Notscape: The CyberGumshoe


サイバーガムシュー


#78----クリントの無垢なる 心臓の痛みを思い出せ



 時機を逸しないように、先に書いておこう。マイクル・コナリー原作の『わが心臓の痛み』(扶桑社)の映画版がアメリカで8月9日より封切られるので、宣伝サイト Blood Work が充実した。1カ月前はトップページだけだったのが、トレーラー(予告編)や写真、ポスターが公開されたのだ。

 そして、7月下旬には映画についてもう少し詳しい情報を公開した。監督・製作はクリント・イーストウッドで、主人公のテリー・マッケイレブには年を取りすぎているが、主役を張る。彼は38日間で効率よく撮影を終えたという。脚本はブライアン・ヘルゲランドで、このあとデニス・ルヘイン原作『ミスティック・リバー』(早川書房)の脚色をイーストウッドのために完成させた。

 配役には少し驚いた。マッケイレブの隣人バディーにはジェフ・ダニエルズ、ボニー・フォックス医師にはアンジェリカ・ヒューストンが扮する。グラシエラ・リヴァーズに扮するのはワンダ・デ・ヘスースというラテン系の女優である。原作でもラテン系の女性という描写があったらしいけど、おれは覚えていない。そして、保安官事務所のジェイ・ウィンストン刑事に扮するのはティナ・リフォードという黒人女優だ。原作にジェイが黒人だという描写があったのかどうかも覚えていないが、この女優は何かの映画で観たことがあるぞ。

 ナヴィゲートしやすい凝ったサイトだが、文字が小さくて、暗いバックグラウンドに白い文字なので、老眼には読みにくいのを何としかしてほしい。イーストウッドでさえ読みにくいと思うよ。

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 リチャード・バリーの公式ウェブサイト Richard Barre, writer を見つけたので訪問してみた。バリーは1995年刊の処女長編『無垢なる骨』(ミステリアス・プレス文庫)でPWAシェイマス賞を受賞したが、日本ではその受賞作しか紹介されていない。アメリカ本国では、1999年刊のウィル・ハーデスティーもの長編第4作 Blackheart Highway まで刊行されている。

 上記のウェブ・アドレスを見て、不思議に思う人も少しはいるかもしれない。どうしてキャプラ・プレスのサイトにバリーのページがあるのだろうと訝っているはずだ。キャプラ・プレスはカリフォーニア州サンタ・バーバラにある文芸専門の極小出版社で、ミステリ関係では、ロス・マクドナルドのエッセイ集 On Crime Writing と Self-Portrait を刊行した。今度キャプラ・プレスの出版人が変わり、バリーが新しく編集顧問の一人になったので、ここにウェブサイトを持っているわけなのだ。

 トップページに最新ニュースが載っている。ヴェトナム帰りの私立探偵ハーデスティーもの第5作 Burning Moon と単発ものを現在執筆中だという。バリーのサイン入り初版本をこのサイトから買えるのだが、じつは新しい出版人ロバート・ベイスンというのは古書店主なのだ。だから、定価よりも高い。

 バリーとは1999年7月にセント・ルイスで催された《アイコン》で会ったことがあるが、Barre の発音は「バリー」であることが確認できた。初対面のおれにも、むこうからあいさつをするほど愛想がよかった。

 不勉強なおれは『無垢なる骨』しか読んでいないので、新作か短編をぜひ読んでみたいものだ。主人公のハーデスティーについてこのサイトでもっと紹介したほうが新しい読者も興味を持つと思うのだがね。

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 アール・エマースンという作家を覚えているだろうか? 1994年刊の『凍った探偵』でシアトルの私立探偵トーマス・ブラックを初登場させ、『不幸な相続人』(いずれも扶桑社ミステリー)でシェイマス賞(ペイパーバック部門)を受賞した。おれはオリジナル・ペイパーバック版でその2作しか読んでいないが、このシリーズは1998年の第11作 Catfish Cafe まで続いている。

 1988年刊の『黒い炎と踊れ』(ハヤカワ・ミステリ)から火災調査員マック・フォンタナものを書き始めた。フォンタナはワシントン州シアトル郊外にある小さい町ステアケースの保安官でもあり消防署長でもある。このシリーズは1997年刊の第五作 The Dead Horse Paint Company まで続いている。

 The Official Earl Emerson Web Site のウェブ・アドレスがmembers.tripod.com/~staircase/home.htm から www.earlemerson.com に変わったのだ。じつは、古いアドレスにもまだウェブサイトがあるのだが、2001年12月以降更新されていないし、そろそろ閉鎖されるという。

 とにかく、4月20日に開設された新しいウェブサイトは、シアトル消防署に勤務するエマースンが3年ぶりに発表した新作 Vertical Burn を宣伝するための個人サイトである。トップページはこのサイトの更新履歴を挙げている。この新作はブラックものでも、フォンタナものでもなく、単発ものである。シアトル消防署のジョン・フィニーが仲間を火災現場に置き去りにしたということで仲間外れにされたあと、放火犯の疑いをかけられて、独自の調査をするという話だ。

 インタヴュー・ページでは、《ミステリ・ニュース》2002年6・7月号に載ったインタヴューのさわり にリンクしている。おれは完全な活字版も持っているので、そちらのほうから面白い点を引き出してみよう。

 大学時代に弟が自殺し、エマースンへの遺書の中に、作家になる夢を叶えてほしいと書いてあったので、作家になる決心をしたらしい。エマースンは大学卒業後、作家稼業に専念していたが、妻に外で働かせて、家で主夫をしていると、親戚から冷たい目で見られたので、執筆する時間が取れそうな消防署で働き始めたという。Vertical Burn のあとに、2作の単発ものを書いてから(次作は小さい町の消防官が主人公で、2003年春に刊行予定。タイトルはたぶん Into the Inferno)、ブラックものとフォンタナものに取りかかるらしい。

 このサイトのウェブマスターはブライアン・エマースンとなっているが、息子だろうか。個人の宣伝サイトとしては、かなり入念に制作している。ただ、ネットスケープでブラウズすると、少しの不都合が起こるのが欠点かな。 //


来月号に続く

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