Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#63-- 女が先か、男が先か、メンドリが先か?



 出版界の業界誌である《パブリッシャーズ・ウィークリー》は半年ごとにミステリ記事を載せる。2001年4月9日号には、ルシンダ・ダイアーの The Guys, the Gals -- Who's on First? とロバート・ダーリンの Getting Clued in on Retailers' Faves が載っている。

 ダイアーの「男か女か、どっちが最初?」では、男性作家と女性作家、男性主人公と女性主人公の話題を取りあげながら、現在のミステリの傾向や新作を紹介している。ルース・レンデルによると、女性は本来ミステリ分野に惹かれるらしいが、あまり一般化してほしくないね。

 専門書店の店主トム・シャンツによると(この記事では、トム・イーニッドとなっているが間違い。イーニッドは奥さんの名前)、2000年の年末はジェイムズ・パタースンやマイクル・コナリー、ロバート・B・パーカー、ロバート・クレイスなどの男性作家が売れたが、今年の夏にはジャネット・イヴァノヴィッチやスー・グラフトン、キャスリーン・レイクス(アメリカでは、キャシー・ライクスと呼ぶ)などのベストセラーの新作が刊行される。それに、女性読者の多くが男性作家の作品を避ける傾向にあるらしい。男性読者は女性作家の作品にも挑戦する傾向にあるという。

 小さい囲み記事では、サラ・コードウェル(『セイレーンは死ぬ歌をうたう』ハヤカワ・ミステリ)のヒラリー・テイマー教授は男性か女性かという疑問を提示している。コードウェルは亡くなっているので、彼女の本心はわからないが、女性だと思うほうが面白いよね。

 ダーリンの「書店員のお気に入り」では、アメリカじゅうのミステリ書店の店長たちが客に薦める作品や作家を挙げている。マイクル・コナリーやデニス・レヘイン、リー・チャイルドたちは人気作家になる前に、書店員たちが懸命に売ってくれたので、忙しくても、小さいミステリ書店のサイン会に駆けつけるのだ。  もう一つの小さい囲み記事によると、ミッキー・スピレイン(『殺す男』ハヤカワ・ミステリ)は執筆中の作品で、マイク・ハマーとヴェルダを結婚させるらしいぞ。おいおい、フッカーという男を主人公にした新作はどうなったんだよ?

 活字版では、ダーリンの記事のほうがたぶん先に載っているのだろうが、ダイアーの記事を先に読むように薦める。ダーリンの記事のほうは単調で、途中で飽きそうになるので、ダイアーの記事を読もうという気が薄れるからだ。どちらか一つを選ぶなら、業界関係者はダイアーのほうを読むべし。

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 ミステリ業界誌と呼ばれる《ミステリ・シーン》の第70号を見ると、Mystery Scene のウェブアドレスが新しくなったということが書いてあったので、さっそく新しいウェブサイトを訪れてみた。ドメイン・ネームからもわかるように、これはホラー関係サイトの一部なのである。

 このサイトには、10篇以上のコラムが載っている。ウェンディー・ホーンズビーが検屍官事務所に行ったときの様子を書いたり、ジョーン・ヘスが女性作家の生活を語ったり、マーシャ・マラーがジュディー・ボルトンものに強く影響を受けたことを明かしたり、ディーン・ジェイムズがエリザベス・ピーターズとのインタヴューを記事にしたりしている。ちょっと待てよ。ここまでは、ジャン・グレイプとディーン・ジェイムズと故エレン・ネアー共編 Deadly Women (Carroll & Graf, 1998) からの転載だよね。

 そのあと、リー・サーヴァーがフィルム・ノワール秀作リストを挙げている。この中に日本映画の『仁義なき戦い』と『ソナチネ』があったのには驚いた。それに、『第三の男』でジョゼフ・コットンが演じたパルプ作家は、ジェイムズ・ハドリー・チェイスがモデルらしい。うん、グレアム・グリーンがチェイスのゴーストをしたという噂もあるしね。

 サーヴァーが50年代の探偵番組を小型フィルム・ノワールを呼んでいることは興味深い。とくに、『ピーター・ガン』と『探偵スタッカート』を典型的なノワールと呼ぶのは、夜の場面が多いのと、ジャズ音楽のせいだろう。『探偵スタッカート』にはシェリー・マンやレッド・ノーヴォといった西海岸の白人ジャズマンが特別出演したので、舞台がLAだと思っていたが、本当はニューヨークなんだってさ。そう言われれば、地下鉄に乗っていたからなあ。

 それに、エド・ゴーマンが優秀なゴールド・メダル作家を挙げている。ピーター・レイブとか、ギル・ブルーワーまでは知っているが、ジョン・マクパートランドとか、ガードナー・フォックスは知らない。さて、これまでは、エド・ゴーマンとリー・サーヴァーとマーティン・H・グリーンバーグ共編の The Big Book of Noir (Carroll & Graf, 1998) からの転載だよね。

 このサイトは《ミステリ・シーン》のネット版でもないし、活字版の購読を募っているわけでもない。とにかく、ホラー関係サイトのスペースを借りないで、《ミステリ・シーン》だけの専門サイトを早く立ちあげてもらいたいものだ。

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 さて、エルキュール・ポアロが21世紀に登場すると、どうなるだろう? デイヴィッド・スーシェの登場するTVのポアロものでは、当時の舞台や衣装のディザインが気に入っているのだが、ヴィデオ・デッキやインターネットを駆使するポアロに違和感があるような、ないような。とにかく、4月22日の木曜日にアメリカCBSでアガサ・クリスティー原作の『オリエント急行の殺人』が新しくTVドラマ化された。残念ながら、日本ではまだ観られないから、宣伝サイト でものぞいてみようか。

 21世紀のポアロに扮するのはアルフレッド・モリーナ(『ショコラ』)で、容疑者たちをレスリー・キャロン(『巴里のアメリカ人』)やメレディス・バクスター(『ファミリー・タイズ』)が演じている。監督はカール・シュンケル、脚色はスティーヴン・ハリガン。

 予告編とか、メーキング、バクスターのコメントが RealPlayer で観られるというので、クリックしてみたが、おれのコンピューターではなぜか観られない。皆さんのコンピューターではどう?  //


来月号に続く

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