Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#42--スペンサーは悪党やスズメバチを退治する



   
前回はA&Eで Dash and Lilly というケーブル映画を放映したことをお知らせしたが、A&Eは7月18日に Small Vices を放映した。もちろん、原作はロバート・B・パーカーの『悪党』(早川書房)である。それで、A&Eの宣伝サイト Small Vices をのぞいてみた。  
スペンサー役はロバート・ユーリックではなく、イタリア系のジョー・マンテーニャ。ときどき見る顔だが、とくにどの映画に出演していたのかは思い出せない。『容疑者』に出演していたらしい。刑事役がよく似合いそうだが、HBOのケーブル映画 The Rat Pack ではディーン・マーティンを演じた。とにかく、マンテーニャはスペンサー小説の愛読者であり、脚本も手がけたパーカー自身に指名されたという。  
スーザン役はマーシャ・ゲイ・ハーデンといって、『ジョー・ブラックによろしく』や『ミラーズ・クロッシング』に出演していたらしいが、おれは年齢のせいで覚えがない。ホーク役はシーク・マームッド=ベイという俳優で、これも初じめて聞く名前だ。  
脚本を書いたパーカー自身が、CIA諜報員アイヴズとして特別出演しているし、息子のダニエル・パーカーがゲイ刑事ファレル役で出演している。監督はドキュメンタリー映画出身のロバート・マーコウィッツ。しかし、ロケーション撮影したのは製作費の都合で、ボストンではなく、カナダのトロントなのだ。  
このサイトでは出演者やパーカーへのインタヴュー記事とか、プロット説明が読める。そのほか、パーカーへの質問を受けつけていて、放映後の23日に答えが掲載された。このあと、A&Eでもほかのスペンサーものとジェッシイ・ストーンものをケーブル映画化するらしい。そして、今秋には初めての女性探偵もの Family Honor を上梓して、ヘレン・ハント主演で映画化される。

 
パーカーに少なからず影響を受けている若手作家たちがいる。ハーラン・コーベン、デニス・レヘインなどである。かなりアブなくて凶暴な相棒が主人公のかわりに、殺人までしてくれる。パーカーにホークがいるなら、ロバート・クレイス(『ぬきさしならない依頼』扶桑社ミステリー)のLA探偵エルヴィス・コールにはジョー・パイクがいる。  
これまで、クレイスにはコールの宣伝サイトがあって、前にけなしたことがある。今度クレイスから来た電子メールには、新しいサイトを設立したと書いてあったので、早速 The Official Robert Crais Web Site を訪問してみた。  
黒いバックグラウンドに黄色い文字は読みにくいが、内容は以前よりもずっと充実している。略歴ページを読むと、クレイスが『Dr刑事クインシー』や『ヒル・ストリート・ブルース』、『キャグニー&レイシー』、『LAロー』、『マイアミ・バイス』などの脚本を書いていたことがわかる。  
チェックリストの短篇小説部門を見ると、クレイスの初めて売れた作品はケイト・ウィヘルム編纂のSFアンソロジー Clarion SF (77年刊)に収録された With Crooked Hands なのである。ミステリの短篇もあることをご存じかな? バイロン・プライス編纂の『フィリップ・マーロウの事件2』(早川書房)に収録された「ディック・ボングを知っていた男」という作品だ。TV脚本部門を見ると、エルヴィス・コール名義や、ジェリー・グレット・サムーシュ(フランス語で、「まずい本を書いて御免よ」という意味)名義でも書いたことがある。  
ブック・ツアーのスケジュールもちゃんと載っているし、ツアー中に撮影した写真もアップロードしてある。おれは7月にセント・ルイスの〈アイコン〉で彼の姿を見たが、支離滅裂になったそのときの悪名高いパネル・ディスカッションの写真もあるぞ。99年に刊行されたコールものは L. A. Requiem といい、今までと違って三人称記述で描かれ、パイクの過去が明かされる。

 
ジェイムズ・サリスはSF短篇を書いたばかりか、60年代にはSF雑誌《ニュー・ワールズ》の編集者をしていた。サリスの探偵ルー・グリフィンものの一つ『黒いスズメバチ』(ミステリアス・プレス文庫)がやっと邦訳されたが、これが本邦初紹介ではない。『SFゴタゴタ資料大全集』(奇想天外社)によると、ラングドン・ジョーンズ編の『新しいSF』(サンリオSF文庫)に「蟋蟀の眼の不安」を寄稿しているのだ。  
前置きが長くなったが、The James Sallis Web Pages はサリス評論書と呼べるくらいに充実している。サリスの作品リストを挙げるだけではなく、作品評論、作品に登場するほかの文学作品の名前や引用箇所、ジャズ・ミュージシャンの名前などの説明を丁寧すぎるほどしているのだ。  
作品リストのページによると、サリスはもう一作グリフィンものを書く予定だし、2冊の短篇集のほか、文芸エッセイ集やチェスター・ハイムズ伝、ノワール評論書 Difficult Lives (ジム・トンプスンとデイヴィッド・グーディスとハイムズの研究)の改訂版がまもなく上梓される。  
長い短篇作品リストを見ると、《フロリダ・レヴュー》や《プレイリー・スクーナー》などの文芸雑誌、《ギャラクシー》や《アイザック・アジモフ》などのSF雑誌、《ヒッチコック・マガジン》や《エラリイ・クイーン》などのミステリ雑誌のほか、SFやミステリのオリジナル・アンソロジーにも寄稿している。  
それだけではなく、ジャズ評論も書いたり、20世紀のフランス人作家レモン・クノーの作品を翻訳するなど、まさに多芸な作家である。現在はニュー・オーリンズではなく、ニューヨークに住んでいるらしい。  
ドメイン・ネームからは判断しにくいわが、このファン・サイトのウェブマスターであるリチャード・マーティンはたぶんイギリス在だろう。99年3月にこのサイトを設立して、7月に大幅に更新した。インタヴュー記事や、サリスの長篇の抜粋、短篇、エッセイの掲載許可を取得するほど熱がはいっている。欠点は、2段組のレイアウトや色彩豊かなバックグラウンド、豊富な資料のせいで、多くのページが重すぎることぐらいかな? サリス・ファンはぜひ訪問すべし! //


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