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こまどりのお葬式

K 2 / HNR 180

a
「だァれがころした、こまどりのおすを」
「そォれはわたしよ」すずめがこういった。
「わたしの弓で、わたしの矢羽で、
わたしがころした、こまどりのおすを」

b
「だァれがみつけた、しんだのをみつけた」
「そォれはわたしよ」あおばえがそういった。
「わたしの眼々《めめ》で、ちいさな眼々で、
わたしがみつけた、その死骸みつけた」

c
「だァれがとったぞ、その血をとったぞ」
「そォれはわたしよ」魚がそういった。
「わたしの皿に、ちいさな皿に、
わたしがとったよ、その血をとったよ」

d
「だアれがつくる、経帷子をつくる」
「そォれはわたしよ」かぶとむしがそういった。
「わたしの糸で、わたしの針で、
わたしがつくろ、経帷子をつくろ」

e
「だァれがしるす、戒名をしるす」
「そォれはわたしよ」ひばりがそういった。
「あかるいならば、くれないならば、
わたしがしるそ、戒名をしるそ」

f
「だァれがたつか、お葬式にたつか」
「そォれはわたしよ」おはとがそういった。
「葬ってやろよ、かわいそなものを、
わたしがたとうよ、お葬式にたとうよ」

g
「だァれがほるか、お墓の穴を」
「そォれはわたしよ」ふくろがそういった。
「わたしの鏝で、ちいさな鏝で、
わたしがほろよ、お墓の穴を」

h
「だァれがなるぞ、お坊さんになるぞ」
「そォれはわたしよ」白嘴がらすがそういった。
「経本もって、小本をもって、
わたしがなろぞ、お坊さんになろぞ」

i
「だァれがならす、お鐘をならす」
「そォれはわたしよ」おうしがこういった。
「わたしはひける、力がござる、
わたしがならそ、お鐘をならそ」

j
空の上からみんなの小鳥が、
ためいきついたりすすりなきしたり、
みんなみんなきいた、なりだす鐘を、
かわいそなこまどりのお葬式の鐘を。


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Bower Mother Goose