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聖書 を学びたい人のための映画
■F『映画で見る旧約聖書の世界』■
『サムソンとデリラ(1948年製作)』131分
(原題:Samson and Delilah)


『サムソンとデリラ (1949年)』を見る



【スタッフ・キャスト】
 製作:セシル・B・デミル
 監督:セシル・B・デミル
 脚本:ジェシー・L・ラスキー・ジュニアとフレドリック・M・フランク
 撮影:ジョージ・バーンズ
 音楽:ヴィクター・ヤング
 原案:旧約聖書の『士師記』のサムソンとデリラの物語より
 
 出演者:ヘディ・ラマール(デリラ)
     ヴィクター・マチュア (サムソン)
     ジョージ・サンダース(ガザのサラン)
     アンジェラ・ランズベリー(セマダール)
     ヘンリー・ウィルコクソン(アーター)
     オリーヴ・デアリング(ミリアム)
     フェイ・ホールデン(ハゼレルポニ)
     ジュリア・フェイ(ハイシャム)
     ラス・タンブリン(サウル←イスラエル王国初代の王。ダヴィデの前の王)


【解説】
 旧約聖書の『士師記』のサムソンとデリラの物語を映画化。
 サムソンは士師の時代の人間で、サウルやダビデ、ソロモンの統一王国時代直前の人物ということになります。(詳しくは、聖書の歴史年表 時系列順 をご覧ください。)

 デリラの嫉妬心が巻き起こす悲劇。
 プライドの高さから、選ばれなかった悲しさを憎しみにすり替えたり、他の女に取られたくない一念から好きな男を騙したり、陥れたり、救おうとしたり、現代流にいえば、ツンデレの元祖みたいな女が事実上の主人公のデリラ。
 あまりにも屈折した愛に巻き込まれ、右往左往する男の愚かさが哀れです。
 ライオンと素手で戦うシーン、ラストの宮殿が崩壊するシーンCGを使わない贅沢さで、見ごたえがありました。

 昔の話を現代の感覚で判断してはいけないのが映画を見たり、本を読む上での基本ルールだと知りながらも、なぜサムソンのような男に神の力が宿るかが不思議で仕方ありませんでしたが、そもそも神を人間風情が理解できると考えていること自体が不遜な考えでした。
 人間の理解力や想像力をはるかに超えた存在が神であり、理不尽ともいえる存在だからこそ人間に救いがあります。
 もしいつも必ず正しい判断をし、必ず正しい罰を与える神ならば、我々に救いはありません。

 理不尽で怖い時もあるけれそ、時には見過ごし許して下さることもある神様だから、我々はビクビクしないで生きていくことが出来ます。
 そうでなければ、一見不幸に見える状態の人間は神から罰せられた人ということになり、不幸な人を見るとあの人は正しくない人なのだと人は判断してしまうことになりかねません。
 しかし、理不尽な神様ならば、神様は気まぐれだから仕方がないよねと自分を慰めたり他人を励ましたり、今回許して下さって良かった、もう同じ過ちはしないと思うことが出来るのではないでしょうか。

 神様は我々の言うことなど基本的には聞いてくれない、理不尽な神様だと諦めることで、人間は苦難や試練に耐えること出来ますし、時々訪れる幸運やお願いを聞いてくださったときに、神様の愛に素直に感謝できるのです。
 イエス様は我々に優しい愛のある神様の面を教えて下さいましたが、それだけではなく、時には怖い神様の面もあることを旧約聖書を読むと思いだします。
 
 本作の神様の理不尽な所や、無茶苦茶な感じが、いかにも旧約の神様らしく、旧約聖書らしい物語と感じること出来る映画です。(By天国とんぼ)


【ストーリー】(ネタバレ注意)
 紀元前11世紀頃、イスラエルの地はペリシテ人の圧政に苦しんでいた。
 ダン族の村では、老人が子供にエジプトのユダヤ人を解放したモーゼの話をしただけでペリシテ人に暴力をふるわれる。
 村人の希望は土師に選ばれた若者、サムソンだったが、サムソンは、賢い村娘ミリアムでなく、ペリシテ人の娘セマダルと結婚すると言い出し、両親を嘆かせる。

 テムナにあるセマダルの家には彼女の婚約者である、  ダンの軍政長官アルトアが高価な贈り物を持ってきていたが、サムソンはセマダルが槍投げの練習をしている庭から侵入。
 セマダルがアルトアと、ガザのサラン(王)のライオン狩りに行ってしまうと、セマダルの奔放な妹デリラが「私をいっしょに連れて行ってくれるならうちの馬車を使っていい」と言うので、サムソンはデリラと馬車でセマダルを追いかける。

 だが、途中でライオンに出くわす。
 サムソンは素手でライオンを絞め殺す。
 そこへサランの一行がやってくる。

 サムソンが素手でライオンを殺したと言うデリラの自慢話を信じられず、サランは試しにお抱えの闘技士をサムソンと戦わせてみるが、サムソンは闘技士を高々と持ち上げて怪力を証明する。
 サランに「褒美を選んでよい」と言われたサムソンは、セマダルを嫁としてもらうことを選ぶ。
 セマダルとの婚儀を前にした宴会で、羊飼いごときに婚約者を奪われたことが悔しいアルトアはじめ、ペリシテ人はサムソンを蔑む言葉を口にする。

 それに挑んでサムソンはなぞなぞを出し、彼らが答えを当てたら服を贈ると約束する。
 サムソンが自分でなく姉を選んだことに腹を立てているデリラからそそのかされたアルトアは、セマダルに、答えをサムソンから聞き出すように頼む。
 サムソンはセマダルにせがまれて答えを教えてしまう。

 サムソンとセマダルの結婚が成立した直後にアルトアがなぞなぞの正解を言い、サムソンは妻の裏切りを知る。
 そして、アルトアがなぞなぞの正解を奪ったように、道行く人から服を奪ってきて、服を贈る約束を果たす。
 だが、セマダルの父親はサムソンがもう帰ってこないと思って、セマダルをアルトアに渡してしまっていた。

 父親は妹のデリラの方にしろ、こっちの方が美人だとサムソンに勧めるが、サムソンは聞く耳をもたない。
 寝室からセマダルを取り返そうとしたサムソンとペリシテ人たちの戦いになる。
 サムソンの恐るべき怪力によりペリシテ人は負かされるが、戦いのさなかにセマダルと父が死に、家は火に包まれる。
 デリラは自分をふり、姉と父を死なせたサムソンへの復讐を誓う。

 アルトアがサムソンをかくまうダン族への弾圧を強めた結果サムソンは逮捕されるが、護送中に怪力で多くの兵士を殺して逃げる。
 アルトアはサランに叱責されるが、サムソンの力は神的だと弁解する。
 今やサランの寵愛を受けているデリラは、私が捕まえてみせると申し出る。
 条件は捕まったサムソンに刃を触れず一滴の血も流させないことだった。

 サムソンは彼を慕うサウル少年等と共に盗賊となって、ダン族からペリシテ人が収奪した富を奪っていた。
 デリラはソレクの谷に野営して宝物を狙うサムソンをおびき出し、サムソンを誘惑する。
 警戒するサムソンだったがとうとう引っかかってしまう。
 二人は水入らずの日々を過ごし、サムソンはデリラに結婚を申し込む。
 デリラの愛を信じたサムソンは、彼の髪の毛が神の力をもたらしているという秘密を話す。
 デリラも愛するサムソンとエジプトに逃げることを夢見ていた。

 だがそこに、ミリアムがサムソンの両親が拷問に遭っていることを伝えに来る。
 サムソンは村に帰ると決めたが、デリラに眠り薬を飲まされて、髪の毛を切り取られてしまう。
 短髪になって目覚めたサムソンはアルトアとその部下たちに捕らえられる。
 ガザでデリラは手柄の報酬をたくさん得る。
 だが、サランに連れられて入った地下牢で碾き臼を回すサムソンを見た時、彼が盲目となったことを知る。
 アルトアはデリラとの約束を守りサムソンの血を流すことはなかったが、熱した刃で目をつぶしたのだった。

 自分のしたことを悔いたデリラは夜密かにサムソンに会いに行く。
 サムソンが怒りにまかせてデリラを持ち上げると鎖が切れた。
 神は再び怪力を与えたのだった。
 デリラはエジプトに逃げようと言うが、サムソンは自分がペリシテ人と戦うことが神の意志と信じている。

 あえて鎖で自分を縛り、翌日の祭りでガザの神殿の偶像の前で自分が愚弄される時を待つ。
 多数のペリシテ人が神殿に集まる。
 ミリアムはサランにサムソンを村に返すように願うがサランは判断をデリラに委ね、デリラはサムソンをミリアムに渡すことを拒んだ。
 サムソンがサランの前に引き出されて小人たちにいたぶられて人々に笑われるのを見て、デリラは前へ進み出て、サムソンを鞭打つふりをしながら神殿を支える2本柱へと連れていく。

 サムソンはデリラに「早く逃げろ」と言う。
 しかしデリラはサムソンと運命を共にすることを選ぶ。
 「デリラ」と呼ぶサムソンの声に答えず、デリラはもう逃げたと思わせる。
 サムソンは怪力で神殿の2本柱を崩し、神殿と偶像が倒れ、ペリシテ人たちもサムソンもデリラも下敷きとなった。
 ミリアムは「サムソンの名は1000年語り継がれる」とサウルに語るのだった。

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