初心者のためのヘヴィメタル

STEP-3:ヘヴィメタルとメディア

 「へヴィメタルの事をもっと詳しく知りたくなったぞ!」というそんな貴方。超巨大掲示板群などにそんな事を書こうものなら「ググれ」とか「ヤフー掲示板に戻れ」とか、それはもう大変なことになったりならなかったり。ありがたい忠告にしたがって目の前にある機械を活用してみても、現れる雑多な情報の渦に飲み込まれて人事不省になりかねません。そもそも情報を探すと言っても、何を探していいのかすら分からない状態にあるのが、初心者と言うものです。そこでここでは既存のメディアでヘヴィメタル関連情報を集めることにしましょう。
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【雑誌】

 とりあえず、一番手っ取り早く入手できるのが大抵の書店に並べられている音楽雑誌ということになります。しかしながらハードロック/ヘヴィメタル専門誌を名乗る音楽雑誌は日本には既に唯一つ。

THE WORLD'S HEAVIEST HEAVY METAL MAGAZINE BURRN!


 シンコーミュージック発刊のこの雑誌が創刊されたのは1984年10月の事。「紫の炎」アルバムをもじった名前を持ったこの雑誌は初代編集長だった酒井康(さかいこう)氏のディープ・パープルに対する熱意が生み出したハードロック・ヘヴィメタル専門誌として華々しく発表されました。創刊時のメンバーには現在も執筆を続けるアイアン・メイデン、ボン・ジョヴィを日本で広めたと言われる音楽評論家、伊藤政則(いとうせいそく)氏が編集顧問として参加しています。
 編集長自身が読みたい雑誌を作るという看板#1 を掲げて、日本にハードロック/ヘヴィメタルを根付かせるのに大きな影響を与えた編集姿勢#2 と、その独自の視点を持ったレビュー#3 が大きな特徴のこの雑誌は、ブラウザがどんなに検索性が高まっても雑誌の持つ一覧性には未だ及ばず、更に活字の方がディスプレイよりも読みやすいという利点を持ち、アルバム発売情報のカタログとしては現在でも有用な存在として重宝されています。



[#1] 誌名へのこだわりか、現編集長の趣味か、多分両方でしょうが、ディープ・パープル及びレインボー、はっきり言ってリッチー・ブラックモア関連の情報の偏重が凄まじいです。それこそ旬の現役バンドを押しのけるほどに。他にも多々ありますが、必要でない情報は読み飛ばすのが良いでしょう。
[#2] 1990年代にオルタナ、グランジへの適応が出来なかった事が現在のBurrn!誌と日本のシーンの衰退を招いた…
 と言う事がまことしやかに囁かれています。一面ではそれは正しいですが、そもそもBurrn!誌の傾向が排他主義にあるという事を理解しなければなりません。今でこそBurrn!誌でもスラッシュ/デスメタルが当たり前のように取り上げられていますが、それらのサウンドが出現したころの対応は惨澹たるもので、スラッシュメタルは屑呼ばわり、デスメタルに至っては音楽ですらない、という有様。同じヘヴィメタル内ですら、この状態なのですから、少しでも異なるジャンルからのサウンドの扱いと言ったら…。さらに凄まじい事には現在でもいわゆるデスヴォイスに拒否反応を示す編集者が居ると言う事実。初代編集長の酒井康氏はセパルトゥラが表紙になった事が切っ掛けで編集長を辞したという逸話が伝わるくらいです。この辺りを踏まえてこの雑誌に対しないと、思わぬ誤解を招くことになるでしょう。寡占状態になった業界には様々な弊害があるものです。
[#3] 100点満点の点数制という強いインパクトを持ったレビューシステムは、分かりやすいという利点の一方で多様なアルバムの序列を並列化するという欠陥を持っており、初心者を導くと同時に偏向させる両刃の刃。ここに編集者の個人的な嗜好が加わった破壊力は凄まじいものがあり、アルバムの売り上げにも影響を与えると言う噂も。聖飢魔IIが酒井氏のレビューによって0点を付けられたのは今となっては伝説に。とりあえず点数は塗りつぶして、どんな音なのかを読み取れば充分でしょう。また手っ取り早く過去のレビューが読みたい時には「Burrnin' Vinyl」があります。


 Burrn!誌以外の選択肢としては「YOUNG GUITAR」、「ロッキンf」などがあります。自分の好みに応じて選ぶのが良いでしょう。

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 そんな信用ならないものに一銭も使いたくない!という方には無料で情報を入手できる以下のメディアが。

【ラジオ】

 首都圏などと地方では、かなり状況が異なりますが、電波の関係上リスナーの分布も番組に依存しています。何より音が聴けるという最大の利点を活用しましょう。

[首都圏]

 前述の伊藤政則氏がパーソナリティーを務める15周年を迎えた「パワー・ロック・トゥデイ」がbayfmでオンエア中。アーティストへのインタビューやライブ音源、新曲などが流されている…らしい。
 ジャーマンメタルと言えばこの人な、和田“キャプテン”誠氏がパーソナリティーの「ROCK DRIVE」がFM YOKOHAMAでオンエア中。

[関西]

 さらに和田“キャプテン”誠氏がパーソナリティーの「CAPTAIN ROCK」がfm osakaでオンエア中。そういえば、昔全国区で「ヘヴィメタルボンバー」ってあったよなあ…。

[全国区]

 またまた前述の酒井康氏がパーソナリティーを務める「ヘヴィメタルシンジケート」が全国民放30局をネットしてオンエア中。提供BURRN!。酒井氏のディープヴォイスから繰り出される毒舌トークとリスナーのリクエストなど一切無視の番組進行がある意味すがすがしい王様番組。一時期はBURRN!編集者もゲスト出演していましたが、現在はお笑いコンビ『飛石連休』の藤井宏和を相方にしています。

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【テレビ】

 料理バラエティ番組のBGMとしてはラプソディーブラインド・ガーディアン、格闘番組ではすっかり定番の“HEADING FOR TOMORROW”で有名なガンマ・レイ、コマーシャルで“BURN”、“BLACK NIGHT”、“HIGHWAY STAR”、“SMOKE ON THE WATER”がローテーションされるディープ・パープルなど楽曲自体を耳にする機会は少なくありませんが、こと番組となると惨澹たる状況が待ち受けています。
 「ヘビメタさん」が瞬間的に話題になったのが記憶に新しいですが、普通の音楽番組さえ厳しいテレビ事情では、ヘヴィメタル専門番組は極一部の放送局でしか流されていないという現実。現在でも放送されているのは「ROCK CITY」のみです。運良く放送圏内に居住している方は映像まで観られる喜びをかみしめましょう。

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【インターネット】

 ついでなので、ネット上の定番情報サイトを紹介しておきましょう。

[BLABBERMOUTH.NET]

 ロードランナーレコード内で運営されるこの情報サイトは最新ニュースからゴシップ、はてはレビューまでハードロック/ヘヴィメタル関連の雑多な情報を集めてくるもので、所属アーティストだけに留まらない混沌とした状態が凄まじいです。英語に堪能なら有効利用できること間違いなし。英語ができなくても、それなりに。

[個人情報サイト]

 いつ無くなるか誰にも分かりませんので、あまり特定のサイトに依存し過ぎない方が良いでしょう。レコード会社のメタル部門ですら無くなるこのご時世では…。

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 情報が氾濫しているこの時代に、正しい情報を見分ける力を身に付けてヘヴィメタル・ライフを有意義に過ごしましょう!