Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#41--本年度最大の問題作は大傑作か? 大駄作か?



   
99年の出版界の大ニュースは、なんと言っても、トマス・ハリスが『羊たちの沈黙』(新潮文庫)より11年ぶりに発表した続篇 Hannibal の話題だろう。  
ハリスが3月下旬に版元デラコートの担当編集者(キャロル・バロン)に作品の脱稿を知らせ、6月8日に発売されることになった。これだけ早く出版できるのは、ハリスが編集を拒絶したからだと言われている。アメリカでは協定で発売日を守らないと、次回から本を取り次いでもらえない。それで、イギリスやアメリカのいくつかのミステリ専門書店は8日の午前0時に店をあけて販売したのだ。それなのに、イギリスの《ウールワース》と《ウォーターストーン》の支店では、手違いでそれ以前に販売してしまった。大型書店では5割引きで販売しているので、発売と同時にベストセラー第1位になってしまった。  
8日発売なのだが、それまで業界誌《パブリッシャーズ・ウィークリー》でも紹介していない。だが、Salon.com が4日に概要を暴いたのだ。「読むつもりの人はこの概要を読まないように」と警告したうえで、「これはパロディーではない」と念を押した。この概要のページはもうデリート(削除)されている。それでも、Hannibal でサーチをかければ、映画化権の裏話はまだ読める。  
6月13日付の The New York Times Book Review では、スティーヴン・キングが絶賛しているが(つまり、キングはゲラを読んだわけだ)、10日付の書評ではクリストファー・リーマン=ホートがけなしている。Book Review から Hannibal でサーチをかければ、キングとリーマン=ホートの書評を読める。もちろん、Amazon.com から Hannibal でサーチをかければ、金を払って読んだ一般読者の評価が見られるのだが、「素晴しい」と「読者への裏切り」という両極端の意見で占められていて、平均点は5点満点で3点である。とにかく、いくらけなされても、ベストセラー・リストに長く居すわり続けるはずだ。  
というわけで、The Official Thomas Harris Website (http://www. thomasharris.com) を訪問してみた。公式と謳っているが、これは版元のデラコートの宣伝サイトなのである。作家個人とか、熱烈なファンが管理していないので、それほど面白くはない。ハリス自身が朗読する新作の抜粋箇所が聞けることと、パームトップ・コンピューターで抜粋版がダウンロードできるくらいが、特徴かもしれない。
 
個人的な理由で、ドナルド・E・ウェストレイク関係の情報をインターネット上で捜しているのだが、The Somewhat Official Donald E. Westlake Page というのを見つけた。管理者のテリー・バラードはニューヨーク在の司書であり、ウェストレイクのファンでもある。98年にワシントンで開かれたアメリカ図書館協会大会に出席したときに、ウェストレイクに会い、ホームページを作成したいと申し出た。ウェストレイク自身はまだ手動式タイプライターをたたいていて、インターネットのことは皆目わからない。だが、彼の出版元ミステリアス・プレスがこのことを聞きつけ、いい考えだと言ったので、somewhat official(半公式)ということになった。しかし、ウェストレイクに関する情報と言っても、ウェストレイク名義の長篇チェックリストと、ほかの参考リンクぐらいしかない。  
参考リンクにある Westlake Interview from the Austin Chronicle は一読の価値がある。テキサス州の《オースティン・クロニクル紙》のジェシー・サブレットによるインタヴュー記事なのだが、サブレット自身もミステリを発表したことがあるので、ウェストレイクの作品をよく研究している。  
そこの参考リンクで見つけたのが、もう一つのファン・サイト Home of Westlake だ。ドメイン・ネームを見たら、ウェブ・サーヴァーがイギリスにあることがわかる。フレームを使っているくせに、ほかのページにうまくリンクしていない。トップ・ページの Parker という字をクリックして、やっと悪党パーカーもののページに行けるのだ。そして、そのページの Jimmy the Kid (パーカーも登場)をクリックして、やっと『ジミー・ザ・キッド』(角川文庫)のページに行けて、そのページの Dortmunder をクリックして、やっとドートマンダーもののページに行けるのだ。まるで迷路だね。  
つまり、このサイトでは、スターク名義のパーカーものとアラン・グロフィールドもの、ウェストレイク名義のドートマンダーもの長篇しか紹介していないのだ。ただ、馴染みの薄いイギリス版の表紙が見られるところが興味深い。
 
アメリカのケーブルTVでは、独自のドラマ(ケーブル映画と呼ぶ)を制作するので、ときどき調べるのだが、5月31日にA&Eで Dash and Lilly が放映されるという情報を耳にした。このダッシュとはダシール・ハメットのことで、リリーというのはリリアン・ヘルマンのことだ。この作品はこの二人の30年間に及ぶロマンスを描いたドキュドラマなのだ。  
ハメット役には劇作家でもあるサム・シェパード、ヘルマン役にはオーストラリア人女優ジュディー・デイヴィス。監督がなんと長篇映画は初めてのキャシー・ベイツ。脚本家のジェリー・ラドウィッグはハメットとヘルマン関係の伝記や記事を多く読み、50年代の赤狩り時代のエピソードを中心に据えたという。下調べをしているうちに、ヘルマンのことが嫌いになったが、「自分の考えを流行に合わせたくありません」と反米調査委員会で証言したときの勇敢なヘルマンを念頭に置くと、書きやすくなったらしい。  
この宣伝サイトには、キャストとスタッフとのインタヴューが載っているが、内容のほとんどはこの作品と無関係である。ただ、シェパードがヴィム・ヴェンダーズ監督から『ハメット』出演の依頼を受けたと言うところは興味深い。じつは、このヴィデオ版が19ドル95セントで販売されているのだが、アメリカとカナダ以外の国には郵送しないという。何とかして入手したいものだ。 //


来月号に続く

日本語版ホームページに戻る

国際版ホームページに戻る