index

序詩: マザァ・グウスの歌

K 1 / HNR 852

a
マザア・グウスのおばあさん、
いつもであるくそのときは、
きれいながちょうの背にのって、
空をひょうひょう翔《か》けてゆく。

b
マザア・グウスのすむ家は、
一つ、ちんまり、森の中、
戸口にゃ一羽の梟が
みはりするのでたっている。

c
むすこがひとりで名はジャック、
その子まずまずお人よし、
ずんとよいことせぬ代わり、
ずるいわるさもようしえぬ。

d
市場へジャックをやったれば、
めすのがちょうを買ってくる、
「まあまあ、お母さん、みておいで、
そのうちいいこともあるでしょよ」

e
それからがちょうのめすとおす
なかよしこよしであそんでる。
いつもいっしょに餌をたべて、
ガアガア、お池におよいでる。

f
ある朝、ジャックがいってみりゃ、
(ほんに話によくきいた)
金の卵がありまする。
うんでくれたはめすがちょう。

g
金の卵だ、はよ告げよ、
ジャックはお母さんへとんでゆく。
お母さんもほくほくごきげんだ。
「それはよかった、おおできじゃ」

h
ジャックは卵をうりにでる。
それをかおうと猶太人の悪者、
おもう半値もつけないで、
うまうまジャックをちょろまかす。

i
ジャックはお嫁とりにゆきまする。
むこうのおじょうさん華美好きで、
それはかわいい、うつくしい、
花の山査子、百合みたよう。

j
ところへ、あとからつけまわす
猶太人とおしゃれのおべっか屋、
脇腹めがけて、ぶってやろと、
かわいそなジャックにつっかかる。

k
そのときすばやく、すっときたは、
マザア・グウスのおばあさん、
杖でジャックをちょいと打ちゃ、
道化のハアレクイン*にはやがわり。

l
つづいて、おばあさんが杖あげて、
きれいなおじょうさんをちょいと打ちゃ、
すぐにその子もはやがわり、
それこそかわいいコランバイン**。

m
金の卵は海の中、
どさくさまぎれにほうられる。
だけど、ジャックがとびこんで、
またももとへととりかえす。

n
それで、めすがちょうとった猶太人のやつ、
ころしちまえといきまいた、
割《さ》いて、こいつを売っとばしゃ、
ポケットにたんまり金もうけ。

o
ジャックのお母さんは、それみると、
すぐにがちょうをひったくり、
そして、その背にうちのって、
お月さまめがけてとんでいった。

* * ハアレクイン。道化芝居《しばい》の男役です。 ** コランバイン。これは女役です。

index

Bower Mother Goose