「リナさん、大好きですよ」
 くすくす笑いながら抱きついてくるゼロス。
「はいはい、あたしもよ」
 まるで小さい子をあやすように、ゼロスの背中をぽんぽんと叩く。実際、ゼロスはこういう時は実年例に見合わないほど幼く見える。そう、まるであたしと同い年くらいに。ちなみにあたしは16,ゼロスは22だ。まあ、元々年齢不詳な顔してるやつだけど…
 誤解がないように言って置くが、あたしとゼロスの関係は決して世間一般でいうような恋人同士というやつではない。ただの幼なじみで、しばらく前からはそれにプラス、家庭教師というものもついている。つまりこの行為はその延長上にあるもので、人が思うほど甘いものではない。
 はずだったのだが…
「ねぇ、リナさん。キスしていいですか?」
 すっぱぁぁ……ん!
 小気味のいい音が響く。もちろんすこらにあるスリッパでゼロスをはたいた音である。
 ここはあたしの家だ。企業秘密なので教えないが、あたしの家には何があってもいいようにと、あちこちにいろいろなものが常備してある。
「冗談も度が過ぎると殴るわよっ!!」
「殴ってから言わないで下さい…」
 これはゼロスの勘違い。
「今のは殴ったんじゃなくてはたいたのっ! 言葉は正しく使おうね」
 必殺にっこり。もちろん笑ってるのは顔だけで目は笑ってない。
「それ、屁理屈だと思いますけどね…」
「とにかくっ! 今後そんな冗談飛ばしたら、金輪際あんたとの縁切るわよっ!」
 更に黙殺する。これでほぼ完璧っ。
「本気だったんですけど…ねぇ? リナさん。何度『好き』だって言ったら信じてくれるんですか?」
 こ…っ、これは思わぬ反撃、って………
「ほ…っ、本気ぃ〜〜〜?!」
 あたしの驚いた様子にゼロスは
「やっぱり…」
と呟いた。
「もしかしたら、とは思ってましたけどね」
 大げさなため息を吐く。もちろんあたしは声も出ない。
「でも、僕は本気ですよ? ずっとリナさんを想っていました。
 幼なじみとか、妹とか、そういうのではなくて…1人の相手として、リナさんのことが好きなんです」
「あっ…あた、あた、あたしはそんなの、知らないわよっ!」
 慌てているせいでどもっている。その顔はもちろん今にも火を噴きそうなほど熱い。
「じゃあ、知っておいて下さいね。僕が本気だってこと。
 大好きですよ。リナさん」
 いつもと同じ言葉。けれどその響きはいつもと違って聞こえる。
 自分の気持ちは自分のものなのに、完全に理解不能だった。

(ゼロスのバカバカバカっ! 大嘘つきっ!!
 本気だなんて…大嘘じゃない!! もう絶対信じないんだからっ!)
 家に帰った途端、自分のベッドに身を沈める。
(ちゃっかり美人と一緒に連れ歩いて…大嘘つきっ!)
 出るのは罵倒の言葉のみ。
 本気だと言った先から、女の人とデートしていた。信じろと言う方が無理に決まっている。
 どれだけそうしていたかまではわからない。
 けれど、扉をノックする音がして、ふと気付いた。
「リナさん、お勉強の時間ですよ?」
 それはまぎれもなくゼロスの声。
 慌てて扉に駆け寄り、鍵を掛ける。
「リナさん?!」
 鍵の掛かった音に驚いたのか、ゼロスがさらに激しくノックする。
「嘘つきな人間なんていらない! あんたにはこの部屋に入る資格なんてない!!」
 それに…こんな情けない顔を見られたくない。
「この部屋に入る資格がないって、どういうことです? 僕はリナさんに嘘なんかついてませんよ?」
「ほら、また嘘をつく! だからもう、ゼロスなんて信じない!」
 それは多分、ゼロスに対して初めての、完全なまでの拒絶。
「……せめて、わけを聞かせて下さい」
 だからゼロスの声は、小さく呟くように問いかけてくる。
「ゼロス、あたしのこと本気で好きだって言ったよね。じゃあ、今日の昼、何してたの…?」
 ゼロスの口調が気になったのと、せめて弁解くらいは聞きたいと思ったのと…2つの感情が重なり合って、その言葉を紡いだ。
「…見てたんですかぁ…?」
 困ったような声。まるで浮気がばれた亭主のような…
 もちろんあたしはそんなことは許さない。そんな相手などこちらからお断りである。
 自分から…縁を切るのだ。
「誤解、ですよ。リナさん。
 彼女はゼラスさんと言って…同じ大学の人なんです。とっている講義もほぼ同じで…そうなると結果的にある程度は仲良くなる。それだけですよ。
 嘘はついてません。僕は、リナさんだけ、本気なんです」
 そうは言われても、生まれてしまった疑念は消えない。
「ねえ、リナさん。聞いていて思ったんですけど…リナさんのその感情。それに名前を付けるとしたら、それは『嫉妬』って言葉ですよ?」
 言われて初めて気付いた。この感情が嫉妬なのだと。
 つまりは…あたしはゼロスが好きだったのだ。
 それがいつからなのかはわからない。小さな頃からなのか、ゼロスに好きだと言われてからなのか、はたまたそのゼラスさんとゼロスを見てからなのか。どちらにしろ、あたしはゼロスのことが好きなのだ。
「本気で好きなのは、リナさんだけなんですよ…?」
 扉ごしに囁かれる言葉。
 自覚してしまったからには、根拠がないからといって疑うのはばかげている。
「だから、ねぇ、リナさん。この扉を開けて下さい。
 僕と、いろいろ話しましょう?」

 そして扉は開かれる。リナの心の扉もまた同時に。
 ゼロスの方へと、向かって。


 10000ヒットしてから1ヶ月以上たってるじゃん……死ね、俺……
 でもなんとか終わったのー 死ぬほど遅れてごめんなさい、しのぶさん
 というわけで現代物っす ありがちな設定でごめんなさい
 これ書いてて…昔読んだ某ティーンズハート小説を思い出してしまった… 別にまねたわけじゃないがこうなってしまった…(爆)
 ちなみにこれ、現代物じゃなかったら締め出しくらったらゼロスはリナの部屋に現れただろーなー 「ムダですよ」とか言って… 現代物だったんであきらめたけど、そーゆー衝動にかられたな(笑)
 ちなみに個人的に気に入ってるのは、ゼロスがリナに嫉妬だと教えるところです(笑)
 マジでゴメンナサイ! …次の原稿にとりかかります。更新と〆切のために……