Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#75 -- あるときはコリンズ、 あるときはサドラー



 あるメーリング・リストにデニス・リンズこと、マイクル・コリンズ(『鮮血色の夢』創元推理文庫)が書き込みをした。やっと自分のウェブサイト Dennis Lynds を開設したというのだ。

 トップ・ページは新聞の第一面のようなレイアウトで、新刊のノンシリーズ短篇集 Spies and Thieves, Cops and Killers, Etc. の宣伝とか、ロス・マクドナルドやスー・グラフトンからの褒め言葉も載っている。

 歓迎ページでは、コリンズの経歴と近況が述べられている。最近では《エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン》2002年5月号にダン・フォーチューンもの短篇 Disney World が掲載された。そのほか、文芸小説 Pictures on a Bedroom Wall を書き終わり、現在はフォーチューンもの長篇とスリラーと別の文芸小説を執筆中である。そして、フォーチューンの前身スロットマシーン・ケリーものの短篇集が2003年に刊行されるという。

 コリンズの詳細な自己紹介がとくに興味深い。両親ともイギリス人俳優で、両親がアメリカのミズーリ州セント・ルイスにいるときに、コリンズは生まれた。誕生直後、コリンズは両親にイギリスのロンドンに連れていかれた。6年後、両親と共にアメリカに戻り、ニューヨークでアメリカ市民になった。そのあと、ハリウッド、デンヴァー、ニューヨークと移った。化学の学士号をホフストラ大学で獲得したあと、ジャーナリズム学の修士号をシラキューズ大学で獲得し、化学雑誌の編集をしながら、夜間や週末に小説を執筆した。

 1964年にサンタ・バーバラに引っ越し、1967年にフォーチューンもの第1作『恐怖の掟』(ハヤカワ・ミステリ)を発表して、エドガー賞処女長篇賞を受賞するのである。そして、ジョン・クロウ名義でブエナ・コスタ郡もの(『もうひとつの死』ハヤカワ・ミステリ)を、マーク・サドラー名義で既婚探偵ポール・ショウもの(『落ちる男』ハヤカワ・ミステリ)を、ウィリアム・アーデン名義でスパイ探偵ケイン・ジャクスンものと三人探偵もの(『ちぢむ家の秘密』偕成社)を執筆した。

 このウェブサイトでは、コリンズの短篇4篇を公開している。「きみは金髪、ボガートが頼り」(本誌84年11月号)と、2001年度のエドガー賞短篇賞候補に挙がったノンシリーズ短篇と、未訳2篇が含まれている。

 それに、過小評価されている多作家コリンズの完全作品リストがずいぶん役に立つ。「完全」と謳いながらも、リンズ名義のノヴェライゼーションや、マックスウェル・グラント名義のザ・シャドウもの、ニック・カーター名義のニック・カーターものは抜けている。一番役立ったのはリンズ名義の文芸短篇リストである。ちなみに、初めて活字になった短篇は《プレイリー・スクーナー誌》1954年春号に掲載された Rites of Spring である。

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《アルフレッド・ヒッチコックス・ミステリ・マガジン》(AHMM)に中篇を発表しているデイヴィッド・K・ハーフォード(『ヴェトナム戦場の殺人』扶桑社ミステリー)のウェブサイト を見つけたのは、1月31日にAHMMの編集長キャスリーン・ジョーダンが急死して、死亡記事を捜すために、検索をかけているときだった。死亡記事はネット上で見つからなかったのだが、ジョーダンが発表した唯一の長篇 A Carol in the Dark の初めの3章をハーフォードのウェブサイトで見つけた。

 ハーフォードの自己紹介ページによると、彼は1947年にペンシルヴェニア州アルゲニー山脈北西部で生まれ育った。そのあと、メキシコのモンテレーやオハイオ州の学校に行き、1967年に軍隊にはいって、憲兵としてヴェトナムに行った。除隊後、ピッツバーグ大学ブラッドフォード校に通っているあいだに、作家になろうと決心して、フリーランス作家になった。詩や雑誌記事、新聞記事を書き、十代前半から読んでいたAHMMにミステリ中篇を送り続け、ついに1991年5月号に「愛というもの」(本誌93年11月号訳載)が掲載された。

 エッセイ・ページには、ハーフォードの「ホーチミン・ルート殺人事件」がオットー・ペンズラー&エド・マクベイン共編『アメリカミステリ傑作選2001』(DHC)に収録されることが決まったときのことが書かれている。これでハーフォードはミステリ作家として成功したと思い、ミステリ作品が売れなかった9年間を回顧している。

 そのほか、ハーフォードが現在執筆中の長篇小説 White-Faced Hornets の初めの3章が公開されている。米国同時多発テロ事件に触発されて、書き始めたようだ。彼が住んでいるペンシルヴェニア州エンポリアムが舞台である。

 ハーフォードは現在AHMMにアレゲニー山脈を舞台にしたロングストリートものを寄稿している。

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《パブリッシャーズ・ウィークリー》がまたもやミステリ特集を組んでくれた。2002年4月22日号で Publishers Are Getting Really Series-ous (出版社は本当にシリーズに真剣になっている)というタイトルで、シリーズの人気や新しいシリーズを始めるチャレンジについて、ロバート・ダーリン記者が10人のミステリ担当編集者に訊いている。

 まず、2003年1月にビル・プロンジーニの名無しの探偵もの長篇第28作 Spook が刊行されるニュースには驚いたね。2002年に刊行された Bleeders が最終作だと思っていたからだ。

《パブリシャーズ・ウィークリー》は6カ月前にシリーズものと単発ものについての記事を載せた。シリーズものは両刃の剣であり、主人公に共感する読者なら駄作でも買ってくれるが、共感しない読者は傑作でも買ってくれない。それに、普段はシリーズものを書く作家も交互に単発ものを書くというのが最近の傾向である(デニス・ルヘイン、ハーラン・コーベン、マイクル・コナリー、ビル・プロンジーニなど)。

 大手出版社から刊行されているお気に入りのシリーズについて知りたい読者はぜひ読むべし。 //


来月号に続く

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