運行表に戻る 目次に戻る 進む


はじめに


 ホムンクルスは、想像上の生き物です。中世ヨーロッパには、錬金術師という人々 がいました。現代の科学者の始まりのようなものですけれど、彼ら錬金術師にとって 新しい生命の創造は、見果てぬ夢のひとつでした。ホムンクルスというのは、彼らに よって生み出された、合成有機生命体なのです。

 ところで、私は錬金術やホムンクルスの事、あまりよく知りませんでした(^_^;)。 今回、このシリーズを書くに当たって資料を調べてみたかったんですけれど、自分で 調べる時間がなくて、一本指さん(*)に図書館でいろいろ調べていただきました。

 それによると、ホムンクルスはメルクリウスの器と呼ばれるガラス製のフラスコの 中に化合物として創り出された両性具有の小人で、その成長は錬金術師の技術の高さ を象徴するものだそうです。また、メルクリウスはギリシャ神話のヘルメスのローマ における呼称であり、占星術では水星を意味し、金属では水銀を表すのだそうです。

 今回のシリーズでは、ガラスの器の中から外の世界を見つめている、ホムンクルス の想いをテーマに、ホムンクルスの視点で創作してみました。錬金術師にとって、ホ ムンクルスはただの実験体に過ぎないわけですけれど、ホムンクルスにとって、人間 とはどういう存在なのでしょうか。自分の世界の全てであるが故に、錬金術師に愛を 求めてしまったホムンクルスの、悲しみや切なさといったものを表現できたらと思っ ています。それとともに、身体的にも心の側面でも個体進化を遂げていく、ホムンク ルスの成長の過程も描いてみたいと思うのですけれど、なにぶん力不足のため、失敗 する可能性が大きいです(^_^;)。どこまで続くかわかりませんけれど、皆様、どうか 温か〜い目で見守ってやって下さいね(^_^)。




<はじめに、のそのあとに・・・2006年秋>

 上記の前書きは、保存ファイルのタイムスタンプを見ると、1996年冬〜1997年春に 書いたもののようです。このお話を読み返してみて、あの頃はいろいろ考えていたん だなぁ・・・っと感慨に耽ってしまいました。あれから10年の歳月が流れ、錬金術師 といえば、あの作品を思い出す方がほとんどでしょう。決してあの作品に触発されて 書いたわけじゃないという、言い訳です。もっとも、あちらの方が深い作品ですし、 テーマも全く違いますしね。余計なことですけど、等価交換といえばアシモフのSFを 思い出す年代だったりもします・・・。

 拙作の話に戻しますが、Yあたりになると、ずいぶんテーマも曖昧でわかりづらい ですよね。着地点も子供っぽいかな・・・。ただ、いろいろな深い思索を経てみても 最終的にはこんな感じに戻っちゃうのかもしれない、なんて見直しもしつつ。

 この物語は、実はまだ完結してません。各章にまだまだいろんなエピソードが入る 予定でいましたし、今もそのつもりではいます。生きてるうちに終わらせたいなぁ。 ヴェスタリオミア物語も、以下同文・・・。

(*)一本指さん:あの頃非常にお世話になり、いろいろ影響も受けた、確か広島辺りに 生息してる、詩を愛する妖怪さんです(=^^=)


運行表に戻る 目次に戻る 進む