ヴェスタリオミア物語 第3章 森(2)

 

 

疲れ切った“わたし”を投げ出して

ちょっと熱めのシャワーを浴びる

裸の心を頭から浴びる

ここに“あなた”はいない

そうなんだ

いつの間にか一人きりのシャワールームだけが

わたしの呼吸できる水面になっていた

髪の一束一束から流れ落ちて

素足の指を濡らしてる幾条ものほとばしりは

たぶんここ何年も流したことのない

わたしの涙・・・

 

「信じる」

なんて強い言葉

 

「信じる」

震えてる心の木漏れ日

 

心ってね

「信じる」でできてるんだよ

 

ううん

心だけじゃない

この世界の何もかもが

「信じる」でできてると思う

 

わたしはいつも

信じるか信じないか

そこから始まるの

それ以外何もない

 

きっと宇宙には

「信じる」って力が存在していて

そこから生命や心が生まれた

そう気づいた瞬間

 

あなたを感じた

新しい愛しさが懐かしさを帯びながら

わたしの中に生まれなおしたの

勘違い、かもしれないけどね

 

信じたものだけが

結び

開く

そういうこと

 

帰ってきたあなたの手に

柔らかく包まれていた一粒の生命

“種”と呼ばれるそれは

世界への確信だ

 

疲れ果てたわたしたちの星には

たったひとつの森しか残されていない

最後の森を愛するあなたと

生きていこうとわたしは決めた

 

長い時間の果てにたどり着いた

わたしの「信じる」と

あなたの“種”

森の物語は始まったばかりだ





作・ 小走り

 


 

<コメント>

 

               心で読む・・・。

               理性で読む人はたくさんいます。気持ちで読む人もたくさんいます。だけど心で言葉

               を読む人は、なかなかいません。

               心には、たった一つの働きしかありません。それは、「信じる」こと。それ以外の、

               心の働きに見えるものたちは、みんな「信じる」ことから派生したのです。

               だからといって、心で読むということは、無防備に全てを信じて受け入れる、という

               ことではないはずです。

               心で読む、とは、その作品の世界を旅する、冒険して確かめる、そういうことだと思

               うんです。評価や好き嫌いではなく、生命として息づく言葉たちを、生命として受け

               入れる、ということだと思うんです。

               心の持つ「信じる」という力、働きについて、一緒に見つめ直してみませんか?

 

EMAIL:kobashi@nsknet.or.jp
http://www.nsknet.or.jp/~kobashi/

 



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