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『バビロン伝説(原題:Slaves of Babylon』1953年 62分 【スタッフ・キャスト】 監督:ウィリアム・キャッスル 原作・脚本:デバロン・スコット 撮影監督:ヘンリーフリューリッヒ 製作:サム・カッツマン 出演;リチャード・コンテ( ユダヤの青年・ナホム) リンダ・クリスチャン(王女パンシア) モーリス・シュワルツ(ユダヤの賢人・ダニエル) テレンス・キルバーン(羊飼いの青年・キュロス) マイケル・アンサラ(国王の息子・ベルシャザル。聖書ではペルシャツァル) レスリー・ブラッドレー(バビロンの国王・ネブカドネザル) ルース・ストーリー(ナホムの恋人・レイチェル) ウィートン・チェンバーズ(キュロスの育ての父親) ベアトリス・モード(キュロスの育ての母親) ロバート・グリフィン(メディア国王アスティガス王、キュロスの真の祖父) ジョーン・クロフォード(キュロスの真の母親マンダネ・アスティガスの娘) ジュリー・ノイマーアー(ダンサー) 【解説】 聖書の『ダニエル記』でおなじみのダニエルが登場する作品で 紀元前539年、イランのキュロス(クロス)王の軍隊がバビロンに進撃し、捕らえられていたユダヤ人を解放した前日譚を描いた作品。 有名な獅子の部屋に入れられても神に守られて無事だったダニエルの逸話(ダニエル記6;16-23)や、火をつけられても無事だった逸話も出てきます。(ダニエル記3:12-30) 本作では、ペルシャザルがネブカドネザルの子となり後を継いだことになっていますが、聖書では、ネブカドネザルの娘のニトリクスの子で、ナポニドスの子ですので、その点が違っています。 紀元前555年、ネブカドネザルが死に、その後をエビル・メロダクが継ぎますが、すぐ義弟に暗殺され、紀元前555年ネブカドネザルの2番目の妻の子、ナポニドスが王位に就き、彼の子であるペルシャツァル(本作のペルシャザル)に王位の権威を譲ったとされています。 クロス(本作ではキュロス)は紀元前538年に、メディア家を滅ぼし、ついにはバビロンも征服しました。 イザヤはこのクロスを「油注がれた王クロス」と呼んでいます(イザヤ45章)。 クロスは宗教に寛容な政策を取り、異国民に信教の自由を与え、バビロンに捕囚されていたユダヤ人を解放しました。 ダニエルは、ユダ族出身で王族の一人であったと見られています。 紀元前605年、ネブカドネザルがエルサレムを陥落させた際(U歴36:6-7)に、少年だったダニエルもバビロンに連れていかれました(ダニエル1:3-7)。 その後、王の夢の解き明かしなどで、王に次ぐ高官となるのはヨセフの物語と重なります。 またダニエルは獅子を入れられても神が守ってくれることを信じていました。 エステル記のエステルと重なるものがあります。 バビロン捕囚の後の物語という意味でも、重なりますので、見る場合には『プリンセス・オブ・ペルシャ〜エステル勇戦記〜(2006年)』とともに見ることをお勧めします。 ちなみに、この種の映画で不思議なのは奴隷を働かすために見張っている兵が奴隷を鞭打つことで、ケガさせれば余計に働けなくなるのに馬鹿なことをするといつも思ってしまいます。 また馬に乗る将軍たちとそれを追う兵たちの映像もよく見ますが、あんなに早く走ったら長距離なんか持つ訳がないという映像を見るたびに、撮影を終えるとエキストラたちが倒れこんでいる映像が思い浮かび、集中できなくなってしまします。 そのことを疑問に思わないスタッフはどうかしています どうしたらリアルに見えるか、考えながら撮ってほしいものです。 恋人役を演じている主演のリチャード・コンテとルース・ストーリーは本作当時は夫婦でした。 ダニエルとネブカドネザル王の話はあまり映画化されていないので、参考にとセレクトしました。 旧約聖書に興味のない方は、【解説】と【ストーリー】だけ読んでスルーしてください。(By天国とんぼ) 【ストーリー】(ネタバレ注意) 紀元前586年、ユダ王国が新バビロニア王国によって征服されて、多数のユダヤ人がバビロンに連行された。いわゆるバビロン捕囚。 ユダヤ人たちは過酷な労働をさせられていた。 ユダヤ人の一人、賢者のダニエルは優れた知恵を評価されて、国王のネブカドネザルから重用されていた。(ダニエル記2:48) ダニエルはユダヤ人たちの苦労を忘れてはおらず、たびたびネブカドネザルに進言したが受け入れられなかった。 ネブカドネザルの息子のベルシャザルは、ダニエルが重用されていることに対して不満を述べていた。 ユダヤ人の中にナホムという若者がいた。 ナホムは正義感にあふれた青年であった。 したがって、しばしば兵士たちに反抗をして追われていた。 ナホムの恋人のレイチェルはしばしばナホムを匿った。 ダニエルがナホムのところに来て重大な任務を与えた。 ダニエルの得た預言によればイランのキュロスという国王がバビロンを滅ぼしてユダヤ人を解放する。 ナホムの任務はキュロスを探して、この預言を実現するようにキュロスを説得すること。 レイチェルはナホムの身の安全を心配して反対した。 またナホムは、立派な青年であるが、そこまでの使命感はなく、またレイチェルと離れたくない。 しかしナホムはユダヤ民族の運命を賭けた使命に目覚めて、キュロスを探しに行くことにする。 まずはここを脱出するのが困難。町全体が城壁に囲まれており、兵士が見張っている。 町の中を川が流れている。その川の入り口と出口も出入りができないように、鉄柵が埋め込まれている。 ナホムは水に潜って、やっと体を捩じってぎりぎりで鉄柵を抜けることができた(※,超えられる柵に意味はないので、水の中の鉄が錆びていたのを誰も気づかなったのをナホムが発見したという設定の方が説得力があるのにと思いました。) ) ユーフラテス川を越えて、ザグロス山脈をこえて、ついにメディアの国に入った。 (※メディアはバビロン内の国で、ペルシャはさらにその中の国) (※ バビロン>メディア>ペルシャ) キュロスを探して訪ねまわったが、なかなか見つからない。 水辺で笛を吹いている羊飼いがいた。「キュロスという青年を探している」と聞く。 「僕のことを嗅ぎまわっていたのはアンタなのか」との答えである。 ともかく、二人はそれなりに仲良くなり、ナホムはキュロスの両親に会いたいと提案した。 ナホムは両親に会って「キュロスはあなたたちの子供ではない」と切り出した。 しかし母親は喋れないようである。父親が事情を話した。キュロスには話したことがないことである。 妻は当時、宮殿に出入りしていた。 夫は妻が臨月の時、羊の世話をして山を越えて遠くに行っていた。戻ったときは息子は一か月となっていた。そして妻は舌が切り取られていた。 続いて母親は織物に描かれた絵で説明した。(※.おそらくは文字は知らないという前提。) 「王の使いがきた。赤ん坊を抱いていた。赤ん坊を殺すように命令した。死産したばかりの赤ん坊を身代わりにし、赤ん坊を自分の子供として育てた」とナホムは言い当てる。 両親の話を真剣に聞いていたキュロスは、徐々に納得した。 彼は、アステュアゲス王がっまごを殺したという話は来ていた。 孫に王座を奪われるという預言を聞いたためだという。 ナホムはキュロスに「君はメディア国、ペルシャ地方の正当な王だ」と切り出した。 しかしキュロスには、そのような気持ちは全くない。 困ったナホムは「王になれば王妃を自由に選べる」と説得すると、意外にもキュロスの心が動いた。 二人は王宮に出かけた。(※.メディア王国内にペルシャ王国があり、二人が会うのはメディア国王。) 王宮には、国王のアステュアゲスと娘のマンダネがいる。 アステュアゲスはキュロスの祖父であり、マンダネは母親である。 キュロスの育ての母親の織物を出した。 またキュロスは育ての親から貰っていたお守りを見せた。 マンダネはキュロスを見て「夫と目が似ている」と言った。 またお守りは、マンダネが赤ん坊に秘密裏に持たせたものだった。これはマンダネにとって確かな証拠となった。 マンダネはキュロスと母子であると確信した。しかしアスティガスは否定した。 (※.説明はないが、アスティガスは、自分の王の地位を守るためにのマンダネの夫を殺し、さらに孫を他の女性に預けて放逐している。) キュロスはペルシャ国王となり王宮に移り住んだ。ナホムも一緒に住んでいる。 ナホムにしてみれば、まだ初期段階で、さらにバビロンに進撃するように仕向けなければならない。 キュロスは「結婚したい」と言い出す。 続けて「欲しい女性はただ一人、もう決まっている。パンシア王女」という。 今までに二度見かけたそうである。 特使としてナホムがパンシア王女に会った。 会ってみるとパンシアは、トラを可愛がっているような女性であった。 ストレートに「ペルシャ王国の妃に」と言った。 しかしパンシアはペルシャ王国をバカにする。 「もっと大きな国の妃でなければ」と言う気位の高い女性であった。 それをキュロスに報告する。 ここでキュロスはメディア国王となる野望が生まれる。 ナホムは「アステュアゲス王は君を殺しに来るが、しかし預言では君が王を失脚させる」。 「預言など信じない」と語っている所に暗殺の危機が迫り、ようやく本気になるキュロス。 戦いの途中ナホムに命を救われ、何でも言うことを聞くと誓うキュロス。 ナホムは「バビロン征服後に言います」と言い、キュロスを驚かせる。 その頃、ネブカドネザル王(※「ダニエル記」によれば、メディア人ダレイオスの時代)は新しい布告を出した。 「三十日間の間、ベル・マルドックの神に祈らなければ、死刑に処す」。 ダニエルは星をみており、キュロス軍がメディア軍に勝つ方法を見つけようとしていた。 側近の者は、それよりも布告のことを心配するが、ダニエルは気にしていない。 いつものように塔で祈るダニエル捕らえられる。(ダニエル記6;11-) ベル・マルドックを祈れば助かるとダニエルを説得するネブカドネザル。 しかしダニエルには到底受け入れられる話ではなかった。 ライオンが何頭もいる洞窟にダニエルが投げ込まれる。(ダニエル6:17) しばらくして王と王子が確認しにやって来ると、ダニエルのそばに数頭のライオンがゆったりと寝そべっている。 ダニエルは牢から出された。(ダニエル記6;23) 試しに兵士が檻に入ると、たちまちライオンに食い殺される。(ダニエル記6;25) 監獄でダニエルは神から「キュロス軍がメディア軍に勝利する方法」を授かったと告げる。 日食が起きることを告げられたのである。 両軍は激しく戦った。決着はつきそうになかったが太陽が少しずつ隠れてくる。 太陽がすべて隠れた。 メディア軍は取り乱して降伏した。 アスティガス王は予言通り、キュロスに王座を奪われた。 そうしてキュロスがメディア王国の王となった(紀元前550年)。 ナホムの目的は目標半ばだったが、キュロスはメディア王国の王となったことに満足している。 ナホムはパンシアに会った。 「バビロン王国の王妃になりたくないか?」とそそのかした。 パンシアは「なぜバビロンなの?」と疑問に思うが、しかし興味を持ったようである。 パンシアに姿を隠すように指示した。 ダニエルからナホムに「ベルシャザルがパンシアへの思いを強くしている」と知らせが届く。 更に「パンシアはバビロンに向かっている」、「ベルシャザルがパンシアと婚約したらしい」と畳みかけるナホム。 これを聞いてキュロスは「バビロンを攻める」と即断する。 キュロスの軍隊はバビロンに向けて出発した。 途中パンシアがキュロスに見つかり、ナホムの作戦は失敗したかに思われたが、キュロスはパンシアをバビロンの王妃にするために戦うことを改めて覚悟すし、ナホムにパンシアの護衛を命じる。 パンシアに会ったナホムは勝手に動いたことを責めるが、待つのに飽きたからと告げ、ベルシャザルから婚約の申し出があったので、自分は相手がどちらでもバビロンの王妃になると宣言し、ナホムの作戦をつぶすと宣言する。(※ナホムに次第に惹かれているパンシアの、今でいうところのツンデレ?) ナホムはパンシアにルツの話を聞かせる。 「私を突き放さないで、あなたと共に行き、あなたと共に住みます。あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。あなたの死ぬところで私も死に、共に葬られたいのです(ルツ記1:16-17)」 「素敵な話ばかり。でももう聞けなくなるのね」と悲しむパンシア。 バビロンの城の中。ネブカドネザルはダニエルの預言通り、四つん這いになり草を食べ、精神を病んでいた。(ダニエル記4:33) ダニエルに許しを請うと、ダニエルは神に許されたと告げ、王は息を引き取る。 ベルシャザルがその王座を引き継いだ。 そこにキュロス軍がバビロンに到着する。 バビロンの難攻不落の城がそびえ、10年の籠城に耐えうる食料もあると自信満々のベルシャザル。 パンシアにヨセフやモーゼの話を聞かせるナホム。 ルツの話が好き、私たちは同じところに死ぬのねというパンシアに、自分は別に行くところがあると告げるナホム。 攻撃を仕掛けても頑丈な城壁はびくともせず、軍師のナホムを迎えに行くキュロス。 二人が逢瀬を楽しんでいるとき、キュロスが入ってくるのを見つけたパンシアは咄嗟にナホムが無礼を働いたとキュロスに告げ、殺せと命じるキュロスを止め、この戦争に彼は必要だから、戦争が終わってから私が罰を下すとパンシアは宣言し、ナホムを助ける。 その頃、ベルシャザルはユダヤ人たちが叛乱を起こさないかと心配になると同時に、彼らに食べさせる食料も惜しくなり、彼らをまとめて殺す計画を立てる。 ユダヤ人たちに帰っていいと告げ、ユダヤ人たちは城から出てエルサレムに向けて旅立ち、山中で森に火がつけられ、慌てて元に戻ろうとするも、後方からも火がつけられ、ユダヤ人たちは行き場をなくすという計画だった。 前祝いにとベルシャザルらが城で宴会をしていると、人間の指が現れ、壁に文字を書き始め、騒然となる。(ダニエル記5:1ー) 何と書いてあるかをダニエルに尋ねると、「神があなたの治世をさばき、終わらせる。あなたの王国は崩壊し、ペルシャすなわちキュロスに与えられる」と告げるダニエル。 「死ぬのはそちらの方だ。今頃、この瞬間、お前の仲間は次々にしんでいる」と告げるベルシャザル。 祈るダニエル。 すると、突然、雷が鳴り響き、雨が降り出し、火は消え、ユダヤ人たちは救われる。 キュロス軍にナホムが到着する。 キュロスはナホムに作戦を立てるように指示する。 ナホムは、自分が城から抜け出したと同じ方法を使うことにする。 バビロン城から流れ出る川に兵士を入れる。 鉄柵にロープを結びつけて、みんなで引っ張った。 鉄柵が曲がって兵士が入れるようになった。 兵士が次々と侵入する。 城の中で激しい戦いが始まる。 キュロス軍は城門を開けた。さらに多くの兵士が突入した。 次第にキュロス軍が優勢になる。 ついに城は制圧された。 ベルシャザルはダニエルを殺そうとした時、ナホムの槍がペルシャザルの胸を突き刺す。(ダニエル記5:30) 祝いの宴会で、キュロスは私と王妃の2つの約束を果たそうという。 一つは私とお前との約束。 何が望みだと聞くと、ダニエルが代わって、ユダヤ人を解放して、自由を与えてくれと頼み、キュロスは承諾する。 王妃にナホムの死を望むかと聞くと、パンシアは、「ナホムは死ぬべき」と告げる。 「ただし、彼の国王で兄弟たちに囲まれてね」とルツの逸話という二人だけの秘密を持ち出しながら、「神は必ずおいでになり、奴隷から解放されるでしょう」と言って、ナホムを祝福する。 ダニエル、ナホムをはじめとしてユダヤ人たちはエルサレムに向けて出発する。 ナホムは再会したレイチェルと一緒に歩いていく。 | |||||
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