Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#57 -- シリーズを書くべきか? 単発作品を書くべきか?



 2000年10月1日から7日はミステリ・シリーズ週間だということで、Third Annual Mystery Series Week を訪問してみた。これは、ミステリ参考書の Detecting Women や Detecting Men を自分で刊行して、アンソニー評伝賞などを受賞しているパープル・ムーン・プレスの出版人ウィレッタ・ハイジングが主催している。

 ハイジングによると、最近刊行されるミステリ小説の3分の2はシリーズ作品だということで、1999年には500冊以上も刊行されたらしい。それで、現役作家の1500人のシリーズ・キャラクターをまとめたのが、Detecting Women (2000) と Detecting Men (1998) である。おれは卓上版もポケット版も所有しているが、なかなか重宝している。

 さて、ハイジングはこの催しのために Mystery Series Week 2000 Pocket Calendar を刊行したのである。 しかも、無料である。問題はこのサイトからダウンロードする必要があることだ。マックの場合は Calendar をクリック&ホールドして、ポップアップ・メニューで「このリンクを別名で保存」を選ぶように指示しているが、「リンクを開く」を選んだほうが自動的にダウンロードできる(ウィンドウの場合はどうかな?)。それに、PDFファイルなので、Acrobat Reader をインストールしていなければならない。

 このカレンダーは80ページの小冊子で、325人の作家を選び、シリーズ作品のチェックリストを載せている。初めの3分の1には10月の第一週の歴史的出来事が挙げてあるが、これはほとんど無駄のような気がする。これのかわりに、ほかの作家の作品も加えたほうがもっと有益じゃないだろうか。それに、シリーズ・キャラクターの名前のほか、職業と設定(時代と舞台)も明記してある。

 2001年に、ハイジングは Willetta's Guide for Police Series と Willetta's Guide for Pivate Eye Series を刊行する予定である。おれはどちらの卓上版もポケット版も買うことになるんだろうな。それに、ハイジングはまた評伝賞を受賞しそうだ。

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 出版界の業界紙である《パブリッシャーズ・ウィークリー》の10月23日号の特集記事 What's Your Motives? で、シリーズ小説と単発小説(stand-alone と呼ぶ)はどちらが書きやすいのか、13人のミステリ作家がインタヴューに答えている。

 アン・ペリーはウィリアム・モンクもの第1作『見知らぬ顔』(創元推理文庫)はもともと単発ものとして執筆したのだが、編集者の忠告で結末を書き換えて、シリーズ作品にしたらしい。

 ドナルド・ウェストレイクはこの20年のあいだ、3作に1作をドートマンダーもの(『最高の悪運』ミステリアス・プレス文庫)にしている。

 ロバート・クレイスが2000年に発表した単発もの Demolition Angel はエルヴィス・コールもの(『サンセット大通りの疑惑』扶桑社ミステリー)の2倍の売り上げがあったという。

 ビル・プロンジーニの名無しの探偵もの(『凶悪』講談社文庫)は2、3稿書くが、単発もの(『よそ者たちの荒野』ハヤカワ・ミステリ)は6稿ぐらい書くので、2倍の時間がかかるという。

 マイクル・コナリーによると、単発もの(『ポエット』)のほうがボッシュもの(『トラック・ミュージック』いずれも扶桑社ミステリー)よりもずっと早く簡単に書けるという。

 トマス・ペリーは『逃げる殺し屋』に登場させたブッチャーズ・ボーイを10年後に『殺し屋の息子』(いずれも文春文庫)で再登場させたが、二度と登場させるつもりはない。1995年に初登場させた失踪請負人ジェイン・ホワイトフィールドも1999年刊の第5作で退場する。

 ずっと単発ものを書いてきたナンシー・テイラー・ローゼンバーグは、新作の Buried Evidence で『情状酌量』(TBSブリタニカ)の地方検事リリー・フォレスターを再登場させた。

 そのほか、ジョニー・ジェイコブやフランセス・ファイフィールド、フランシーン・マシューズ、S・J・ローザン、ピーター・ラヴゼイ、デニス・レヘインもインタヴューに答えている。この13人の最新刊か近刊のタイトルと刊行時がわかるので、なかなか役に立つ。

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 ナンシー・テイラー・ローゼンバーグは名前を見てもわかるように、ユダヤ系である。つまり、何々バーグとか、何々マン(Nが一つ)とかいう姓の作家は、ほとんどユダヤ系なのである。というわけで、The Jewish Who-Dun-It を訪問してみよう。ユダヤ系の作家や主人公を扱ったウェブサイトであり、ダフニー・ショアという司書が管理している。

 ローレンス・W・ラフィエルというミステリ好きのラビがユダヤ人のシリーズ・キャラクターを3つに分けている。まず、「同化」はたまたまユダヤ人だという人物。「文化変容」はユダヤ人であることを少しプロットに反映させようという人物。そして、「肯定」はユダヤ人であることを前面に押し出す人物。

「同化」したユダヤ人はリンダ・バーンズのカーロッタ・カーライル(母親がユダヤ人)、マーク・ショアのレッド・ダイアモンド、ロジャー・サイモンのモウゼズ・ワインなど。

 異文化との接触で「文化変容」したユダヤ人はアーサー・ライオンズのジェイコブ・アッシュ、アンドリュー・バーグマンのジャック・ルヴァイン、ジェイムズ・ヤッフェのママなど。

 民族性と宗教性を大いに「肯定」するユダヤ人はスチュアート・カミンスキーのエイブ・リーバーマン、フェイ・ケラーマンのリナ・ラザラス、ハリー・ケメルマンのラビ・スモールなど。

 ラフィエルはユダヤ人作家のアンソロジー Mystery Midrash を1999年に編纂しただけあって、ジューイッシュ・ミステリをかなり読んでいる。カミンスキーのリーバーマンが『冬の裁き』(扶桑社ミステリー)の前に1983年刊の単発もの When the Dark Man Calls で脇役を務めたことにも気づいているのだ。100人の作家の作品リストが版元と刊行年度つきで載っているのだが、おれの知っている作家は約半分だった。 //


来月号に続く

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