Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#50 -- ウェストレイクの最新作がカギである



 ドナルド・E・ウェストレイクのドートマンダーものの長篇第九作『最高の悪運』が4月にミステリアス・プレス文庫から訳出されたし、『ミステリマガジン』2000年6月号にはドートマンダーものの最新短篇も訳載されているので、ウェストレイクに関する情報を捜してみた。

 それで、The Home of Mysterious Press and Other Mystery Titles に行ってみた。アメリカの版元もミステリアス・プレスなのだが、ここはワーナー・ブックスの子会社であり、ワーナー・ブックスはタイム・ワーナー・ターナーの子会社である。マイクル・コナリーの版元であるリトル・ブラウンもタイム・ワーナーの子会社なので、このウェブサイトで紹介されている。

 さて、ウェストレイクの2000年最新作は The Hook が2月のミステリ・ページの注目作である。次作の締め切り日が迫っているのに、ベストセラー作家プロクターはさっぱり書けない。売れない作家プレンティスは出版社との契約が取れない。それで、プレンティスはプロクターに売れない原稿を譲り、印税を分けようと話し合う。ただ、プロクターは離婚訴訟中で、妻を殺してほしいとプレンティスに頼む。そう、いつものコメカル・ミステリではない。ブラック・ユーモアを込めて、暗にアメリカの出版界を風刺しているのだ。

 プレス・リリースでは、スティーヴン・キングのほか、《カーカス・レヴューズ 》や《ライブラリー・ジャーナル》などが推薦文を寄せている。ここで、ウェストレイク・コンテストが行なわれている。六つの質問に答えて、抽選で15人の解答者にこの最新作を差しあげるというものだ。さあ、答えられるかな? 
 質問1、次の三つのうちで、ウェストレイクのペンネームでないものはどれか? リチャード・スタークか、ヴィクター・ボットか、タッカー・コウか。答えは、たぶん売れない作家プレンティスのペンネームの一つじゃないかな。

 質問2、次の三つのうちで、ウェストレイクがオスカー脚本賞候補に選ばれたのはどれか? 『ペイバック』か『グリフターズ』か『ホット・ロック』か。答えはジム・トンプスン原作の映画だね。

 質問3、次の三つのうちで、ウェストレイク(とほかのペンネーム)の作品に登場しない人物は誰か? パーカーか、ボーイ・カートライトか、ハリー・ボッシュか。答えはマイクル・コナリーの小説の主人公だね。馴染みの薄い人物はウェストレイク作の『嘘じゃないんだ!』に登場する。

 質問4、次の三つのうちで、ウェストレイクに初めてのエドガー賞をもたらしたのはどの作品か? 『やとわれた男』か『我輩はカモである』か『嘘じゃないんだ!』か。処女長篇ではないよ。

 質問5、次の三つのうちで、The Ax の主人公を説明しているのはどれか? 斧で若い女性を狙う連続殺人鬼か、出版社が見つからない作家か、仕事が見つからない失業中の中間管理職員か。The Hook の主人公と混同しないように。

 質問6、次の三つのうちで、The Hook の舞台はどれか? スポーツ・フィッシングか、出版界か、カジノ・ギャンブリングか。これも簡単だよね。

 ただし、締め切りは4月1日だし、アメリカに住んでいない人は応募できないので、あしからず。

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 女性探偵だけを扱ったサイトはいろいろあるが、femaledetective.com は2000年に開設された。最新ニュースはこのウェブサイトを開設したことだという。女性探偵とそれを想像した作家について、簡潔に紹介している。アメリカの女性探偵をアマチュア、コメディー、法科学、弁護士、私立探偵、刑事、記者に、イギリスの女性探偵をアマチュア、私立探偵、刑事、古典に分けている。

 アメリカの女性私立探偵では、マクシン・オキャラハンのデライラ・ウェスト(『永遠に別れを』)、マーシャ・マラーのシャロン・マコーン(『人形の夜』)、スー・グラフトンのキンジー・ミルホーン(『アリバイのA』)、サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキー(『サマータイム・ブルース』)、マーサ・C・ロレンスのエリザベス・チェイス(『蠍座の殺人』)、リンダ・バーンズのカーロッタ・カーライル(『赤毛のカーロッタ奮闘す』)をとくに推薦している。それぞれの紹介も簡潔に的確である。  ウェブマスターがジョン・ルーウェルという男性だというところが面白い。それに、ルーウェルのEメール・アドレスを見ると、ウェブ・サーヴァーはイギリスにあるらしい。

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 femaledetective.com のリンク・ページで Tart Noir というのを見つけた。tart というのは「タルト菓子」とか「尻軽女」という意味ではなくて、ここでは、セクシーでタフで優しい自立した女という意味らしい。フィリップ・マーロウとファム・ファタールの要素を備えた女なのだ。ロール・モデルは『唇からナイフ』のモデスティー・ブレイズとか、『おしゃれ梺T偵』のエマ・ピールだから、洒落っ気もあるのだ。

 このウェブサイトを管理しているのはスパークル・ヘイター(本名)という女性作家で、TV記者ロビン・ハドスンものの作者として有名であり、自分だけのウェブサイトも管理している。イギリスの女性作家ローレン・ヘンダースン(女性彫刻家サム・ジョーンズものの作者)とヘイターが何かおもしろいことをしようと話し合って、2000年に開設したらしい。これに、ケイシー・ジョーンズものの作者ケイティー・マンガー(《ワシントン・ポスト誌》のミステリ書評子としても有名)とか、イギリスの女性作家ステラ・ダフィーとか、トニー・フェンリー(『おかしな奴が多すぎる』)が加わっている。ローラ・リップマン(『チャーム・シティ』)は毎月原稿を書けないので、予備会員らしい。

 ミステリに関係ない内容は、かなり猥褻である。それよりも、黒いバックグラウンドにピンクや黄色の文字はべらぼう読みにくくて、目が痛くなってきた。
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 2000年代(二千ヒトケタ年代)のミステリの傾向の一つは、女性作家が書く犯罪小説(俗に「ノワール小説」と呼ばれる)の増加だろう。それで、こんなタフ・ギャル作家たちが登場しても、ちっとも不思議ではないのだ。 //


来月号に続く

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