Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#60--その名をジュリー・スミスという探偵作家



 ジュリー・スミス(『殺し屋が町にやってくる』ハヤカワ・ミステリ)がミステリ読者のためのメーリング・リスト Dorothy- L でウェブサイトを開設したという書き込みをしたので、さっそく Casa Mysterioso を訪問してみた。

 トップページは重いイメージの集まりなので、読み込むのに時間がかかるかもしれない。読み込むと、画面全体が真っ赤で、メキシコ湾を臨む家の合成写真が現れる。この家が「カーサ・ミステリオーソ」(ミステリ・ハウス、謎の家)なのだろう。この説明はあとでする。

 略歴ページによると、ニューオーリンズ市警のスキップ・ラングドン刑事ものを8作、サン・フランシスコの弁護士レベッカ・シュワルツ(本当はシュウォーツと発音)もの(『ツーリスト・トラップ』ハヤカワ文庫)を5作、サン・フランシスコの売れない作家ポール・マクドナルドものを2作を著わしたとある。そして、《ニューオーリンズ・タイムズ=ピキユーン紙》と《サン・フランシスコ・クロニクル紙》で新聞記者をした。ラングドンもの第1作『ニューオーリンズの葬送』(ハヤカワ・ミステリ)でエドガー長篇賞を受賞した。

 このほかに、長いほうの略歴ページがあり、面白いところだけを抜き出してみよう。《クロニクル紙》をやめたあと、スミスはマーシャ・マラーたちと創設した執筆工房《インヴィジブル・インク》で生活費を稼ぎながら、小説を書き続けた。そして、1982年にやっとデビュー作であるシュワルツものの Death Turns a Trick が刊行されたあとも、1991年にエドガー賞を受賞したあとも、書き続けた。最近ニューオーリンズに引っ越したのはラングドンものを執筆するためだろうかと思っていたが、じつは1996年に結婚したからだということは知らなかった。最新作は2001年6月刊の Louisiana Hotshot で、これには1998年刊のラングドンもの 82 Desire に登場した女性黒人探偵のタルバ・ウォリスが主役を務める。これを執筆するために、スミスは州の私立探偵コースを取り、許可証取得試験を受けて、合格したのだ。

 書誌ページを見ると、《マイク・シェイン・ミステリ・マガジン》1978年9月号掲載の「慰問カウンセラー」(ハヤカワ文庫『ミニ・ミステリ100(上)』と『愉快な結末』に収録)が初めて活字になった短篇だということがわかった。そのほか、「レッド・ロック」(『フィリップ・マーロウの事件I』早川書房)や「ばかな男」(『シスターズ・イン・クライム』ハヤカワ文庫)なども訳出されたことを忘れていた。でも、スミスのほうも2000年に刊行された短篇集 Mean Rooms を挙げることを忘れているぞ。

 というわけで、「カーサ・ミステリオーソ」の説明をしよう。売れない作家時代を経験したスミスは、同じように売れない作家のための援助財団を作り、その作家をメキシコ湾を臨む家で作品を書かせてあげようという夢を持っていた。しかし、財政的に無理なので、ニューオーリンズのフォークナー協会が主催するハリントン奨学金を紹介しているのだ。ちなみに、エヴァンズ・ハリントンというのはミシシッピ大学でスミスが受けた創作コースの教授である。

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 ポール・ビショップ(『闇を裁け!』光文社文庫)に初めて会ったのは、80年代初めにLAで催された《レイモンド・チャンドラー・ツアー》に参加したときである。そのあと、1981年からビショップは警察に勤務しながらも、The Thieftaker Journals というハードボイルド系のパーソナルジン(個人誌)を発行していた。ビショップはディック・フランシスのファンで、フランシスが最後のレースで落馬した写真をその個人誌に載せたのが印象的だった。Paul Bishop Home Page を訪問してみよう。

 これによると、刑事でもあるビショップはLAPDにもう23年もいるというから、初めて会ったときは新人だったわけだ。ウェストLA署のテロリスト対策班で3年勤めたあと、現在は性犯罪班に所属している。ビショップの本当のデビュー作はパイク・ビショップ名義で1985年に出したウェスタン小説 Shroud of Vengeance である。そのあと、《ハードボイルド》に短篇を寄稿した。最近はTV脚本も手がけ、ディック・ヴァン・ダイク主演の『Dr.マーク・スローン』用に書いた2本の脚本が放映された。

 このサイトにはインタヴュー記事が載っている。ビショップが法廷で証言しようとしたら、陪審員の一人が彼の『激走!』(光文社文庫)を見せて、担当警官を知っていると言ったというエピソードが面白い。ほかに、ビショップがある性犯罪の容疑者を逮捕しに行くと、その容疑者のベッドにビショップのペイパーバックが置いてあったという現実では信じがたいエピソードもある。

 彼の新作は2000年に出た Patterns of Behavior という短篇集で、現在はクローカーもの5作目 Coyote Paradise と単発ものの The Villain's Waltz を執筆中。いちおう作家として有名になったのに警察をやめない理由は、悪いやつをつかまえるのが楽しいからだという。

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 マイクル・コナリー(『わが心臓の痛み』扶桑社)の妹ジェイン・デイヴィスが電子メールを送ってきた。コナリーの2001年1月刊 A Darkness More Than Night にはテリー・マッケイレブとハリー・ボッシュが共演するのだが、その前に2人が出会ったときのエピソードをメーリング・リストのメンバーだけに送るというのだ。去年までのメンバーも再登録してほしいということで、コナリー・コム で再登録した。

 すると、新作の公式発売日1月23日にその「短篇」Cielo Azul が送られてきたのだ。10年前にLAのマルホランド・ドライヴで身元不明のメキシコ人少女の絞殺死体が見つかり、担当刑事のボッシュは容疑者リストを持って、FBI心理分析官マッケイレブを訪れ、2人で犯人を逮捕するというエピソードである。ボッシュの一人称で記述してあるところが珍しい。なお、短篇のタイトルはボッシュが身元不明の少女につけた仮の名前。

 コナリー・コムには新作の第1章と第10章が載っているのだが、2000年刊の前作 Void Moon ペイパーバック版の巻末予告編と書き出しが少し違うのだ。やっぱり原物と比べてみるしかないか。 //


来月号に続く

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