 
《ロンドン・タイムズ》はリタラリー・サプルメントという「文芸付録」をときどき発行する(不勉強なので、頻度は不明)。4月18日(土曜日)発行の「文芸付録」は Murder, they write というタイトルの「犯罪小説特集」だった。  
もちろん、日本から現物を入手できないことはないが、さすが《ロンドン・タイムズ》は寛容だね。自分のところのウェブ・サイトに内容のほとんどすべてをアップロードしたのだ。Murder, they write では、H・R・F・キーティングが「トラディショナル」(最近では「コージー」とも呼ばれる)を、ヴァル・マクダーミドが「ハードボイルド」(最近では「ノワール」と混同されている)を、イアン・ランキンが「警察捜査」を、ナターシャ・クーパーが「心理もの」を、エドワード・マーストン(キース・マイルズ)が「歴史もの」を説明している。  
イギリスのミステリというと、伝統的なフーダニットや警察捜査ものが今まで有名だったが、最近は「ニュー・ウェーヴ」(「フレッシュ・ブラッド」とも呼ばれる)の作家がそういう伝統を打ち破ろうとしている。エルモア・レナードやジェイムズ・エルロイ、チャールズ・ウィルフォード、チェスター・ハイムズ、ジム・トンプスンなどのアメリカ作家に影響を受けた新しい作家で、強奪ものが多い。そして、書評家でもあるヴァル・マクダーミドが有望な新人作家10人を挙げている(ピーターの息子フィル・ラヴゼイもその一人)。  
とくに、現代イギリス作家の代表者として、P・D・ジェイムズとルース・レンデルの紹介記事がある。二人ともバロネスの称号を持っていて、レンデルは貴族院で労働党の席につき、ジェイムズは保守党の席につくが、政治以外のことでは二人は仲がいいらしい。レンデルはロンドンまで往復するのに飽き飽きしたので、長年住んだサフォークの家を97年に売りに出したという。  
ロンドンのミステリ専門書店《クライム・イン・ストア》の協力で厳選された「100人の名作家」はイギリス人と、イギリスでも紹介されているアメリカ人だが、《黄金期》の四大女王の二人(マージェリー・アリンガムとナイオ・マーシュ)が選ばれていない。おれの知らないイギリスの新しい作家がけっこうたくさんいるなあ。  
さて、現物の「ほとんどすべて」がアップロードされていると初めに書いたが、何がアップロードされていないのだろうか? おれはウェブ・サイトから内容をすべてダウンロードしたのだが、じつは現物も入手しているのである。サイトはカラフルなのだが、じつは現物よりもイメージが少ない。現物には作家の写真が多く、それに、ペンギン・ブックスの広告までついている。この特集記事がいつまでオンラインにとどまっているのか確かではないので、できるだけ早く訪問して、情報を保存しておいてほしい。
 
この「100人の名作家」リストに選ばれなかった有名な作家がいる。ミッキー・スピレインである。最近はスピレインの作品が絶版になっているから、仕方ないか。というわけで、Mickey Spillane's Unofficial Mike Hammer WebSite を見つけたので、訪問してみた。まず、これはスピレインではなく、私立探偵マイク・ハマーのサイトであり、「非公式」なサイトである。そして、ステイシー・キーチ主演のTV番組は無視している。それに、フレーム・ヴァージョンもあるが、(おれのように)フレームの嫌いな人間はホームページの「灰皿」をクリックすれば、ノンフレームのサイトに行ける。  
このサイトでは、ウェブマスターの意見が強く反映されていて、「わたし」という単語も使われているのに、rocoというウェブマスターが誰なのか明記していない。honor ではなく honour という綴りを使っているから、イギリス人かカナダ人だろうか? けれども、98年3月に開かれたスピレインの80歳の誕生日パーティーには、軽い壊血病のために出席できなかったというから、スピレインの友人なのだろうか? スピレインの作品集Tomorrow I Die に収録された The Screen Test of Mike Hammer がそのまま(著作権所有者明記なしで)再録されているのは、まずいんじゃないかい。  
このサイトから《ニューヨーク・ポスト紙》の娯楽欄に飛ぶと、ステイシー・キーチ主演の再復活シリーズ Mike Hammer: Private Eye を紹介していたので、ニューヨークに行ったときに、TVで見た。なんと日曜日の午前(!)1時からの放映なのだ。現在放映の新々シリーズでは、若い視聴者を引き付けるために、ハマーに若い助手がいるのだが、やはり今だに時代錯誤者である。
 
サラ・パレツキーは「100の名作家」リストに選ばれていた。Sara Paretsky は、ドメイン・ネームから察しがつくように、パレツキーの公式サイトである。  
マリ・ライアスンがパレツキーとV・I・ウォーショースキーにインタヴューしているページもあるのだが、古くからのファンにとっては目新らしい話題はあまりない。ただ、孫娘と犬の写真がほほましい。どちらというと、このサイトはパレツキーの98年刊の新作で、ノンシリーズの Ghost County の宣伝用に開設されたような印象を受ける。パレツキーがその見本版を送った人たちにあてた手紙がアップロードされている。  
この新作の書籍番号や刊行年度は明記されているのに、出版元(デラコート)が明記されていない。それに、ウェブマスター(つまり責任者)の名前が明記されていないのも不思議だ。パレツキーの短篇集 Windy City Blues の収録作品の初出年度が明記されていないことに不満を感じるのは、おれだけなのだろうか。じつはパレツキーにはもう一つの短篇集がある。A Taste of Life はノンシリーズ短篇を3篇収録したもので、95年にペンギン・ブックス(パレツキーのイギリスの版元)60周年記念に刊行された。それに、もう一冊の編纂アンソロジーがあることをほとんどのファンが忘れているのではないかい。89年刊行のMWAアンソロー『動物たちは共犯者』(ハヤカワ・ミステリ文庫)である。  
日本語版がまもなく開設されるそうなので、本国版よりも素晴しいものを期待する。と、励ましのプレッシャーをかけてみよう。 //


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