Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#54-- 二日酔いのウォーレンとスチューに鉄砲玉を



 アメリカ探偵作家クラブ(MWA)のメーリング・リストにウォーレン・マーフィーの投稿があり、自己紹介がわりにウェブサイトを見てほしいと書いていたので、訪問した。

 Warren Murphy - Homepage を訪問すると、馴染みのない音楽が流れてくるので、会社でこっそりウェブ・サーフィンをしている人は注意すべし。それに、tripod のフリー・サイトなので、宣伝ウィンドウも無断で出てくる。

 マーフィーはニュージャージー州ジャージー・シティーで生まれた。記者として働き、朝鮮戦争のあと、政治家の広報係をやったが、その政治家たちがみんな刑務所にはいったので、別の仕事を捜すべきだと思った。それで、1971年にリチャード・サピアと共作した殺人機械シリーズ(創元推理文庫)の1作目『デストロイヤーの誕生』を発表したのだ。創元推理文庫では11巻で完結となっているが、そのあともリチャード・マイヤーズやロバート・J・ランディージの助けを借りたりして、一年に数作も発表した。87年にサピアが亡くなったあとも、デストロイヤーものはまだ書き続けられているが、マーフィーは名前を貸しているだけにすぎない。

 日本の読者にはトレースもの(ハヤカワ・ミステリ文庫)で有名だが、トレースもの第1作『二日酔いのバラード』が83年に刊行される前の82年に、ジュリアン・“ディガー”・バロウズものを4作も発表している。このディガーとトレースは名前こそ違うが、同じ人物設定である。ディガーものの版元だったポケット・ブックスが契約を更新しなかったので、マーフィーは主要人物の名前だけ変えて、シグネット・ブックスからトレースものを発表したのだ。あとで、ディガー/トレースものはABCのTV番組になるのだが、主人公の名前はなんとマーフィーなのだ!

 あとで妻となる日系人モリー・コクランと共作した84年刊の『グランドマスター』(ハヤカワ文庫NV)と85年刊のトレースもの『豚は太るか死ぬしかない』でMWAよりエドガー賞を受賞し、84年刊の『地獄の天井』と98年発表の短篇 Another Day, Another Dollar でアメリカ私立探偵クラブよりシェイマス賞を受賞している。

 マーフィーの新刊はデヴ・ストライカー名義(モリー・コクランとの共同ペンネーム。『アメリアを狙え』福武書店)の A Wilderness of Mirror というアクション小説である。

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 ダグ・スワンスンという名前を覚えている方はいるだろうか? スワンスンの創造したジャック・フリッポはダラスの私立探偵だということで、ダラスの「ケネディ暗殺現場」を見学したことがあるおれには興味があった。

 それで、フリッポもの第1作『ビッグ・タウン』と第2作『死のドリーム・ボート』(いずれもハヤカワ・ミステリ)を読んだことは覚えているが、内容のほうは覚えていない。
 日本ではその2作しか紹介されていないが、Doug Swanson を訪問すると、スワンスンがアメリカ本国でフリッポものを書き続けていることがわかる。このウェブサイトのサブタイトルは official home page of the Jack Flippo mysteries(ジャック・フリッポ作品の公式ホームページ)といい、トップページには2000年刊の5作目 House of Corrections が8月に刊行されると宣伝している。

 スワンスンについては、ポケミスの作者紹介をちゃんと読まなかったので(いや、読んだ内容を覚えていないので)、あまり知らなかった。テキサス大学オースティン大学を卒業。82年から〈ダラス・モーニング・ニューズ〉でずっと働いていて、86年から91年まではニューヨーク支局長だった。今はテキサス州フォート・ワースに住んでいる。おいおい、それだけかい? どこでいつ生まれたとか、両親や兄弟はどうしているとか、人間的な事柄を書いて、潜在的な読者にも読んでみたいと思わせるようにするのが宣伝サイトの役目の一つだぞ。一口で言うと、商売っ気がないのである。

 5作の作品説明には、本のジャケットに書かれた概要を引用しているだけで、作者しか書けない裏話もない。たぶん5作目が8月に出たあとは、もう少し充実するものと期待する。

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 7月20日にスチュアート・カミンスキーからウェブサイトを立ちあげたという電子メールが届いたので、Stuart Kaminsky Main Page を訪問してみた。トップ・ページには、ファイル・キャビネットの絵があって、その中にいろいろなファイルがはいっている。

 手前からファイルを調べていくと、まずトビー・ピーターもののファイルがある。77年刊の『ロビン・フッドに鉛の玉を』(文藝春秋)から97年刊の A Fatal Glass of Beer まで続いていたが、最近は中断していた。しかし、2001年にチャーリー・チャップリンが依頼人になる新作が出る。

 次に、モスクワ民警ポルフィリ・ロストニコフ捜査官ものは81年刊の『叛逆者に死を』(新潮文庫)からずっと続いていて、2000年刊の新作は Fall of a Cosmonaut でという。シカゴのエイブ・リーバーマン刑事ものは91年刊の『愚者たちの街』(扶桑社ミステリー)から続いていて、2000年刊の新作は The Big Selence という。フロリダの私立探偵ルー・フォネスカものは99年刊の Vengeance から始まっているが、その前に短篇には登場していた。2001年に長篇2作目 Retribution が刊行される。ジム・ロックフォードもの(そう、あのジェイムズ・ガーナーが主演したTV番組のロックフォードだ)を2作発表しているが、このページは工事中。

 最新ニュースのページでは、多彩な多作家カミンスキーが99年にフロリダ作家アンソロジー Mystery in the Sunshine State を編纂したとか、99年に個人短篇集 Hidden and Other Stories が上梓されたとか、役に立つ情報が載っている。

 短篇のページがないとか、出版年度が欠落しているとか、まだ不完全だが、これから充実していくだろう。カミンスキーは多作だから、少なくとも最新ニュースは常に更新してくれるはずだ。 //


来月号に続く

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