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すっとんきょうな南京さん

K 54 / HNR 758

a
すっとんきょうな南京さんがお三かたござった。
それは皆さまとくより御承知だ。
きゃっきゃさわいで猟にとでかけた。
しかも、めっそうもない、安息日にでござる。

b
永のいちんち、猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたは帆かけた船よ。
それが追風にしゅっしゅっとはしった。

c
「あれは船だ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれは家さ」と三番目のがいいのけた。――
「こわれ煙突までとっついてるじゃないかいな」

d
永の一晩猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたはおすべり屋のお月さんだ、
それがふかれてつるつるとすべった。

e
「あれはお月さんだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれはチイズさ」と三番目のがいいのけた。――
「二つわりにしたその半分きりさね」

f
またもいちんち猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたは木いちごやぶのはりねずみ。
それをうしろにとおりすぎてしまう。

g
「あれははりねずみだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれは針さしさ」と三番目のがいいのけた。――
「よくもめちゃくちゃにお針をさしたもんだすな」

h
またも夜っぴて、猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたはかぶら畑の野うさぎだ。
それをみすててまたいってしまう。

i
「あれは野うさぎだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれはこうしさ」と三番目のがいいのけた。――
「あいつ、めうしにおきざりされたやつだんね」

j
またもいちんち、猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
みたは洞木の分別顔のふくろうよ。
それをうしろにまたいってしまった。

k
「あれはふくろうだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれはじじいさ」と三番目のがいいのけた。――
「それそれごましお頭の髪の毛をみさいな」


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Bower Mother Goose