インターネットの楽しみ方
小原克博
●ネットサーフィンのおもしろさと危険性
昨年は「インターネット」という言葉が流行語に選ばれるほどに、インターネットが世間で話題になった年でした。これからはパソコン通信より先にインターネットを利用するということが一般的になってくることでしょう。読者の方々の中には、すでにインターネットを活用されている方もおられれば、まだこれからという方もおられると思います。しかし、いずれの方もインターネットという大海原に何の羅針盤もなく乗り込んでいくなら、宝を見つけるどころか、かえって情報の大波に飲み込まれ、知らず知らずの内に卑俗な快楽のとりことなる危険すらあります。その意味で、インターネットそのものは決してユートピア世界ではありません。そこにはわたしたちの社会にあふれている様々な幻想や欲望が同様に渦巻き、いや、むしろ巧みに増幅されてわたしたちの感性を魅了します。だからこそ、わたしたちは情報の洪水にただ身を任せてネットサーフィンを気取る前に、情報に意味の流れを見いだし、組織化する結節点が必要となってくるのです。
●ホームページ開設の経緯
そのような目的の一助として、わたしは昨年9月に「教会と神学」ホームページ(http://www.bekkoame.or.jp/~kohara/)を開設しました。米国などでは、すでにキリスト教関係のホームページだけでも膨大な数にのぼっていますが、それらはまさに玉石混交です。しかも、非常に多種多様な主張が展開されていますから、流れの全体を見渡すことはまさに至難の業と言えるでしょう。わたし自身、自分の関心に十分に応えてくれるホームページを見つけることができませんでした。しかし、そのような不満が「教会と神学」ホームページを生み出すきっかけとなったのです。
●容易な情報発信
このように非常に単純な動機付けであっても、思い立てば、すぐに個人ホームページを開設することができるのもインターネットの魅力の一つであると思います。インターネットでは簡単に情報発信できるのです。ホームページは一般的にHTML(HyperText Markup Language)という言語で記述されていますが、これは特に難しいものではありません。グラフィックなどは確かに個人の芸術的センスが問われますので、誰もが簡単に洗練されたものを作れるわけではありません。また、見栄えはそのホームページに衆目を引きつけるための重要な役割を果たしますが、やはりホームページの命はコンテンツのおもしろさ、有意義さにあると思います。ですから、最初から格好のよいホームページを目指す必要はありません。テキストだけの素朴な体裁であっても、情報発信としては十分なのです。
●「教会と神学」ホームページの紹介
ここで「教会と神学」ホームページの具体的な内容について紹介させていただきます。内容的にはまだ不十分ながら、開設以来、細かい追加・訂正を加えてきた結果、1996年1月1日現在で、総ディレクトリー数31、総ファイル数310、総ファイル容量3メガバイトのホームページとなっています。以下、「教会と神学」のメイン・メニューを簡単に説明します。1)キリスト教関連情報
わたしが日本キリスト教団の教会に属しているため、「日本キリスト教団」のメニューを設けています。ここで紹介している情報はまだまだ限られていますが、これから各個教会が情報発信する時代になったとき、ポインターの役割を果たすことができればと考えています。もちろん、エキュメニカルなページ作りを目指していますから、これまで互いに知り合うことのなかった様々な教派の人たちが、新しく出会う場所を提供できればとも思っています。また、「世界キリスト教情報」ではキリスト者ジャーナリスト会議(CJC)からいただいた最新情報をできるだけ早く掲載するように心がけています。「国内のキリスト教関係サイトへのリンク」も最近始めました。2)キリスト教芸術
「キリスト教音楽」の方はまだ準備中ですが、「キリスト教芸術」にはクリスチャン画家、岡田利彦氏の作品を展示しています。ロゴスに加えて芸術的パトスによって、キリスト教信仰を表現することはマルチ・メディアの時代に適ったことでしょう。3)キリスト教書籍情報
「新刊情報」には北海道キリスト教書店から情報提供をいただいています。毎月、刊行されるキリスト教書籍を網羅しています。「神学関係の文献情報」では、牧師および研究者向けの専門的な文献をリストアップしています。4)キリスト教神学
「神学研究ライブラリー」では、発表済みの神学論文などを掲載しています。また、「説教ライブラリー」はこのホームページの目玉とも言えるメニューです。樋口氏(室町教会牧師)とわたしの説教、総数177編(1月1日現在)を掲載しています。さらに充実させて、説教者の実用に耐え、かつ信徒の方々の信仰の養いとなるものを目指しています。「神学関係ソフトウェアー」では、まだBibelWorksというソフトの紹介があるだけなのですが、増えつつある聖書・神学関係のソフトをピックアップして紹介するつもりです。5)海外のキリスト教関係サイトへのリンク
主に英語圏、ドイツ語圏のサイトを紹介しています。世界では実に数え切れないほどのキリスト教関係のサイトが立ち上がっていますが、ここでは比較的堅実で、おもしろそうなものをリストアップしています。
●「教会と神学」への反響
実に様々な人が見てくれているようです。中には奇特な人たちもいて、日本語Windows環境を作っている日本語学習中のアメリカ人たちから質問のメールが寄せられたりもします。「教会と神学」は英語化されていないのが難点なのですが、アメリカからも閲覧されているので、一応、世界に情報発信していると言えるでしょう。また、洗礼を受けたものの、しばらく教会には行っていないという人が、このホームページを見て、再び教会に行きたくなったという例もありますので、少しは伝道のお役に立っているようです。いずれにせよ、いろいろな関心を持った方々との出会いを通して、インターネットにおけるキリスト教宣教の新しい可能性を具体的に実感しつつあります。なお、1月から「教会と神学」上で、新旧のメディアとキリスト教の関係を論じるという連載を始めます。関心のある方は、ご覧になってください。