緑内障

 

・緑内障とは

 緑内障は眼圧依存性の視神経障害と定義づけられている.つまり,眼圧がその個体の生理的範囲を超えて上昇し,視神経障害および視覚異常,主に視野障害を起こした状態である.健常眼圧は20mmHg以下といわれるが,視神経の眼圧に対する抵抗性が強い場合,眼圧が正常上限といわれる21mmHg以上であっても緑内障はなく,これを高眼圧症という.逆に視神経に脆弱性がある場合,眼圧が常に20mmHg以下であっても緑内障は進行する.このため視神経が耐えられるレベルまで眼圧を下降させることが治療の根幹である.

 緑内障による視機能障害は,ゆっくりと進行することが殆どで,中心視野,視力がかなり末期まで保たれる.そのため患者に自覚症状が乏しく,末期になるまで眼科を受診しないことも少なくない.緑内障の有病率が40歳以上で人口の3〜5%と高いこともあり,日本を含めた先進国の中では緑内障は失明原因の上位を占める.

・緑内障の分類

 緑内障は病型によって眼圧上昇機序が異なり,それに応じて治療方針も異なる.原発性,先天性と続発性に分けられる.原発性は前房隅角の広,狭で開放隅角と閉塞隅角緑内障に分類される.

・原発開放隅角緑内障

 原発開放隅角緑内障眼は房水流出抵抗の増大に起因する疾患である.やや男性に多く,各年代にみられるが,加齢に伴ってその頻度は増加する.

1.自覚症状

 原発開放隅角緑内障の大部分は無自覚発症である.しばしば偶然の機会や他の随伴症状で眼科を受診して発見される.視野障害や虹視症など特有の症状を患者が自覚し,眼科を受診するものは開放隅角緑内障患者の約20%である.

2.他覚所見

 前眼部,中間透光体は正常眼と全く区別がつかず,初診時の眼圧は約半数が19mmHg以下である.初診時から高度の視野障害を示すものは少ない.視神経乳頭は緑内障性の陥凹の拡大,上下の偏心,線状出血などを来す.

3.治療

 開放隅角緑内障の治療は薬物治療を原則とする.なかでも点眼薬が中心として使われる.これには交感神経β受容体遮断剤,交感神経刺激剤(エピネフリン),副交感神経刺激剤(ピロカルピン)の3種類がある.薬物で眼圧のコントロールが十分できないとき,房水を眼内から結膜下に排出する交通路を作成する濾過手術が行われる.

・原発閉塞隅角緑内障

 原発閉塞隅角緑内障は主として老年期における緑内障で,女性に多い.先天性素因としての狭隅角に,加齢現象としての水晶体の膨化が加わり発症する.虹彩と水晶体の間の摩擦が強くなり,瞳孔ブロックが起こり後房から前房に房水が流れなくなる.そのため水晶体,虹彩が前方に移動し,隅角が閉塞する.

1.自覚症状

(1)急性型:両眼同時発症もあるが,多くは片眼に急に起こる.初期には一般的に視界が暗くなる.進行すると眼痛,霧視という眼症状に加えて,頭痛,吐き気,嘔吐などの激しい全身症状がでる.内科的疾患に誤られることもあり注意を要する.

(2)慢性型:開放隅角緑内障とほとんど同じで,初期にはほとんど無自覚である.ある程度進行してから視野の異常,視力の低下を自覚するようになる.一眼を全く失明して初めて異常を知ることも希ではない.

2.他覚所見

(1)急性型:毛様充血,結膜充血があり,角膜は浮腫,混濁があり,白く見える.瞳孔は散大する.前房は浅くなり,隅角は閉塞する.眼圧は著しく上昇する.

(2)慢性型:眼圧は軽度上昇している.前房は浅くなり,隅角は閉塞する.その他の所見は乏しい.

3.薬物治療

治療は手術を原則とする.手術までに視神経障害の進行を減らすために眼圧を下げる必要があり,その薬物治療を行う.

(1)急性型:一般に眼圧が非常に高いのでできるだけ早く眼圧を正常化するために濃厚な治療を行う.

(2)慢性型:眼圧はあまり高くないのであわてる必要はない.患者を説得して早く手術を行う.

4.手術治療

瞳孔ブロックの解除を目的とする.早期に適切に手術されると予後は非常によい.虹彩周辺部に穴をあけることによって,前・後房間の交通をよくする.従来の周辺虹彩切除術に加え,最近はレーザーで虹彩を穿孔するレーザーイリドトミーが行われている.