Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#49--あるときはハンター、あるときはマクベイン



 毎週日曜日に更新される《ニューヨーク・タイムズ・ブック・レヴュー》は毎週一人の作家を取り上げて、その作家の新作書評や特集記事を載せるほか、過去の作品の書評や、関連記事まで載せている。2000年1月30日号は Featured Author としてエド・マクベイン が取り上げられていた。87分署シリーズ第50作 The Last Dance が刊行されたばかりだからだ。

 何を隠そう、おれはエド・マクベイン/エヴァン・ハンターのファンで、リチャード.マーステン名義の少年少女空想科学小説『恐竜の世界』(石泉社)から始まって、マクベインがいろいろなペンネームで書いた作品の半分以上は読んでいると思う。だから、セルウィン・ラーブのインタヴュー記事を読んでも、たいして目新しい情報は見当たらなかった。ただ、コネティカットに住むハンターが毎週一日か二日ニューヨークで過ごすことと、87年と97年のあいだに3回の心臓発作を起こしたこと、ハンター名義の新作のタイトルが Rain After Sundown ということは初耳だった。ちなみに、サルヴァトーレ・アルバート・ロンビーノは彼が生まれたときにつけられた名前であり、正式にエヴァン・ハンターに改名したので、ハンターが本名なのである。

 このインタヴュー記事よりも、《ニューヨーカー誌》1月10日号でピート・ハミルが書いたインタヴュー記事のほうが面白い。とくにハンターの前半生が描かれていて、ハンターがスコット・メレディス文芸代理店で他人の作品を見て作家になろうと決心したのではなく、初めから作家になりたくて代理店に就職したという経緯が明らかにされている。残念ながら、《ニューヨーカー》のウェブサイト にこの記事は載っていないが、バックナンバーは買える。

 そのほか、マリリン・スタシオの新作書評(これが87分署シリーズの最終作ではないことを強調)と新作の第1章も載っている。おれが一番感激したのは、《ニューヨーク・タイムズ》に掲載されたハンター/マクベインの関連記事のほとんどをここにアップロードしてくれていることだ。56年刊の87分署シリーズ第1作『警官嫌い』や、ハンター名義の『暴力教室』、ハント・コリンズ名義の『果てしなき明日』、カート・キャノン名義の『酔いどれ探偵街を行く』などの古い書評や、彼が脚色した『鳥』や『複数犯罪』の映画評が読める。

 それに、58年の作者紹介記事では、『逢う時はいつも他人』を発表したばかりのハンターのいくつもの顔を紹介している。それに、99年3月29日号では、マクベインが私立探偵もの、罪なき傍観者もの、警察小説などの書き方をじつに面白可笑しく書いている。これは、マクベインが自分の編纂した The Best American Mystery Stories 1999 の序文とほとんど同じである。これだけでも読むべし。

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 マクベインか87分署のウェブサイトを捜していると、87th Precinct UNofficial Home Page を見つけた。インディアナ州ブルーミントンに住んでいて、そこのインターネット・サーヴィス・プロヴァイダーで働いているジェニファー・マックラングという女性(写真はあるが年齢は不詳)が管理している。彼女は89年に『毒薬』を読んで、マクベインのファンになり、マリリン・ホリス役にはミッシェル・ファイファーしかいないと信じている。

 マクベインの略歴では、どうして一番目の奥さんの名前がアニタだと知らないのだろう? マックラングはシリーズの矛盾点を指摘しているが、検屍医ブレイニーの名前が途中でポールからカールに変わったことは気がつかなかったね。そして、赤毛で緑の目を持ったアイルランド人女性がたくさん(アイリーン・バークやオーガスト・ブレアなど)登場することもマックラングは指摘している。それに、マイクとアーサーとジェニーという名前の人物がたくさん登場するらしい(マックラングの名前がジェニーなので、余計に気になったのだろう)。

 Ed McBain Mailing LIst があるというので、そこを訪問したが、マクベインの著作リストに知らない作品が並んでいるぞ。アメリカ版がないイギリスで刊行された短篇集やアンソロジーを載せるなら、出版社も明記すべきだし、マクベインの現在の本名がロンビーノではなく、エヴァン・ハンターだと何回言えばわかるんだよ? それにしても、ハント・コリンズ名義の Sucker という作品は知らないぞ。

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 マクベインの87分署シリーズを無断で盗作したというので、マクベインが嫌っているTV番組は『シカゴ警察ヒルストリートブルース』である。しかし、87分署ファンならきっと好きになるだろう。HIll Street Blues では、1981年から87年までの7年間続いたこの警察捜査番組について詳しく説明している。日本では《スーパー・チャンネル》で放映中だということまで書いてある。

 81年にNBCで始まったときは、玄人好みの番組で、視聴率が低く、1年でキャンセルされるところだった。しかし、1年目にエミー賞を8つも獲得して、番組が更新された。邦題は『シカゴ警察ヒルストリートブルース』となっているのだが、とくにシカゴ警察と特定しているわけではない。それでも、シカゴ市警の警官のアドヴァイスを受け、シカゴで撮影していた。

 主要俳優の紹介がなかなか興味深い。製作者のスティーヴン・ボチコがフリロの元女房役のバーバラ・ボッソンと当時結婚していたんだって(番組が終了した97年に離婚)。美人弁護士役のヴェロニカ・ハメルはかつてヴァージニア・スリムのコマーシャルに出ていたらしい(だから見覚えのある顔だと思ったのか)。婦警ベイツ役のベティー・トーマスは『ドクター・ドリトル』などの劇場映画を監督している。

 エド・マクベインは『シカゴ警察ヒルストリートブルース』の製作者を嫌う前にも、ハンター名義の『黄金の街』の原題 The Streets of Gold という同名映画も嫌っていたし、Meyer Meyer というタイトルの小説を書いた女性作家も嫌っていたよね。 //


来月号に続く

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