Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#73 -- ギリシャ系ノワール作家の曇りなき誇り



 何かのコラムを読んでいたら、ジョージ・P・ペレケーノスのウェブページ GeorgePelecanos.comがあると書いてあったので、そのウェブアドレスをクリックしてみたところ、「2002年2月に開設」というトップページだけが現われた。George Pelecanos eNewletter の購読を申し込むと、2月15日にペレケーノスの版元リトル・ブラウンのミリアム・パーカーからウェブサイト開設の知らせが電子メールで届いた。

 GeorgePelecanos.com は AOL Time Warner Book Group のサイトの一部なので、公式個人サイトではなく宣伝サイトである。作家紹介ページにはペレケーノスの著作を明記しているし、日本でも何かの賞をもらったと書いてある(『俺たちの日』がマルタの鷹協会日本支部よりファルコン賞を受賞したのだ)。  小論ページでは、ペレケーノスのエッセイを載せている。今回は2月刊のストレンジ&クインもの(『曇りなき正義』ハヤカワ・ミステリ文庫)の第2作 Hell to Pay のサイン・ツアーに持っていくアルバムのリストを挙げていた。正直言って、ペレケーノスとおれの音楽の趣味はずいぶん異なる。ラロ・シフリンの『ブリット』とかエンニオ・モリコーネの音楽なら、おれも聞くが、ヒップホップはあまり好きじゃない。ペレケーノスはマイルス・デイヴィスの『ビッチズ・ブリュー』などのフュージョン・ジャズが好きだというが、これはジャズ・ファンの趣味を計るリトマス試験紙のような音楽だから、おれのようなこてこてのジャズ・ファンが敬遠しそうだな。

 ニュース・ページでは、ペレケーノス自身や作品について書いてあるほかのページにリンクしてある。《クレッセント・ブルーズ》に載ったデニス・レヘインとの対談は本誌2001年8月臨時増刊号に訳載された。そのほか、《オニオン》や《ブック・マガジン》、《スパイク・マガジン》に掲載されたインタヴュー記事があるが、ほとんど目新しい情報はなかったなあ。むしろ、ここからリンクしていないが、ペレケーノスが《ワシントン・ポスト》に寄稿した新しいエッセイ The Writing Life のほうが情報豊かである。

 ほかのウェブサイトにリンクをしているので、充実しているように見えるが、この宣伝サイト自体の内容はまだ充実していない。

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 エディー・マラーという作家は1998年に Dark City: The Lost World of film Noir という評論書を著わして、エドガー賞にもノミネートされた。たぶんおれも買ったような気がする。2002年1月にはマラーが The Distance というサスペンス小説を書いたというので、話題になっている。しかも、いずれ日本でも出版されるという。Noir City はマラー自身の公式サイトである。とにかくイメージが多く、容量が重たいので、ブロードバンドやケーブル・アクセスではないネット・サーファーは注意すべし。

 マラーは2001年に Dark City の続編 Dark City Dames: The Wicked Women of Film Noir を著わしたらしいが、おれは買ってない。これにはフィルム・ノワールで男たちをたぶらかした悪女6人が紹介されている。この前なくなったジェイン・グリアのほか、オードリー・トッター、イヴリン・キーズ、マリー・ウィンザー、コリーン・グレイ、アン・サヴェッジの6人で、マラーが直接インタヴューして、裏話を書いている。

 それで、新作 The Distance の紹介をしてみよう。1949年のサン・フランシスコで、ボクサーがマネジャーを殺し、スポーツ記者のビリー・ニコルズがそのボクサーを助けるという話らしい。主人公のニコルズは西海岸のデイモン・ラニアンと呼ばれていて、シリーズ・キャラクターになるらしい。しかし、刊行後にも更新されていなくて、触りの部分も掲載していないので、どういう雰囲気なのか、まったくわからない。  マラーはフィルム・ノワール・ポスターのコレクターでもあり、ベルギー版などの珍しいポスターも公開しているので、一見の値打ちがある。

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 Bleeker Books が2001年7月から開設されたことは知っていた。トップページによると、Bleeker とは、1)マンハッタンのミッドタウンにある通り、2)恐れと疑惑と絶望に特徴づけられた精神状態、3)書店ということらしい。さて、ブリーカー・ストリートはマンハッタンのダウンタウンのグリニッジ・ヴィレッジにあり、綴りはBleecker なのである。絶望の精神状態というのは「わびしい」という意味の bleak の比較級なのだろうか。そして、書店ということらしいが、独立した書店ではなく、ここで取りあげる書籍はアマゾン・コムで買うことになるので、アマゾンの店員という感じだ。

 いちおう、おれのもとに The Bleeker Street Irregular というニューズレターが届き、2002年2月号には《ブラック・マスク》派作家とビル・プロンジーニの新刊 Bleeders を紹介しているということなので、久しぶりに訪問してみた。

 じつは、プロンジーニの新作は名無しの探偵もの(『凶悪』講談社文庫)の最終作なのだ。そう、これで名無しの探偵ものは終わる……ということだ(名無しが安楽椅子探偵になり、助手に聞き込みをさせて、シリーズを続けるかもしれないという噂もある)。でも、ここの作品紹介は書評ではなく、やはり紹介にとどまっているな。

 もう一つの目玉は《ブラック・マスク》派についてのエッセイだ。取りあげられている主な作品は、ポール・ケインの『裏切りの街』(河出文庫)とラウール・ホイットフィールドの『ハリウッド・ボウルの殺人』(小学館文庫)とダシール・ハメットの『マルタの鷹』の三作だ。いい作品を取りあげているが、「書店員」グレアム・パウエルの書くエッセイの内容は要領を得ない。

 俗に「ハードボイルド/ノワール」と呼ばれる作品群(書籍と映画)を扱っているので、この定義の不明瞭な作品群に興味がある読者は訪問しても損はないだろう。以前にもこのウェブサイトを取りあげて、けなしたような気もするが、気のせいだろうか? おれがはっきり覚えてないのに、ほかのみんなが覚えてるわけないよね? //


来月号に続く

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