混沌へ向かう道
「リナさん…それ…捨てた方がいいと思うんですけど…」
「どうして?」
 これに関する話をするだけでリナは不機嫌になる。
「これは巫女としての直感なんですけど…すごく凶々しいっていうか…
 とにかく、すごく嫌な感じがするんです。
 瘴気も…撒き散らしているような気もするし…」
「そんなことぐらいわかってるわよ。仕方ないことだし。わかっててやってるの。
 何があっても絶対はずさない!
 捨てるなんて絶対に嫌だからね!!」
 そう、仕方ないのだ。ゼロスの…魔族の一部分なのだから。
「…どうして…どうしてそれにそんなにこだわるんですか…?」
 寂しげにアメリアが言う。
「理由を言って納得してくれるんなら言うわ」
 これだけは何があっても渡せないのだ。
 そうリナは決意している。
「………理由によっては……」
 これはかなり根が深いのだと気付く。ならば理由を聞き出して説得しなければ…
「言っても納得してくれないかもね…
 まぁ、とりあえず言っとくわ。
 これは…あたしが一番愛してるやつからもらったものよ…」
 けれど…愛していると言った割には寂しそうな…せつなそうな口調。
 その声が気になってアメリアの切り返しが一瞬出遅れたが、あまり言いたくない言葉を問いかけてみる。
「…だまされてるってことはないんですか…?」
 はっとして顔を上げるリナ。思い当たることがあるのだろうか。
「……考えないようにはしてたけど、その可能性がないわけじゃないわ。
 確かにあたしはあいつの本心を知らない。
 でも…嘘だったらあんなに長く続かないと思う。
 それに…ね…ひどいやつかもしれない。でも…あたしは愛しているから…」
 鮮やかな鮮やかな、それでいてどこか寂しそうな笑顔。
 そして…彼女である最後の笑顔でもあった。
「今日は、とりあえず何も言いません。けれど私はあきらめませんから。その指環のこと。
 それじゃ」
 そう言って部屋に帰っていく。
 静かな口調。怒っているわけじゃあない分、リナには堪えた。
「…仕方…ないじゃない……
 ゼロスは魔族んだから……
 …他に…他にどうすればよかったのよ………」
 静かに、そっと呟いていた。

 一方、こちらは精神世界(アストラル・サイド)。(別に群狼の島でもいいけど)
「ゼロス」
 短く、呼びかける。
「はい、ゼラス様」
 どこかから現れ、ゼラスの前にひざまずく。
「例の計画はうまくいっているのか?」
「ええ、順調に。
 彼女の心はだんだん闇に染まってきましたし、今日はあれを渡してきました。
 これでもうすぐ、あの方が復活なさいます」
「では、我らの宿願が果たされる日ももうすぐか…」
「目覚められたら、僕が迎えに行きます」
「よろしく頼む」

 次の日、リナ達のいる宿屋にて。
「リナさん? リナさん?!」
 リナの部屋の扉をどんどんと叩く。
 あのリナが朝食になっても起きてこない?!
 というわけで、3人はリナの部屋の前に来ていた。
「…しょうがない。無理矢理開けるぞ」
「うーん、でもなぁ…それをやると後から呪文の雨が降るんじゃないのか?」
「……………
 仕方ないだろう。非常事態だ」
 無理矢理開けた扉の向こうでは、ただただリナがベッドに腰掛けていた。
「なに?」
 空虚にリナが問いかける。
「そう、どうしたんですか? リナさん。
 もう朝食ですよ。いらないんですか?
 全部食べちゃいますよ?」
 安心したようにアメリアが話しかける。
 けれどリナは反応しない。
「…リナ?」
 さすがのガウリイも不審がって声をかける。
「おっと、それ以上彼女に近づかないでいただけますか?」
 その前に立ちふさがったのは…
「ゼロス! 貴様今度は何の用だ!!」
「何もたくらんでいませんよ。彼女を迎えに来ただけです」
 ゼロスがリナを…不可解な出来事だ。しかし…
「…もしかして、その指環はゼロスさんが……?」
「おや、よくおわかりですね。アメリアさん」
「だが…」
 ゼルが低い声でその先を続ける。
「だが、魔族と人間には大きな壁がある。種族の違いという、な。
 まぁ、おまえらなら乗り越えられるかもしれんが…」
「…何を勘違いしているんですか…?
 今の彼女を感じてみて下さればわかると思いますが…」
 そう、ガウリイはどうかは知らないが、ゼルとアメリアは大きな勘違いをしている。
 アメリアが指環から感じていたかすかな瘴気。それが今は……………………
 リナ自身から発せられていた。
「契約したのか?!」
 はっとしたように叫ぶゼル。
「でも…リナは魔族と契約するようなやつじゃない。それはオレがよく知っている」
 ぼそりと呟くガウリイ。
「契約なんて関係ありませんよ。彼女を魔族にするには必要ありません。
 だからあなた達は大きな勘違いをしているというのです。
 これ以上話しても無駄のようですし…」
 そう言ってゼロスはリナの方を向き、うやうやしくひざまずく。
「お目覚め、おめでとうございます。
 早々にこんなものを見せてしまって申し訳ございません。
 僕は獣王ゼラス=メタリオム様の配下で獣神官のゼロスと申します」
「わかっている。
 リナ=インバースの時の記憶は全て我が内にもある」
「…一体どういう……」
 ゼルが呟く。
 それを遮るようにゼロスが言葉を続ける。
「お迎えにあがりました。
 皆様待っておられます。参りましょう。
 リナ=インバース=シャブラニグドゥ様」
「なっ……………! なんだっけ、それ?」
 一瞬、空気が凍り付く。(覇王様がいらしたのかしら?(笑))
 リナの記憶があるはずのシャブラニグドゥでさえも。
「もっとも、やばい雰囲気ってのは、わかるがな」
 相も変わらず、頭を使わず本能だけで生きているやつである。
「どういうことだ?!」
 ゼルが叫ぶ。
「簡単なことです。
 あの指環はじょじょにリナさんの生気を奪っていき…そして彼女の意識は死に、ルビーアイ様が目覚めた。
 そう、それだけのことですよ」
 こともなげにゼロスが言う。
「ひどい…!
 リナさん…だされてるかもしないけど、それでもゼロスさんのこと愛してるって言ってたのに………!
 何があってもあの指環ははずさないんだって言って…
 あの時…なにがあってもはずさせるべきだったのに……
 やっぱり魔族には誰かを愛する気持ちなんて…人間の心なんてわかならいんですね…」
 ゼロスを必死でにらみつける。
「人間にも、魔族の心なんてわからないでしょうね」
 皮肉げにゼロスが言う。
「わかりません!
 誰かを愛する気持ちがわからないなんて…そんなものわかりたくもありません!」
「所詮、魔族と人間が論議したところで時間の無駄なんです。
 わかりあえないように出来ているんですよ。
 行きましょう。ルビーアイ様」
「そうだな。所詮考え方の根本が違うのだから」
 そういい遺し、2人は空間を渡る。

「本当に、リナ=インバースのことを何とも思っていなかったのか?」
 ルビーアイ様が問いかける。
「…さあ? 僕のような若輩者には…心なんてものもわかりませんね」
「そうか」
 一言答えた後、付け加える。
「確かににん゛んと魔族の考え方は根本的に異なる。
 しかし、心そのものは変わらないと思っている。少なくとも私はそう思っている。
 魔族とて、楽しむこともあるし、上司を敬う気持ちもある。もっとも、人間とは違う感じ方ではあるのだろうがな」
「僕には…難しいことですね…」
 人間として生きた時間があるからこそ言えることなのかもしれない。
「魔族にとっては…難しいものなのだろうな。私も本当にわかっているわけではない。
 もっとも、時間などたっぷりある。
 考えてみるのもいいし、忘れてしまうのもいいだろう。
 それはおまえ次第だ」
 リナ=インバースの時に何度も会っていたせいか、話しやすいのかもしれない。
「お言葉、ありがとうございます」
 けれど人と魔族は相容れないもの。
 一体どうすればよかったのか。自分の気持ちもわからないで。
 きっと、これでよかったんですね。リナさん…

 スランプです 特に終わりのほう どうやってまとめればいいかわかんなくて…
 ガウリイがぼけたあたりから、すでにスランプでした んでもって、スランプの頂点がS様とゼロス様の会話
 もう、どうしていいか…(TT)
 なんか、書いても書いても終わらなくなるし…
 使いたいフレーズで番外編出来ちゃうし…(^_^;)
 「相反する想いのために」がずいぶんと遅くなりそうです m(_ _)m
 スランプ脱出ってどうすればいいんだろう……?