ずっと一緒に
「楽にして上げるわ、ゼロス」
 ゼラスが静かに告げる。
「…はい……」
 ゼロスは身動き一つせず、その瞬間を待つ。
 しかし、いくら待ってもその瞬間は来ない。
「………ゼラス様……?」
 顔を上げて問いかける。
「ゼロス、リナ=インバースの元へ行きなさい」
「…ゼラス様…?!」
 そのあまりの言葉の内容に驚愕する。
「主の命が聞けないとでも言うの?」
 さらに言葉を続けるゼラス。
「…いえ、ありがたくお受けします。ゼラス様…」
 1度、礼をしてから姿を消すゼロス。
 おそらくリナ=インバースの元へ行ったのだろう。
「……涙が、出なくてよかったわ…
 またあの子に心配をかけることになってしまうから……」
 静かに呟く。
 けれど、涙が流れないために想いの行き場はなく、ずっと胸の中にとどまり続ける。
 何千年もの間に積み重ねられた想い。いろいろなものを抱えながら生き続ける魔族。
 だから私たちは滅びを願う。
 心がたえきれなくなる前に。想いを解放するために。

「リナさん、元気ですか?」
 突如、背後から声がかかる。
 振り向いてみれば、相変わらずゼロスが虚空に漂っていた。
「おー、ゼロス。久しぶりだな」
 ガウリイがのんきに声をかけている。
 しかし………
「ゼロス、今度は何をたくらんでるの?
 今度は何のおとり?」
 そう、ゼロスはお役所仕事なのである。何の理由もなしに会えるとは思えない。
 もちろん、会えたことはうれしかったが、仕事ならばまた何かと関わらなければいけないということになる。ましてやまたしてもおとりだなんて冗談じゃない。
「リナさん、つれないですぅ〜」
「普段の行いが悪いからよ。
 ったく…何度だしに使われたことか……」
 その度にゼロスといられたけれど…いくら何でも巻き込まれる事態が事態なので、生命の危険が及びまくるのだ。おかげで気を抜いていられない。
「まあ、確かにゼラス様の命令ですが……今回は何もありませんよ。
 ゼラス様が言って下さったんです。リナさんの元へ行けって。
 だから、何の裏もありませんし、ずっと側にいられますよ(はぁと)」
 じゃあ………
「じゃあ、もう離れなくていいの…? ずっと一緒にいられるの……?」
「もちろんですよ」
「じゃあさ、ゼロス、あたしの郷里に来る気ない?
 紹介…したい子もいることだし……
 ……姉ちゃんは反対するかもしれないけど……」
「ええっ?! 家族に紹介してくれるんですか?!」
 驚きながらもうれしそうな声を上げるゼロス。
「違うわよっ!!」
 真っ赤になりながら間髪入れずに否定するリナ。
「…してくれないんですかぁ……?」
 いじけはじめるゼロス。のの字を書いていたりする。ホントにおちゃめな魔族だな…(笑)
「あたしが紹介したい子ってね、まだ紹介できないの。あと6ヶ月ぐらいかな…?」
 わけがわからないゼロス。
 リナは顔を赤くして先を続ける。
「今、あたしのお腹の中にいるんだもの…もちろん、ゼロスの子よ…」
「ええっ?!」
「なにいっ?!」
 さすがに今の爆弾発言で、会話に入れないためそこで寝ていたガウリイも起きる。(って寝るなよ…ガウリイ…(^_^;))
「そんなリナさんに無理はさせられません! 僕がゼフィーリアに連れてってあげます!!」
 さっきまでいじけていたのが嘘のような勢いで言う。
 ゼロスはそのままリナを抱え上げ、空間を渡った。
 あとに残されたガウリイは……その唐突さにしばらく呆然としていたが、またその場で眠りはじめた。(おいおい…(^_^;))
 その後、アメリアに拾われて(笑)セイルーンへと行き、シルフィールとも再び出会うことになるのだが、それは後日談である。(さらに数年後にはリナをあきらめるしかないガウリイはずっと側で支えていてくれたシルフィールと結婚することになる(笑))

 ゼフィーリアの、しかもリナの家の前へと空間を渡ったゼロスとリナ。
 そこには郷里の姉ちゃんが………
 間違いなくゼロスが魔族なのだとわかったことだろう。まあ、姉ちゃんなら気配でわかるだろうけど…
「…あ…あの…ただいま、姉ちゃん…」
 おそるおそる声をかける。動揺のあまりゼロスに抱え上げられていることを忘れ、ゼロスに抱えられたままである。
「おかえり、リナ」
 にこやかな顔で答える。
 そしてその後に…
「それで…? あなたは何のつもりかしら? 高位魔族さん。
 場合によっては………」
 そして赤竜の剣を呼び寄せる。
 その表情は姉ちゃんとしてのものではなく、赤竜の騎士(スィーフィード・ナイト)のものものへと変わっている。
「僕は獣神官ゼロスと申します。あなたが噂に名高い赤竜の騎士さんですか。そしてリナさんのお姉さんでもある… お初にお目にかかりますね」
 そっとリナを降ろし、ゼロスも戦闘態勢をとる。
「ちょっとちょっと! 2人とも…!!」
 あわてて止めに入るリナ。
「獣王ゼラス=メタリオムは配下の… そちらこそ有名じゃあなくて?
 降魔戦争の折り、1人で黄金竜を壊滅状態にまで追い込んだのだから…
 その獣王配下のあなたが何の用かしら?」
 姉ちゃんも呼び寄せた赤竜の剣を構え、いつでも戦える体勢にかわる。
「僕は、獣王様の命で……………」
 いつものニコ目はそこにはなく、魔族としてのゼロスがいた。
「2人ともやめてよぉっ!!」
 リナが叫ぶ。
 どちらかを選べと言われても無理である。
 2人とも大切な人。どんなにめちゃくちゃでも大事な姉ちゃん。たとえ魔族だろうと愛しい人。
 敵対する者どうしに相容れろと言う方が無理なのだろうか……
「獣王様の命で、好きなようにしろと言われたので、リナさんをお嫁にもらいに来ようと思って(はぁと)」
 さっきまでの表情はいったい何だったのか、いつもの笑顔である。
 さすがの姉ちゃんもこの変化には驚いたらしく、一瞬呆然としていた。
 けれど、赤竜の剣をしまい、いつものウェイトレスとしての顔に戻る。
「きっと…つらいまよ…?
 魔族と人間、その違いは…」
「かまいません」
「乗り越えるわ」
 そのゼロスとリナの表情に満足したのか、
「いいわ。私は認める」
 満足そうに告げる。
「ではこれより、ゼロスはインバース家の一員に。
 2人を夫婦とし、永久(とこしえ)の幸せを…」
 おごそかな声で告げる。

 しかし、彼女は波瀾万丈な人生を送ることになる。
 いずれ彼女は、『魔を滅する者(デモン・スレイヤー)リナ=インバース』と呼ばれることになる。
 その彼女の側には、いつも男の子と女の子、そして1人の神官がいたのだが、それは記録の中には何一つ残っていない……


どぉだ! これでひととおり一段落したぞっ!!
ここまでの所要時間……たしか5月ぐらいからだから…4ヶ月か…?(^_^;)
いやぁ、みなさまよくぞここまでつきあったくれました
わざわざどぉもありがとうございました
…もっとも、リナ=インバース=シャブラニグドゥのストーリーはまだ続きがあるから…
終わっていないと言えば終わってないんですがね(^_^;)
…ホントに俺も疲れたよ…
いろいろある時期だし…(笑)
リナ=インバース=シャブラニグドゥは当分痕になるんじゃないでしょうか…
ついでに言うなら、次のめどは全くついてません(爆)
わかんないけど、多分次はロスト……?
けどやっぱりわからないから…
お次がどうなるかはわからないけど、とりあえずこのシリーズのここまでのおつきあい、ありがとうございました〜〜〜〜(はぁと)