9. アレルギーの診断


1.)問診 
 アレルギー疾患の原因には遺伝的要因と環境要因とがあります。遺伝的要因はアトピー素因といわれ、IgE抗体を産生しやすい素因です。環境要因は特異的要因と非特異的要因があります。特異的要因は抗原が主因子で、非特異的要因には産業型大気汚染や生活関連大気汚染、あるいは細菌やウィルス感染があげられます。アレルギー疾患の治療のポイントは原因となる抗原を除去、あるいは回避することですので問診と、次の検査の最大の目的は原因となる抗原を見つけることに置かれ、アレルギー疾患の背景、病状、あるいは経過を知るためかなりの時間があてられます。

2.皮膚テスト
苦痛の少ない方法です。スクラッチテスト(掻爬法)、プリックテスト(単刺法)は抗原抽出液(アレルゲンエキス)を皮膚表面に滴下し、針先で皮膚に出血しない程度の擦り傷をつけ、15〜20分後に反応をしらべます。真皮上層の肥満細胞表面に抗原特異的IgE抗体が存在すれば、滴下した抗原と反応し、肥満細胞内のヒスタミンや化学伝達物質が放出され、局所が赤く腫れます。即時型アレルギー反応(1型アレルギー反応)の検査です。小量のアレルゲンエキスを皮内注射するのが皮内反応で、3つの中でもっとも感度が高いが、アナフィラキシーを誘発することがありますので要注意。
 パッチテストは遅延型アレルギー反応(4型アレルギー反応)の検査で、パッチテスト用絆創膏に被験物質をのせ皮膚に貼り、48時間後に判定します。本来はイアリングや歯科材料の金、銀などに対する金属アレルギーや化学物質に対する接触アレルギーの検査ですが、近年アトピー性皮膚炎の抗原を明らかにするため「アトピー・パッチテスト」が行われるようになりました。



3.)血液検査
 血清総IgE値
は1型アレルギーの重症度の大体の目安になります。ただし低いからといって軽症とは限りません。一応3才で60IU/mlが上限です。
 特異的IgE抗体はRAST法で測定されることが多かったため、IgERASTともよばれます。どの抗原に対するIgE抗体があるかをしらべる1型アレルギー反応の検査で、ふつうアレルギーの血液検査とはIgERASTをいいます。RASTスコアーは0から6まであり、花粉症のような典型的1型アレルギー疾患ではスコアー2で13%、3で30%、4で50%、5で85%、6で100%陽性です。しかし1型以外のアレルギー反応も存在するアトピー性皮膚炎では、RASTスコアーのみでは原因抗原とは疑っても確定はできません。
 ヒスタミン遊離試験  抗原特異的IgE抗体は皮膚や肺、鼻などでは組織の肥満細胞と結合していますが、血液中では好塩基球という白血球と結合しています。この好塩基球が抗原と反応するかどうかを化学伝達物質であるヒスタミンの遊離量を測ってしらべるもので、いわば試験管内でアレルギー反応がおこるかどうかを見るものです。現在のところ後述の誘発試験に次ぐ特異性(信頼度)があります。
 特異的IgG,IgG4抗体 アレルギー反応にはIgE抗体のみではなく、IgG抗体も関与しています。確定された卵白アレルギーの人が卵除去食を始めると卵白特異的IgG抗体が低下してきます。すなわち特異的IgG抗体は抗原の生体内侵入の状況を反映していると考えられられます。またIgG抗体は1から4まで、4つのサブクラスに分けられます。減感作療法という治療を受けた人は特異的IgG4抗体が増加します。特異的IgG4抗体は抗原が肥満細胞と結合するのを阻止し、化学伝達物質が放出されるのを抑制する遮断抗体であると考えられました。遮断抗体に関しては反対意見もあります。
 好酸球数 アレルギー疾患では好酸球が増加ます。7%以上が異常値です。アトピー性皮膚炎や気管支喘息が重症であるほど好酸球が増加する傾向があります。また花粉症では鼻汁中に増加します。
 抗原特異的リンパ球幼若化反応抗原特異的リンパ球IL-2反応性 食物アレルギーの一因である4型アレルギー反応の検査です。患者さんのリンパ球を抗原と培養し、アイソトープの取り込みを測定したり、IL-2というサイトカインに対する反応性をしらべるものです。特異性が高いといわれますが、新しい検査で統一見解はまだ得られていません。
 HLA(ヒト白血球抗原)の遺伝子解析 移植された臓器が定着するかどうかを決める主要組織適合性抗原(HLA、ヒト白血球抗原ともいいます)の遺伝子領域は第6染色体にあり、4つの異なるA,B,C,Dの遺伝子座から構成され、それぞれに多数の対立遺伝子が存在し、ヒトの遺伝子のなかでも最も個体差(多型)に富んでいます。これら対立遺伝子の組み合わせをハプロタイプといい、子供のHLA表現型は父方のHLAハプロタイプの1つと母方のHLAハプロタイプ1つを受け継いで決定されます。アトピー体質をHLA遺伝子解析から調べる研究が進んでいます。スギ花粉症やアトピー性皮膚炎がいくつかのハプロタイプと関連することが明らかになりました。
 抗原特異的リンパ球幼若化反応、抗原特異的リンパ球IL-2反応性、HLAの遺伝子解析は未だ研究的な検査です。

上のなかで健康保険が適用され、実用的な検査は皮膚テスト、IgERAST、ヒスタミン遊離試験、IgG4抗体、好酸球です。全体で抗原が判明するのは50%強にすぎません。
 1型アレルギー反応である花粉症や気管支喘息はほとんどが判明しますが、
4型アレルギー反応や遅発型反応が食物抗原が原因であるアトピー性皮膚炎にはこれだけでは不十分で、疑わしい食物があり、除去しなければならないときには次にのべる食物除去、負荷試験を行って確認してからにすべきです。伸びざかりの小児、とりわけ乳幼児に食物制限を行うことは発育に重大な影響をおよぼすからです。

4.)食物除去、負荷試験
 2.)〜3.)はいずれもアレルギー・免疫反応そのものの検出であり、実際にアレルギー症状が出現するかどうかは食物除去、負荷試験を行わなければ分かりません。

ん。


除去試験
 
2〜4週間、原因と思わる食物を除去することによってアレルギー症状が消失するかどうかを観察します。症状が消失すれば原因食物である可能性があります。疑わしい食物が複数あれば、同時に除去します。母乳中に食物抗原が入りますので、母乳栄養中には母親も患児と同じ食物除去が必要です。
経口負荷試験
 
方法が2通りあります
A. オープン法 検者、被験者いずれも負荷食物の内容が分かっている方法で、右図のように行います。結果に先入観が入るおそれがあり、あまり正確ではありません。
B. 二重盲検法 検者、被験者双方とも負荷食物の内容を知らされていません。検者側の負荷食物を準備し、投与するコントローラーだけが知っています。先入観の入らない信頼性の高い方法です。乾燥粉末化した負荷食物をカプセルにつめたり、ジュースにとかしたり、チョコレートシロップに混ぜて行います。

 IgERASTで鶏卵アレルギーが疑われる幼児に卵白で経口負荷試験を行うと陽性率は約60%です。すなわちIgERASTで食物抗原と疑われても、40%が違っていますので、食餌制限を行う前に必ず除去・負荷試験を行って抗原であることを確認すべきです。負荷試験によってアトピー性皮膚炎が悪化する症例では、即時型と遅発型反応の両者がおこり、負荷試験後、数時間から数十時間後に増悪する遅発型反応として観測されました。即ち食物性抗原が原因のアトピー性皮膚炎では、原因食物を摂取してすぐではなく、時間をおいて増悪する可能性が高いことを意味します。


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