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『ベッスリアの女王(原題:JUDITH OF BETHULIA)』 1913年 62分 【スタッフ・キャスト】 監督:デヴィッド・ウォーク・グリフィス 撮影: G・W・ビッツァー 出演:ブランチ・スウィート(ユディト) ヘンリー・B・ウォルソール(ホロフェルネス) メエ・マーシュ(ナオミ) ロバート・ハロン(ネイサン) ケイト・ブルース(ユディトの召使い) リリアン・ギッシュ(若い母) ドロシー・ギッシュ(不自由な物乞い) ハリー・ケリー(アッシリアの裏切り者) ライオネル・バリモア(エキストラ) 【解説】 旧約聖書外典の物語の一つ『ユディト記』を映画化したものです。 『ユディト記』は、ユディトという女性の信仰を描く物語です。 『ユディト記』は教派によって扱いに違いがあり、ユダヤ教とプロテスタントでは外典(※)として扱い、カトリック教会と正教会では旧約聖書に加えています。 しかし、ベッスリアという町が架空のものであることや、ネブカドネツァルは新バビロニア帝国の創始者ナボポラサルの子であり、後継者(エレミア21:2,7、エゼキエル26:7)でありましたが、アッシリアの王ではなかったことなどから、架空の物語であると考えられています。 無声映画時代の大スターであるギッシュ姉妹とブランチ・スウィートが、一緒に出ているのは珍しく貴重な作品。 アメリカで映画の父≠ニ呼ばれ、『国民の創世』、『イントレランス』で有名なグリフィス監督の初めての長編映画です。 無声映画で今のようには感情がなかなか伝わらないという欠点はあるものの、将軍を殺すことに葛藤を覚えるユディトを描こうと意図しているのは伝わります。 衣装と舞台、大掛かりなセット、兵士と市民の人数、攻城戦の迫力などはなかなかのもので、100年前の作品とは思えません。 邦題では「ベッスリアの女王」となっていますが、女王でも何でもなく一介の市井の未亡人なので、原題通り「ベッシリアのユディト」で良かったと思います。 ※「外典」とは、聖書におさめる主張もあったが、正典から除外された文書群のことを指しています。 それに対して同じように使われることがある「偽典」というのは、そもそも聖書として認められたことがない文書のことを指して用いられています。 詳しくは、私がまとめた、「新約聖書・外典偽典一覧」を参照(By天国とんぼ) 【ストーリー】(ネタバレ注意) 紀元前 7 世紀、アッシリア王ネブカドネツァルが自らに対して協力的でなかった諸地域に討伐のための軍隊を差し向けまる。 ユダヤにはホロフェルネスが派遣され、彼はベッスリアという町を囲む。 そのベッスリアの城壁は、50キュビトもの厚さ(凡そ肘50個分の厚さ)でというから相当な壁。 真鍮の扉も堅固で、ホロフェルネスの軍勢もあっという間に攻めあぐねてしまう。 ところが、ただし、この城塞、井戸がなぜか壁の外にあるという致命的な欠点があり、いとも簡単に窮地に追い込まれる。 ホロフェルネス軍に包囲され、水と食料を絶たれた街は、渇きと餓えで滅亡待ったなし。 住民は恐怖に陥り、侵略者に家を引き渡そうとしていました。 (水は命の源であり、どこの土地でも水が原因で争いが起きているのに、なぜ城壁の外のまま放置していたのかが全く意味不明。言っても詮無きことだが、物語を考えた当時の人間の知性さに起因するものと思われます。) 国民の絶望を目の当たりにしたユダヤ人の未亡人ジュディス(ブランチ・スウィート)は、ハーレムの労働者を装ってアッシリアの陣営への入場を勝ち取り、そこで彼らの将軍ホロフェルネス(ヘンリー・B・ウォルソール)を殺害する計画を立てる。 敵の陣営に忍び込み、すきをみてホロフェルネスの首をとるのに成功し、司令官を失ったアッシリアの軍勢は敗走した。 | |||||
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