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聖書 を学びたい人のための映画
■E『映画で見る新約聖書の世界』■
『汝の敵を愛せよ(原題:The Great Commandment)』1939年 80分

『汝の敵を愛せよ(1939年)』を見る


【スタッフ・キャスト】
 監督:アーヴィング・ピシェル
 原作・脚本:ダナ・バーネット
 撮影:チャールズ・P.ボイル
 美術:エドワード・C.ジュエル
 音楽作曲:ハンス・J・サルター
     :ウォルター・ジャーマン
 音楽監督:ハンス・J・サルター
 編集:ラルフ・ディクソン
 製作:ジョン・ドイル
    ジェームスKフリードリッヒ

 出演:ジョン・ビール(ヨエル)
    モーリス・モスコヴィッチ(レメク)
    アルバート・デッカー(ロンギヌス)
    マジョリー・グーリー(タマル)
    ウォーレン・マクゴラム(ザドク)


【解説】
 救世主を待ちわびていたユダヤにイエスは現れ、熱狂的に迎えられましたが、それは政治的な意味でローマから解放してくれる救世主だと思われていたからでした。
 平和のメッセージを伝えるイエスにイスラエルの人々は失望し、その絶望感がイエスを十字架につけることになり、熱心党のユダの裏切りにつながった背景をコンパクトに描いています。

 「ロンギヌスの槍」として知られ数々の映画やゲームの題材にもなっているるローマの百人隊長ロンギヌスの逸話が盛り込まれています。
 伝承ではロンギヌスは白内障を患い失明寸前でしたが、イエスの遺骸を槍で刺した際に、流れ出た血が目に滴り落ちると奇跡的に視力が回復したとのことです。
 その後も様々な奇蹟を目の当たりにしたことで、回心するとともに洗礼を受け、後にカッパドキアでローマ軍に捕らえられ改宗を迫られますが、これを拒否し斬首刑に処されたそうです。
 これによりロンギヌスは殉教者となり、6世紀末ごろには聖ロンギヌスとして崇敬されるようになったとのです。

 4世紀エルサレムにて、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世の母であるヘレナにより、聖十字架や聖釘などと一緒に「ロンギヌスの槍」は発見されました。
 そして現在、ヘレナ大后が発見したとされる「ロンギヌスの槍」は、バチカンの宝物館に所蔵されています。
 「ロンギヌスの槍」に関して知りたい方はネットで検索して下さい。

 本作では、名作「ベンハー」や「クゥオ・バディス」同様に、イエスが直接姿を現さない手法をとっていますが、イエスの主張や教えは主人公やロンギヌスに影響を与え、見事な存在感を示しています。
 信仰初心者や未信者の方に見せてもアレルギーを起こさないソフトなつくりになっていますが、実は信仰を持つ人間の誰しもが悩み、直面する内面の葛藤のほとんどすべてがさりげなく巧みに描かれています。
 
 あまり知られていない作品ではありますが、これらが第2次世界大戦がはじまる前に作られていた事実に、アメリカの映画人の中のクリスチャンの誇りや矜持を見た思いがしました。
 自分の信仰に不安を覚えたとき、内心に問いかけてみたいときなど、初心を思い出すのに最適の映画だと思います。
 聖霊様が働いて下さり、有意義な時間となりますように。(By天国とんぼ)


【ストーリー】(ネタバレ注意)
 紀元30年。
 ユダヤ全土はティベリウス皇帝と、無慈悲なローマ四分領ヘロデと総督ポンテオ・ピラトが課している法外な税金の下でうめき声を上げている。
 エルサレム近くの小さな村で、狂信的な熱心党たちが巻物を研究し、ローマの抑圧のくびきからユダヤ国民を救うダビデの血統からの王の到来を予言している。
 しかし、ナザレの大工の息子であるイエスが待望の救世主として宣言されているという知らせが遠くから届くと、熱心党はその考えを嘲笑する。

 「ナザレから何か良いものが出てくるだろうか?」書記長レメクが尋ねる。
熱心党は戦う指導者を望んでいたのだ。
 それは若く頑固なヨエルも同じだったが、彼はま美しいタマルを愛しており、彼女と結婚したいと考えていた。
 しかし、彼の父レメクには別の計画があり、タマルとヨエルの弟ザドクとの結婚を取り決めてしまう。

 聖なる安息日の前夜、ローマの百人隊長ロンギヌスが税を徴収するために村に到着すると、貧しい人々のうち数名が逃亡を図り捕らえられる。
 幻滅したヨエルは、イエスという男を探しに行き、イスラエルに王がいるかどうかを自分の目で確かめることにする。
 タマルは自分の心に従い、彼に従いたいと思っていたが、ヨエルは今、自分の幸せよりも大きな問題を考えていた。

 彼は国家の自由を求めていたが、イエスを見つけたとき、彼は暴力の哲学とは相容れない平和のメッセージを説いていた。
 それにもかかわらず、彼はこの奇跡を起こすイエスに惹かれ、それが真理だと確信している自分に気づく。
   まったく新しい視点と、自由と勝利とは何かを考えながら、ヨエルは兄とのタマルの婚宴に間に合うように村に戻る。

 そこで、イエスが教えた最大の戒めである「心を尽くし、思いを尽くしてあなたの神である主を愛し、あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさい...」に対する彼の新たな信仰が試されることになる。
 弟のザドクがローマ兵のロンギヌスに殺されたのだ。
 父親も村人もザトクと戦い重傷を負っていたロンギヌスを殺そうと血気にはやっていた。

 しかし、ヨエルはイエスの教えに従い、ロンギヌスに水を与え介抱する。
 村の人々は「裏切り者だ」とヨエルに襲い掛かろうとしたとき、ロンギヌスの部下たちがやって来て、全員を逮捕しようとする。
 しかし、なぜかロンギヌスは「村人に危害を加えるな」と命じ、ヨエルの逮捕を命じる。

 監獄で何日も食事ものどが通らないヨエルに見張り番の兵は、3人が字磔になる面白い見ものがあったのに、お前を見はる役目のせいで見られなかったと嫌味を言われる。
 そこにロンギヌスがやって来る。
 「なぜ自分を捕まえた」と聞くと「村人から守るための逮捕だった」と答え、ヨエルを釈放する。

 立ち去ろうとするヨエルにロンギヌスは、「なぜ自分を助けたのだ」と尋ねる。
 「あのお方から教わったのだ。憐れみを示すようにと。それは敵であっても」と答えるヨエルに、「不思議な教えだ」と驚くロンギヌス。
 「そのお方とは」と聞くロンギヌスに「ナザレのイエス」と答えるヨエル。

 「自分を救ってくれたその人の脇腹をこの槍で刺してきたところだ」と衝撃を受けるロンギヌス。
 そこにロンギヌスに呼ばれたタマルがやって来て、共に逃げようというが「村に戻る」と答えるヨエル。
 「危険よ」というタマルに「私は王を見つけるために旅に出かけ見つけた。その方が今日亡くなった。それでもその方の信念と教えは生き続ける。それを私は広めていかなければならない。たとえ死んだとしても」と答え、村に戻っていくヨエルとタマル。
 そしてその後を追う、ロンギヌスの姿があった。

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