Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#56-- ブロックの主人公たちがウェブ上で勢揃い



 インターネットが普及する前から、ローレンス・ブロックは個人ニューズレターを発行していて、最新作の話題やサイン・ツアーのスケジュールをファンたちに知らせていた。インターネットが普及して、ブロックもメール・アドレスを持つようになり、普通の郵便のほかに、電子メールでもニューズレターを配布し始めた。その最新号 Lawrence Block Latest News がウェブ上でも読めるようになった。
 最近のニューズレターでは、ブロック自身がウェブサイトを設立すると言いながらも、ずっと「工事中」だった。そして、ついに8月28日かそのすぐあとに開設するというメッセージが電子メールで届いたのだ。だが、Lawrence Block - Author が実際に開設されたのは8月29日(日本時間で30日)だった。トップ・ページの左半分にビルディングのイラストレーションがあり、窓に映った人影をクリックすると、ほかのページに飛ぶ。
 作品のページには、不眠症の諜報員エヴァン・タナー、ニューヨークの探偵マット・スカダー、泥棒バーニイ・ローデンバー、チップ・ハリスン、殺し屋ケラーそれぞれのシリーズの注釈入りチェックリストがある。ブロックの作品を追いかけているおれでも知らないことを書き出してみよう。『皆殺し』(二見書房)のあとのスカダーもの最新作は2001年秋に刊行される。ローデンバーもの第1作『泥棒は選べない』(ハヤカワ・ミステリ文庫)はジョージ・クルーニー主演の映画になるかもしれない。
 ケラーもの最新作 Hit List は2000年10月に刊行されるが、このサイトでその第1章が読めるのだ。Hit List も第1作の『殺し屋』(二見文庫)のようなエピソード集で、その一部 Keller's Art はイギリスの美術雑誌、《モダン・ペインターズ》2000年春季号に掲載された。
 最近のブロックはアンソロジーの編纂も手がけ、1999年には国際推理作家協会アンソロジー Death Cruise と、有名作家が推薦するほかの作家の作品と自分の作品を集めた Master's Choice を編纂し、2000年には有名作家の処女短篇を集めた Opening Shots を編纂した。
 1999年にはこれまでの短篇集4冊分と新しい作品を合わせた分厚い短篇集 Collected Mystery Stories がイギリスで刊行されたが、2001年には80篇の作品を集めた Long Story Short がアメリカで刊行される(おいおい、これも買わないといけないのかよ)。
 じつのところ、このサイトはブロックが自分の本を自分で販売する商業サイトなのだ。注文ページはひどく重いが、限定版などの珍しい作品を販売しているので、ブロック収集家はぜひとも見るべきだ。しかも、クレジット・カードも使えるのだ。そうそう、田口俊樹氏がアメリカの校正者さえも見逃した間違いを指摘したことを、ここでブロックが称賛しているぞ。
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 どうも感覚が古いせいか、ジェイムズ・エルロイの素晴しさがまったく理解できない。1981年の処女長篇『レクイエム』(ハヤカワ・ミステリ文庫)のエイヴォン版を買っていたのに、活字が小さいのでなかなか読まなかったのだが、シェイマス賞にノミネートされたというので読んでみた。まあまあ悪くはないが、とくに新鮮でもなかったな。83年刊の『血まみれの月』(扶桑社ミステリー)はやはり長すぎる。エルロイのミステリ観や社会観や政治観には賛成するところがほとんどないので、そのあとの作品はあえて読んでいない。映画版『LAコンフィデンシャル』はエルロイの欠点が削られているので楽しめたが、小説のほうは読まないだろう(エド・マクベインも同じようなことを言っていた。マクベインも「隠れエルロイ嫌い」かな?)。
 Ellroy.com はファン・サイトで、エルロイの最新ニュースが載っている。エルロイがマイケル・シェイボン原作(ハヤカワ文庫)の映画『ワンダー・ボーイズ』に特別出演しているというのは本当かね? 『ホワイト・ジャズ』(文藝春秋)はジョン・キューザックとニック・ノルティ共演で映画化される予定で、White Jazz という公式サイトまであるが、今のところトップ・ページしかない。
 ウェブマスターのリッチーはエルロイの全作品の感想を書いているのだが、退屈な作品は退屈だと率直に書いているところに好感が持てる。それに、語彙ページに、エルロイの使う「専門用語」を説明してくれている。「ドラキュラ」とはハワード・ヒューズのことで、「ヘアカット」とはジョン・F・ケネディのことだとは知らなかったなあ。
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 イギリス人なのに、アメリカ人を主人公に、アメリカを舞台にした作品(『キリング・フロアー』講談社文庫)を書いたリー・チャイルドが日本でも話題を呼んでいる。Lee Child - Official Web Site は公式サイトで、チャイルドがサイトの著作権を所有している。
 略歴ページによると、イギリスのコヴェントリー生まれのチャイルドはマンチェスターのグラナダTVで働いていたときに、『ブライヅヘッドふたたび』(イヴリン・ウォー原作、ジョン・モーティマー脚色)や『第一容疑者』(リンダ・ラ・プラント原作)、『心理探偵フィッツ』の制作にも関わった。グラナダをやめて、作家になってから、1998年の夏には憧れのニューヨークに移住した。
 チャイルドはこれまでに読んだいろいろなことを覚えていて、その記憶を頭の片隅に保存しているらしい。それで、彼のアクション場面には信憑性があるのだろう。2000年刊の第4作 Running Blind はアメリカ版のタイトルであり、イギリスのバンタム・プレス版では The Visitor という。1999年刊の第3作のイギリス版は The Hook になる予定だったが、イギリスの編集者がピーター・パンのフック船長を連想させると言って、アメリカ版の Tripwire と同じタイトルにしたという。でも、そのあとで、ドナルド・E・ウェストレイクが2000年に The Hook というノンシリーズの小説を発表した。
 チャイルドの最新ニュースを知りたい方はここでメーリング・リスト The Reacher Report の登録ができる。おれは1カ月ほど前に登録したが、まだ何も届かない。つまり、最新ニュースがないってことかな。 //


来月号に続く

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